ウソのようなホントの英文法 佐久間治

ウソのようなホントの英文法

ウソのようなホントの英文法

  • 作者:佐久間 治
  • 発売日: 2009/02/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

1.layは自動詞「横たわる」?

自動詞(横たわる)lie lay lain
他動詞(横たえる)lay laid laid
He laid on the street「彼は路上で寝転んだ」
日本人はlaidではなくlayが正しいとする。大半のアメリカ人は問題ないとし、イギリス人は「彼が卵を産んだ」と取れると非難。イギリスとは違い、アメリカ英語では他動詞layが自動詞の領域を侵食。とある英語フォーラムで著者が入手した情報では、「ほんとどのアメリカ人は高校に入学するまでlieの存在を知らない」「学校で強制的に教えられるが、卒業すると忘れてしまう」。
onesefの用法がどんどん廃れており、lay oneself down(自身を横たえる)でoneselfを使うのが面倒になってlay downで済ますようになった。
3.drown oneselfは「入水自殺する」?
学校文法では get drowned、drown oneself、drownの3つを同意とするが、「彼は川で溺れて死んだ」のつもりで下記の文章をアメリカ人に見せると、2と3は違う意味にとる。
1) He drowned in the river.
2) He got drowned in the river.
誰かに沈められて殺された
3) He drowned himself in the river.
身投げした

[受動形の be drowned も]イギリス英語では他動詞「溺れさせる」の受身で「溺れる」を維持するが、アメリカ英語では「溺死させられる」と受け取られ、第三者の関与を匂わせる。(略)
drownは「死ぬ」を含意するので、単に「溺れる」は almost[nearly] drown で表現する。また drown to death は重複表現になる。

6.to不定詞の主語は古すぎる

To read this book is very hard.
「口語文ではありえない」とアメリカ人。
以下のように副詞的に使うのは口語でもあると回答。
To hear him speak English,you would take him for an Englishman.
しかし条件用法については下記の方を使うという見解
(By) hearing him speak English
イギリス人は「『まるで外国人のように話す』と言いたいなら」
If you hear…とか言ったほうがいいと。
To survive the hurricane……
のような目的用法でなら大半がまったく問題ないと回答。
12.分詞構文
Turning left at the next corner,you will find a tall building.
いくつか挙げた文の中で、特にこの文が不評。口を揃えて「When you turn left か Turn left…and you'll find」でいいと断言。

すでに彼らの頭の中に「条件」はないので、この構文を付帯状況ととらえて、予想を超える指摘をする者もいた。
(略)
「この文が変なのは、『角を曲がりながらその建物を見る』を暗示していることだ。曲がったあとで見るはずだ」
(略)
[別の回答者は]
 道を教えるくらいで、わざわざ分詞構文を引っ張り出してくるな、Whenを使え(略)
「まるでツアーガイドかガイドブックの解説のようだ」

14.分詞構文のルール

He picked up a rock and threw〜を Picking up a rock,he threw〜とするのがアリかナシかは外人でも意見分かれるてな話の後の最後に

そもそも、先のような状況で分詞構文を使おうとする発想がおかしいらしい。彼らの感覚には、どれが分詞(構文)で、どれが動名詞かなんていう区別がないから、質問自体が意表をつくものだったようだ。

Having fallen from the roof〜という文章について尋ねると
Even though とか After falling にするとイギリス人。
完了形の分詞構文で fall のような自動詞を使うのはきわめて稀、とアメリカ人。

19.shallは常用英語から消えた?
 

アメリカ人二人の見解
shall は、法的な契約書で主に使われる。日常会話で使われるのは稀だ。
普段の会話では誰も shall なんて使わない。ダンスをするとき以外は。
21.could は can の過去形?
試験に通ったというつもりでネイティブに I could pass my driving test. と言うと、

間違いなく仮定法と受け取られ、「私だったら合格するのに」か「(明日)は合格するかもしれない」と解釈される。
 その相手が親切だったら、 I was able to か、I passed と言うようにと教えてくれるだろう。(略)
文法書も英語の教師も could が過去時制を表すことはほとんどないことを強調して伝えるべきだろう。
(略)
 日本人が恒常的に犯すこういった誤りにはネイティブ・スピーカーも閉口していて、機会あるごとに「 on a particular occasion には could は使えない」と口を酸っぱくして言っている。 could が過去で使われる状況は、たとえば、主体(主語)に永続的な技能や能力が備わっているときだけである。(略)だから水泳や語学力など能力について述べる場合に限られる。しかも和訳は「〜できた」というよりは「〜する能力を持っていた」くらいにしかならない。カナダ人が could の実際の運用について名言を吐いている。(略)
could は可能性であって能力ではない。(略)
未来に対して could を使うのは構わないが、昨日の出来事に使うことはできない。 be able to はどちらも使える。

30.2者間でも最上級は可能?

[二人兄弟で自分が兄だと言う時、ネイティブは older を使わず I am the oldest child.とする]
 この件に関して、アメリカの文法学者の意見を参考にあげておく。最上級を好むネイティブ・スピーカーの微妙な心理がうかがえる。(略)
「比較級を使うか最上級を使うかの判断基準の1つは‘仲間'か‘仲間はずれ'かの違いによる。たとえば、‘トムはジョンより若い'とした場合、トムとジョンは明確に分離した存在になる。いっぽう、‘トムは少年たちの中で一番若い'とした場合、トムはグループ(たとえ2人であっても)の一員であることを暗示する」
 すなわち、比較級を用いると、AとBの対立が明らかになり、疎外感を与える。しかし、最上級を用いると、AはBやCやDの中の1人、仲間であることが暗示される、ということだ。

40.thatは人にも物にも使える?

 関係代名詞thatに関連して、動物愛護やgender(性別)に敏感になっている欧米人の心情を反映する証言を以下にあげておく。(略)
アメリカ人回答者)
「『thatは人にも物にも使える』と教える文法書があるが、私は決してそんなことはしない」(略)
(イギリス人回答者)
「古い文法書は動物を指すときは that か which を使えと助言しているが、私の個人的意見では、こういう使い方は魂を持った動物たちに失礼だ」
 たしかに、我々は文法書や文法の授業で「 that は人にも物にも使える」と学んだ。しかし、もう時代に合わなくなってきている。少なくとも、「人にも物にも使える」ではなく、「物や動物にも使えることがある」と書き改めたほうがいい。百歩譲って、動物には that を使うことがあるが、人には使わないほうがいいとは断言できる。
(略)
New Fowler's Modern English Usage はここまで言っている。(略)
「人的先行詞には that は決して使ってはいけない」
(略)
You are the very person that we have been looking for.
「あなたこそ私たちが捜し求めていた人物です」
 これは日本の学校文法で最も強調される that の適用例のはずだが、that を削除するとか for whom にするなど、別の表現を薦めるネイティブ・スピーカーが圧倒的に多い。

20.I was like が大流行、みたいな〜

He was like,“I think you're beautiful and I really like you.”And I was like,“Oh,my gosh,I like you so much.”
「彼が言ったの…『君は美しい、好きだよ』って。だから私も言ったの、『えっ、私もあなたが大好き』って」
 He was like が He saidで、I was like が I said に相当する。どうやら (He)was speaking [talking]like…の省略形だと思うが、確証はない。口語で頻繁に使われる。(略)
アメリカ人回答者)
「I was like なんて正しい言い方じゃないのはわかっているけど、みんなが使っているし、俺もしょっちゅう使っている」(略)
 今のところアメリカ英語が中心で、かつ口語に限られている。
(略)
 さらに驚いたことに、これと同じ意味で He's all とか I'm all がある。口語で多用され、アメリカ英語では重要表現である。
I went into this bar,and I was like ‘l need a drink.' And the bartender was all,‘No way,you're too young!'
「バーに入って行き、酒をくれって言ったんだ。するとバーテンが、だめだめ、お前は若すぎる、って言いやがった」
なぜ all を使うのか理由がわからないが、若者が好んで使っている。(略)
アメリカ人回答者)
「少なくとも、若者のあいだでは I was all とか I was like のほうが I saidより頻繁に使われている」

not to say

次は A not to say B で使われる最も有名な例文である。
(1) She is pretty,not to say beautiful.
 これを日本の学生に訳させると、100人中100人が迷わず「彼女は美しいとは言わないまでも、かわいい」と訳す。辞書の定義にもそうあるし、学校でもそのように習う。だが、ネイティブ・スピーカーはそうは受け取らない。彼らは「彼女はかわいいばかりでなく、実に美しい」と解釈する。
 つまり、彼らにとってA not to say B は「Bと言わないまでもA」ではなく、「AというよりむしろB」、あるいは「A、それに加えてB」であり、我々が期待する内容のほぼ逆である。
(略)
「彼女はかわいい。もっと言わせてもらえれば、美人だ!でも、言わないけどね」(略)
 この「言わないけどね」の部分が(I'm)not to say に対応すると考えるといい。


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