壁の向こうの住人たち・その3

前回の続き。

壁の向こうの住人たち――アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

壁の向こうの住人たち――アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

 

不安を作り出すメディア、構造的忘却

 わたしが知り合いになった人たちの考え方に強い影響力を持つ存在として、FOXニュースは、産業、州政府、教会、通常メディアと肩を並べ、独自の政治文化を支えるもう一本の柱として機能している。マドンナはラジオ、テレビ、インターネットで始終FOXの情報をチェックする。マイク・トリティコの話によると、ロングヴィルではケーブル局の利用者がきわめて少ない(略)ので、屋根に取り付けられたアンテナの傾き具合から、誰がFOXニュースを視聴しているのかがわかるという。「ほぼ全員がFOXだよ」と彼は言う。

(略)

一日の終わりには、夫とふたりでやわらかいソファに並んで座り、大型画面のテレビで、五時のFOXニュースを観る。「FOXニュースの司会者はわたしにとっては家族のようなものよ」と彼女は言う。「ビル・オライリーは、恋人か、頼りになるパパ。ショーン・ハニティは怒りっぽくて気むずかしいおじさん。メーガン・ケリーは頭のいい妹。

(略)

FOXニュースは、グラウンドゼロの近くに「テロリストのモスク」[実際は穏健派イスラム教徒の施設]が建設されると言ってみたり(略)オバマ大統領が過激派組織ISの指導者、アブー・バクル・アル = バグダーディーを解放したとか(略)言いがかりをつけて人々の恐怖を煽るのだ。しかもその恐怖は、FOXニュースの大半のリスナー──白人中間層と白人労働者層──の恐怖を反映しているようなのだ。

(略)

 マイク・シャフも(略)“FOXファミリー”の番組を観て、主要な情報を得るが、とくに興味のあるテーマについては、CNNゃMSNBCCBSなども観て(略)リベラル派のコメンテーターの意見も聴いている。「リベラル派のコメンテーターは、わたしのような人間を見下している。われわれは"N"ではじまる言葉[ニガーなど、黒人を侮辱する言葉]を言っちゃいけないことになっている。言いたいとも思わないよ。自分を貶めることになるからね。なのに、なぜリベラル派のコメンテーターは、“R”のつく言葉[レッドネック。貧しい白人に対する蔑称]を平気で口にするんだ?」

(略)

ある教養の高い熱心なティーパーティー支持者は(略)時折、「芸術のページを読むだけ」の目的で、ニューヨークタイムズ紙の日曜版を買い求める。ほかのページは「捨ててしまう」のだそうだ。「あまりにリベラルで読む気になれない」からだという。(略)

「CNNは客観性がまったくないのね」と、彼女は不満を漏らす。「ニュースを観たくてチャンネルを合わせるのに、意見しか聞けないんだもの」

 「純粋なニュースと意見の見分け方は?」と、わたしが尋ねると、「声の調子でわかるわ」という答えが返ってきた。「クリスティアン・アーマンプールがいい例よ。あの人はアフリカの病気の子や、薄汚い服を着たインド人のそばにひざまずいて、カメラをのぞき込む。その声はこう言うの。「こんなことはまちがっています。わたしたちは手を打つ必要があります」って。もっとひどいときには、わたしたちがこの問題を引き起こしたのですって言うわね。その子供を利用して「何かしなさい、アメリカ」と訴えてるんだわ。でもその子の問題は、わたしたちのせいじゃないのよ」

(略)

「リベラル派はそれが政治的に正しいんだって、わたしのようなリスナーに感じさせたいの。そこが好きじゃないのよ。それに、その子をかわいそうだと思わないのなら、あなたは悪い人だなんて言われたくない」

(略)

わたしが話を聞いている人たちはみんな、深刻な環境汚染に耐えている。企業も政治家も州政府高官も沈黙しているが、ほとんど誰もがそのことを知っている。

(略)

多くの住民たちは、そうした問題を直視することを拒んだ。ルイジアナの美しさが目に入らないのですか。レイクチャールズのマルディグラに参加しましたか。なぜそんな陰気なことばかり考えるの?でもわたしはそうした問題をでっちあげようとしていたわけではない。そこにあったのだ。環境汚染が。健康問題が。そして教育問題と貧困が。

(略)

誰が環境問題を解決してくれるのだろう。企業がそうしようと申し出るはずがない。社会的支援に関しても、教会にはそんな使命も資金もない。驚いたことに、誰もが、問題を解決するとなれば、連邦政府が関わるべきだと思っている。しかし連邦政府が関われば、必ず右派が旗を立てて反発することだろう。連邦政府は大きすぎる、無能すぎる、悪意の塊だと主張して。

 つまるところ、すべての根っこは、構造的忘却にあるのかもしれない。なぜ騒ぐ?大問題とはなんだ?もっと重要なことがほかにもあるだろう。ISとか、移民とか、生活保護を受けるに値しない受給者とか。

ディープストーリー

「クレージーレッドネック」「ホワイト・トラッシュ」「南部の聖書ばか」。そんな言葉を耳にすると、あなたは自分のことを言われていると思う。

(略)

「労働者階級の白人はいまでも決まって頭の悪い人間のように描かれるが、黒人は、はっきり自己主張をし、都会で生き抜く術も心得ていて(略)」

 あなたは“自国に暮らす異邦人”なのだ。(略)

 あなたはこう叫びたい衝動に駆られている。「わたしだって社会的少数派だ!」と。(略)[でも]「かわいそうな自分」を哀れむ人々のパレードには加わりたくない。あなたはふたつの思いの狭間で身動きできなくなっている。(略)あなたと同じディープストーリーを共有する人々が政治運動を進めている。それはティーパーティーと呼ばれている。

 わたしはルイジアナの新たな友人や知人に、このディープストーリーを聞いてもらい、共感できるかどうか、尋ねてみた。マイク・シャフは、わたしの話を聞いたあと、メールをくれた。「わたしはまさにそのストーリーどおりの人生を送っている。州の環境基準局や国の環境保護庁の役人に仕事をしてもらうため、こっちは何億ドルもの血税を納めたのに、やつらは何もしていない。おまけに、あの怠け者連中は、自分たちの給料を払ってくれた労働者がまだ引退できずにいるうちに、さっさと列の前に割り込んでいって退職する。こっちは傷口に塩でもすり込まれた心境だ。ようやく納税者が退職にこぎ着けたころには、すでにワシントンの官僚が基金を使い込んだあとだ。われわれは列に並んで待ってるんだ」(略)

[リー・シャーマンは]こう言った。「きみはおれの心を読んだな」(略)ジャニース・アレノは、「そのとおりだわ。でもあなたはひとつ、言い忘れてる。列に割り込む人に使われてる税金は、割り込まれている人が払ったものだっていう事実をね」別の人はこうコメントした。「話はそこで終わっちゃいない。しばらくすると、待っていた人たちがしびれを切らして、自分も列に割り込もうとするんだよ」

(略)

 多くが“同情疲れ”を口にする。「リベラルはわたしたちに、黒人や女性や貧しい人に同情してもらいたがります。もちろん、わたしも気の毒だと思いますよ、ある程度はね」ある温厚そうなレストラン経営者は、わたしにそう言った。

(略)

右派のディープストーリーは、真の構造的圧迫と符号する。誰もがアメリカンドリームを実現したいと思っているが、いろいろな理由が重なり合って、足を引っ張られているような気がしてくる。そうなると、右派の人々は不満や怒りを感じ、政府に裏切られたと思うのだ。このストーリーでは、人種が何より重要なポイントである。興味深いことに、わたしが知り合った右派の人々は、なんの屈託もなく、メキシコ人(二〇一一年には州の人口の四%を占めていた)やイスラム教徒(一%)のことを話していたが、二六%を構成する州内最大のマイノリティ集団、黒人については、たいていが何も言わなかった。黒人のことが話題にのぼると、多くの人は、「北部」から人種差別主義者だと非難されているような気持ちになるのだと説明した

 右派にとっての主戦場

工業界の職場の多くはメキシコや中国、ベトナムなど、海外に移転してしまった。その結果、これまでとは異なる形の社会的闘争が、さまざまな場で生まれるようになった。(略)

上位一%の最富裕層と残り九九%との闘いに焦点を置く“オキュパイ・ウォールストリート”(略)

 今日の右派にとって、主たる戦場は、工場のフロアでも、オキュパイの抗議活動でもない。ディープストーリーの中では、地元の社会福祉事務所や、受け取るに値しない者に障害年金フードスタンプが届けられる郵便受けがそうした闘いの場なのだ。やる気のない怠け者に政府が給付金を支給している。これほど不当なことはないと思う。

(略)

左派の怒りの発火点は、社会階層の上部(最富裕層とその他の層とのあいだ)にあるが、右派の場合はもっと下の、中間層と貧困層のあいだにあるわけだ。左派の怒りの矛先は民間セクターに向けられるが、右派の場合は公共セクターである。皮肉なことに、双方とも、まじめに働いたぶんの報酬をきちんともらいたい、と訴えている。

(略)

 連邦政府に裏切られたと感じて、自由市場に全幅の信頼を寄せることにした右派はいま、ディープストーリーのせいで見えなくなったり、焦点がぼやけたりしていた現実に直面している。大企業がとてつもなく巨大化し、オートメーション化やグローバル化を進めて、力をつけていたのだ。(略)企業が力をつけたことで、労働組合や政府の抵抗も少なくなった。そこで彼らは、誰はばかることなく、最高幹部や大株主に利益を多く還元し、労働者に少なく配分することができるようになったのだ。しかし(略)右派をのみ込んだ闘争の場はそこではない。そこに着目するのは“まちがっている”のだ。

 だから右派の多くは、大企業と中小企業の利益が連動していないことに無頓着なのかもしれない。(略)

皮肉なことに、大手独占企業のために苦境に陥る可能性が最も高い経済セクターは、中小企業なのだ。しかもその多くは、ティーパーティーを支持する人々によって経営されている。

(略)

[だが]右派の人々は、自由市場を自分たちの同盟軍と考え、ともに強大な敵──連邦政府と“奪う者” との連合軍──に立ち向かうのだと思っている。

取り残された白人男性

 一九六〇年代から一九七〇年代へ移行すると、社会制度と法律制度に的を絞っていた運動が、個人のアイデンティティに焦点を当てた活動へと変化した。世間の同情を引くには、ネイティブ・アメリカンか女性かゲイでありさえすればよくなったのだ。右派、左派、双方の多くが忍耐力を試された。これらの社会運動は、列に並んでいたあるひとつのグループには目もくれなかった。それは、年配の白人男性だ。とりわけ、地球を救う役に立たない領域で働いてきた男性は置き去りにされた。こうした人々もマイノリティだったのに。あるいは近い将来そうなるはずだったのに。公民権運動や女性解放運動の非難の矛先が、特権を持つ白人男性に向けられていたとすれば、そろそろ、白人男性も犠牲者と見なされるべき時期が来たのではないか。声を聞き、尊重し、列の前方に入れるか、後方に押しやらないようにしてあげてもいいのじゃないか。しかしそれには、身震いするような矛盾がともなう。

(略)

われわれが(略)わたしは白人ですと言ったなら、人種差別主義の組織、アーリアン・ネイションのメンバーだと思われてしまうかもしれない。立ち上がって、男であることを誇りに思うと宣言したなら(略)男性優位主義者とみられるリスクを冒すことになる。

(略)

[年配の白人男性たち]もまた、ほかの多くの人々のように、立ち上がって一歩前に出て、アイデンティティを主張したかったのだ。そうしてもよかったのではないかと思っている。しかし他方では、彼らは右派の人々のように、原則として列に割り込むことには反対だったし、過剰に使われる「犠牲者」という言葉が好きではなかった。(略)

現実には、賃金カットやアメリカンドリームの行き詰まりに苦しんできたし、世間からは不当なまでに列の前方に居座っているように見られるという、隠れた屈辱にも苦しめられていた。

(略)

白人男性としては、原則として割り込みに反対しているのだから、おおっぴらに自分も列に割り込みたいとは言えない。葛藤に悩んだ彼らは、別の方法で名誉を回復しようと考えた。まずは、仕事にプライドを持っていると宣言してみようか。だが、雇用はだんだん不安定になっていて、いまだに働き手の九割は、賃金が据え置かれたままだ。

(略)

 ティーパーティー支持者は、仕事の代わりに、地域や州に誇りを見出そうとしてみたが、そこでも困難にぶつかった。(略)

その地位の低さに気づいていたのだ。「ああ、ここは“上空通過”の州ですよ」ティーパーティー支持派の教師は、わたしにそう言った。「進歩についていけず、貧しいと思われている」とこぼす人もいた。

(略)

 それから教会。ジャニース・アレノのような人の多くが「教会に所属している」ことと十一献金をすることのたいせつさを口にする。しかし、彼らが教会で学んだ教義──七日間で大地が創造されたとか、天国は巨大な立方体だとか、イブはアダムの肋骨から生まれたとか、進化は起こらなかったとか──の中には、文字どおりに受け取れば、広い世俗世界では、教育程度が低い証拠と見なされるものがある。

(略)

[コスモポリタンなグローバル・エリートは]自分のルーツから遠く離れた場所でもうまくやっていける。チャンスありとみれば、すぐにどこへでも飛んでいく。そして、人権や人種間の平等、地球温暖化との闘いなど、リベラルな大義に誇りを持つ。(略)

[一方で]ブルーカラー層の仕事や生き方、地域に根をおろして耐え忍んできた彼らの、自分自身──ディープストーリーそのもの──に対する誇りが、時流に合わないものになりつつあるのだ。リベラルな上部中間層は、地域のコミュニティを孤立と狭量の象徴と見なし、絆と誇りの生まれる場所だとは考えない。(略)

 アメリカンドリームを手にする道徳的資格が変化したことで、全国のティーパーティー支持者は、自国にいながら異邦人になったような立場に追い込まれた。(略)宣戦布告のない階級闘争が、これまでとは異なる舞台で異なる役者によって演じられ、これまでとは異なる不公平感を掻き立てた。だから彼らは、このような詐欺師を次から次へと「差し向ける者」──つまり、連邦政府──を非難するにいたったのだ。 

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壁の向こうの住人たち・その2

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壁の向こうの住人たち――アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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 アレノ夫妻

「わたしたちは、聖書をちゃんと尊重する候補者に投票するんだ」(略)

アレノ夫妻は「強欲な企業」が寄ってたかって弱者を踏みつけにしていると批判する。(略)「共和党は大企業の味方なんだ。(略)」

 しかし共和党は神と家族をたいせつにする。アネットは、「わたしたちはそこが気に入っているのよ」と言う。(略)

ふたりの場合は、政治が独自に重要な役目を果たせたかもしれない文化的空間に、信仰が入ってきたのだ。政府は助けてくれなかったが、聖書は確かに救いを与えてくれた。ふたりはそう感じていたのだった。

(略)

[夫妻の息子]ダーウィンにとってバイユーディンドの解決策は、権力や政治や科学をはるかに越えた向こうにあった。両親と同様、携挙の到来を信じていて、「終末のとき」のことを話した。(略)

火には浄化する力がある。だから千年後に、地球は浄化される。(略)

神がご自分の手で修復なさるまでは、神が最初に創造なさったとおりのバイユーを見ることはできないでしょう。でもその日はもうすぐやってきます。だから人がどんなに破壊しようとかまわないんですよ」

環境問題に口をつぐむ政治家 

この選挙戦では、泡沫候補にいたるまで、環境問題に口をつぐむ傾向が広まっていた。(略)あるリバタリアン候補者が数百人の聴衆を前に、「政府を追い出して」ルイジアナが「稲田に大麻を植えられるようにする」と誓った。ある民主党候補は、「わたしは民主党や大統領の意見のすべてに賛成するわけではありません」とことわってから、自分は中絶の合法化にも銃規制にも、石油企業への規制強化にも反対だと宣言した。

(略)

民主党のことが話題になると、苦い思い出が披露された。ある男性は、父親が亡くなるのを待ってからようやく共和党に投票したと告白した。すると、テーブルの周囲から、共感のこもった笑い声が上がった。(略)

ルイジアナは、以前は保守民主党支持者が多数を占める州だったが、一九七〇年以降は、10回の大統領選挙のうち、七回で共和党が勝利をおさめてきた。このような年齢の高い白人たちのあいだでは、右派への移行が今後も続くようだ。ある男性は、「おれたちの多くはうまくやってきたが、手に入れたものは失いたくない、それを誰かにただでくれてやるのはいやなんだ」と説明する。何を「ただでくれてやる」と思うのですかときいてみると(略)

[それは、公害により環境や健康を失うことでも]公共セクターの仕事を失うことでもない。その男性は、働かない者──何ももらう資格のない者──にただで税金をくれてやるのはいやだと感じていたのだった。税金だけではなく、名誉もだ。(略)

報われてしかるべき納税者と、報われるべきではない税金泥棒──ひとつ下の階層の人々──とのあいだの亀裂へと話題が移っていく。わたしはその後、この亀裂が感情の引火点であることに、何度も気づかされることになった。

企業誘致と環境汚染

 ジンダル知事は、“優遇策”として、法人税を引き下げた。(略)

ほかにも、二〇〇〇年から二〇一四年までのあいだに、ルイジアナ州はさらに二四億ドルの損失をこうむっている。鉱産税を全額免除された石油会社があったからだ(新規の企業は最初の十年間は非課税とされているので、社名を替えさえすれば、さらに十年間、免税措置を受けられるのだ)。それどころか(略)ルイジアナ州では「新規製造事業に対し、全米で最も少ない法人税を課している」という。しかも三年のあいだ、このような石油会社が納税しているかどうかを確認することもできなかったらしい。

(略)

ルイジアナの働き口の15%を供給していることを別にすれば、石油産業が州にもたらす財政面の利益は減少の一途をたどっているのだ。誘致のコストはかさむ一方だったのに、誘致後のメリットは小さくなる一方だったのだ。そのつけを払うため、公務員が解雇された。

(略)

 ポール・テンプレット博士は、二杯目のコーヒーを飲みながら、さらに先へと話を進めていった。「石油はいくらか雇用を生んでくれましたが、ほかの職を奪ったり、ほかの業種の──たとえば水産業や観光業の──成長を妨げたりしました」二〇一〇年にBP社のディープウォーター・ホライズンが起こしたような石油掘削施設の爆発事故は、水産業と観光業に深刻なダメージを与える。

(略)

 石油関係の仕事を擁護する主張のなかには、そうした職業に就く人は高給を得ているので、地域に徐々にお金がまわって消費が拡大し、ほかの業種の雇用も増えて、賃金も上がるとする意見があった。だが、実際はどうだったのか。「あまり効果はありませんでした」と、テンプレットは言う。なぜなら石油企業の資金は、徐々に地域にまわるどころか、外へ出ていくからだ。「ほとんどの工場は海外の企業のものです。[幹部は他州に豪邸を建て、お金を落とす]

(略)

わたしはテンプレットにきいてみた。石油の発見が、ルイジアナ州の貧困を招いたのでしょうか、と。「いいえ」と、彼は答えた。「ルイジアナはそれ以前から貧しい州でした。いまも貧しいです。全米で二番目にね」

(略)

わたしがルイジアナで話を聞いた住民の多くは、環境規制は、意図的に、あるいは結果的に、仕事を奪うものだと言っていた。

(略)

[MITの政治学者、スティーヴン・M・マイヤーの研究によると]

規制の厳しい経済圏ほど、多くの就職口があることがわかったのだ。(略)

厳しい環境政策は、国際市場における競争力を損なうどころか、むしろ強めることがわかっている。(略)

なぜティーパーティーの支持者たちはそれを耳にしていないのだろうか。おそらくその理由は、テンプレットが描いてみせた図式の最後のふたつの要素だろう。それは、石油業界の肥大化と、これみよがしの企業優遇策だ。企業が州から搾り取れば搾り取るほど、質のよい教育や医療の確保がむずかしくなり、貧しい人々がわずかな機会を利用できなくなり、経済のほかのセクターが委縮していく。すると、さらに石油業界に力が集中していくのだ。

 皮肉なことに、企業は善意のしるしと称して、しばしば地元のコミュニティに利益を還元してみせる。だがそもそも、その資金の出所は、財政難に苦しむ州政府が彼らを誘致するために工面した補助金なのだ。

(略)

いまやルイジアナの人々は……と、テンプレットはここでひと息ついてから、悲しい皮肉を口にした。「仕事だけではなく、贈り物までもらっていると感謝しているのです」と。

(略)

[社会学者アーサー・オコーナーの研究により]

青い州よりも赤い州のほうが、高レベルの公害に苦しんでいる実態が明らかになっていたのだ。(略)

[共和党候補が勝利した22の州では]住民がより汚染の進んだ環境で生活していることがわかった。

(略)

 二〇一〇年のデータでは、有毒物質による汚染が深刻な郡に暮らす人ほど、アメリカ人は環境汚染を「心配しすぎている」と考え、国は「十分すぎるほどの」対策をとっていると信じる傾向が顕著だった。そして、自分は共和党を強く支持すると答えた人の比率が高かった。

税金と献金 

 バプテスト、ペンテコステカトリックなど、わたしが訪れた教会では、どの宗派でも精神面以上のニーズに応えていた。しかも、わたしのティーパーティー支持派の友人たちが公的なものと結びつけて感じる屈辱感を与えない形をとっている。トリニティ・バプテスト教会は、エアロバイクや筋力トレーニングマシンを備えた広大なフィットネスセンターを敷地内に持っている。(略)

彼女のふたりの子供たちは幼いころ、ふたつの階にまたがる巨大な滑り台がお気に入りだった。上階から下の階まで一気に滑り下りると、色とりどりのやわらかいフォームラバーのタコやクジラやサメ、それにワニの操縦士付き飛行機、大きなカモメなどに迎えられた。もう少し大きな子供たちのためにも、日曜日ごとにスナックバー付きラウンジが開かれ、夏には教会のキャンプが催される。(略)

ほとんどの教会は、信徒に十一献金──収入の一〇パーセントを納めること──を求めている。多くの人々にとって、これは大金だが、献金は名誉なことだと考えられている。彼らにとって税金は支払うものだが、献金は捧げるものなのだ。

 携挙

 「わたしは資本主義と自由企業を支持しているの」カフェでアイスティーを飲みながら、マドンナ・マッシーはそう言った。「“規制”という言葉大きらい。自分が飲むコカ・コーラのボトルの大きさや電球の種類なんか規制されたくないもの。(略)

環境保護活動家は、絶滅危惧種のカメを守るために、アメリカンドリームを止めたがっている」と、彼女は言う。「でももし、アメリカンドリームとカメのどちらかを選ばなくちゃならないとしたら、むろん、わたしはアメリカンドリームをとるわ」わたしが話を聞いたほかの人たちも、同じような二者択一のシナリオを描いてみせた。

(略)

  アレノ夫妻やそのほかの人々と同様、マドンナも携挙を信じていた。聖書によれば、そのときには「大地がうめく」のだと、彼女は言う。「竜巻、洪水、雨、吹雪、争いが起こって、大地がうめくのよ」と。(略)

マドンナは今後千年のうちに、信心する者が重力から解き放たれて天国へのぼり、不信心者が「地獄」と化した地上に取り残される日が来ると信じているのだ。(略)

 では、いまうめいているこの地球をどうすればいい?と、わたしはマドンナにきいた。すると彼女は、「わたしは一〇人のひ孫たちには、すばらしい星に住んでいてもらいたいわ。でも、地球はもうなくなっているかもね」(略)

 米国の全土では、多くの人々がマドンナと同じことを信じている。二〇一〇年にピュー研究所が作成したある報告書によれば、米国民の四一パーセントが、二〇五〇年までにキリストの再臨が「おそらく」あるいは「必ず」起こると信じているという。

次回に続く

 

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壁の向こうの住人たち――アメリカの右派を覆う怒りと嘆き

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 まえがき

夫のアダムとわたしは、一九六〇年代後半にはすでにアメリカの文化に分断が生じていることを感じ取り、カリフォルニア州サンタアナにあるキングズ・カウアイ・ガーデン・アパート(略)に引っ越し、そこで一カ月暮らして、ティーパーティーの先駆団体であるジョン・バーチ協会の会員と知り合いになろうとした。わたしたちは協会の集まりに参加しては、できるだけたくさんの人と話をした。わたしたちが出会った多くのメンバーは中西部の小さな町の出身で、伝統的な価値観や社会的規範が崩れたかに見えるカリフォルニアの郊外で、深刻なとまどいをおぼえていた。その不安が高じて、彼らは、アメリカ社会が共産主義者に乗っ取られようとしていると信じるようになっていた。まわりを見わたせば、なぜ彼らが「乗っ取られる、と感じたのかがよくわかった。ほんの数年のあいだに、オレンジ畑がことごとく姿を消し、駐車場やショッピングモールが現れて、都市が無秩序きわまる形で拡大していったのだから。わたしたち夫婦もまた、何かに乗っ取られたような気がしていたが、その相手が共産主義だとは思わなかった。わたしは人生の大半を進歩的な陣営で生きてきたが、最近は、右派の人々をもっと理解したいと思いはじめていた。なぜ彼らはそうした考え方をするにいたったのか。共通項をいくつか見出して手をつなぐことはできないか。

マイク・シャフ 

話題は政治のことになった。「この辺に住んでいる者はほとんどがケイジャンで、カトリックで、保守派だ」と、マイク・シャフは説明し、楽しそうに付け加える。「わたしはティーパーティーを支持している」

 わたしがはじめてマイク・シャフを見たのは、その数カ月前、バトンルージュにあるルイジアナ州議会議事堂前の階段で開かれた環境集会の場だった。彼は聴衆の前に立って発言していた。込み上げる思いに、声がかすれていた。マイクは、米国で最も奇妙な、文字どおり地を揺るがす環境災害の犠牲になり、自宅もコミュニティも失った。(略)

この災害は、しっかりした規制を受けていない掘削会社が引き起こしたものだ。なのにマイクは、ティーパーティーの支持者として、ありとあらゆる規制の撤廃を訴え、政府の財政支出を──環境保護費もふくめて──大幅に削減すべきだと主張している。

(略)

背が高く、がっしりした体つきをしていて、茶色の縁の眼鏡をかけていて、いつもつぶやくように低い声で簡潔に話をし、悲しげに、ときに自嘲を込めてしきりと過去を振り返る。だがその一方、フェイスブックではたびたび堅い信念を表明していた。(略)

マイクの父は鉛管工の賃金で七人の子を育てた。「わたしたちはうちが貧乏だとは知らなかった」と彼は言う。その後、わたしが知り合った極右派の人々に、それぞれの生い立ちや両親の子供時代の話を聞かせてもらったときにも、これと同じ言葉を何度となく耳にした。マイクはエンジニアの目と、釣りや狩りを楽しむスポーツマンとして生き物を愛する心と、アマガエルの声を聞き分けるナチュラリストの耳を持っていた。わたしの知り合いには、ティーパーティーのメンバーなどひとりもいなかったし、そういう人と口をきいた経験もなかった。マイクもわたしのような者を多くは知らなかった。「わたしは人工妊娠中絶の合法化にも銃規制にも反対だ。他人を傷つけないかぎりは、自分の人生を好きなように生きる自由がほしい。それから、大きな政府には反対だ」マイクは言った。「この国の政府は大きすぎるし、強欲すぎて、無能すぎる。まるで既製品みたいで、もう自分たちのものだとは思えない。われわれは昔のアーメリーズ農園みたいな地域のコミュニティに戻るべきなんだ。そのほうがまちがいなく、暮らし向きがよくなる」

(略)

隔たりは広がってきた。それは左派がさらに左へ遠ざかったからではなく、右派がさらに右へ移動したからだ。共和党の三人の大統領、アイゼンハワーニクソン、フォードは、いずれも男女平等憲法修正案を支持した。一九六〇年に発表された共和党の政策綱領は、労使間の「団体交渉の自由」を容認していた。共和党員たちは、「最低賃金をさらに数百万人の労働者に広げ」、「失業保険制度の強化とその給付の拡大」をめざすと明言していた。アイゼンハワー政権の時代には、高所得者に91%の税率が適用された。二〇一五年には、これが40%まで引き下げられていた。

(略)

ロナルド・レーガン国債を発行し、銃規制に前向きな姿勢を見せたが、現在のテキサス州では、共和党過半数を占める州議会により、住民が装填ずみの銃を「公然と携帯して」教会や銀行へ行くことが認められている。現代の基準からすると、過去の保守派は穏健派かリベラル派のように見える。

 極右勢力はいま(略)連邦政府のありとあらゆる部門の縮小を求めている。二〇一五年一月には、共和党下院議員五八名が内国歳入庁廃止法案に賛成票を投じた。共和党の下院議員候補者の中には、公立学校の全廃を求めた人さえいた。(略)

一九七〇年には、大気浄化法に反対する上院議員は皆無だった。だが二〇一一年には、米国で汚染が最も深刻な州のひとつであるルイジアナ州選出のデイヴィッド・ヴィッター上院議員が、一五名の共和党上院議員と共同で、環境保護庁(EPA)の廃止を要求した。

給付を受けるティーパーティー支持者

 ジャーナリストのアレク・マクギリスは、ニューヨークタイムズ紙に寄せたエッセイ、「誰がわたしの青い州を赤に変えたのか」の中で、この大きなパラドックスに興味深い答えを出している。メディケイドやフードスタンプを必要とする赤い州の住民たちは、これらの仕組みを歓迎するが、投票には行かない。しかし少し上の階層にあたる白人保守派はこうした制度を必要とせず、必ず選挙に行く。そして、貧困層のために公的資金を使うことに対し、反対票を投じるのだ。

 この“少し上の階層”が鍵だとする見解は、答えの一部にはなるが、大部分ではない。そもそも、わたしものちに知ったのだが、政府のサービスに反対票を投じる当の富裕層が、そのサービスを利用しているのだから。わたしが本書のためにインタビューしたティーパーティー支持者のほぼ全員が、政府の主要なサービスの思恵を受けたことがあったり、肉親がそれを利用したりしていた。ある人の場合は、身体に障害を持つ高齢の親が民間の長期介護保険に入っておらず、メディケイドを受給するために、貧困者であるとの認定を受けていた。(略)

ある男性は、姉の不興を買いながらも──ふたりともティーパーティー支持者だ──フードスタンプの給付を受けている。また、狩猟シーズンのあいだだけ、失業手当を申し込む男性もいた。大半の言い分はこうだ。「あるんだから、使わない手はないだろう?」しかし多くの人は恥ずかしいと思っているらしく、名前を伏せてほしいと言った。(略)

だが公的サービスに賛成しない人も、恥だと思いながらそのサービスを利用しているのだ。

青い州の冷やかしがいかに赤い州を傷つけているか

 ルイジアナ南西部共和党婦人会のある会合では、ゴスペル歌手のマドンナ・マッシーに出会った。彼女はテーブルの向かい側の席からわたしに、「ラッシュ・リンボーが大好き」なのだときっぱり言った。以前のわたしなら、リンボーは独善的な人だと思っていたので興味も示さず、むっとして話題を変えていただろう。けれどもそのときはマドンナにこうきいた。「彼のどこが好きなのか、聞かせてもらえる?」(略)

「あの人が“フェミ・ナチ”──つまり、男性と対等になりたがって女性の権利拡張を過剰に訴えるフェミニスト──を批判するところ」(略)

わたしたちはリンボーが考え出したあだ名(“共産リブ[リベラルの仮面をかぶった共産主義者]”“環境過激派[原始の生活に戻るべきだと主張するゆがんだ環境保護主義者]”)のひとつひとつについて話をした。すると最後には、マドンナの心の底にある思いが見えてきた。彼女は自分がリベラル派の人々から侮辱されているように感じていたのだ。そして、そうした侮辱からリンボーが守ってくれていると思っていた。「リベラル派はこう思っているのよ。聖書を信じている南部人は無知で時代遅れで、教養のない貧しい白人ばかりだ、みんな負け犬だって。わたしたちのことを、人種や性や性的指向で人を差別するような人間だと思ってるのよ。それからたぶん、でぶばかりだってね」(略)

わたしは青い州の冷やかしがいかに赤い州を傷つけているかということに気づきはじめた。

(略)

わたしは、この大きなパラドックスの中心に、善良な人々がいることを発見しつつあった。あの心やさしいマドンナが、なぜ政府の貧困者支援に反対するのだろう。あのあたたかく明るくて、思慮深いマイク・シャフが、なぜあんなに連邦政府を目の敵にするのだろう。企業の不正行為や身勝手な破壊行為の犠牲になった彼がなぜ?

 リー・シャーマン

 リーは、石油化学工場の配管工として、苦しみ、その目で見て、命じられたことのせいで、熱心な環境保護主義者にもなった。

(略)

 しかしリーは最近、ティーパーティーのジョン・フレミング下院議員を支持するプラカードを自宅の芝生に立てることを決めた。(略)

なぜ環境保護主義者のリーが、環境保護庁の廃止を訴える政治家を支持してプラカードを立てるのだろう。(略)

[海軍造船所勤務時代]には、市民権と人権の擁護に力を尽くした冷戦時代のリベラル派、民主党のスクープ・ジャクソン上院議員の選挙運動を手伝っていたという。シングルマザーだったリーの母親も同じ造船所で働いて、男性と同等の仕事に対し同等の賃金を支払うよう求めて闘った。その彼女に育てられたリーは、自分のことをERA[男女平等憲法修正案]ベビー と呼んでいた。しかし一九六〇年代に仕事のために南部へ移り住んだあと、彼は共和党支持者になり、二〇〇九年以後にティーパーティーに加わったのだ。

(略)

[南部に移り板ガラス工場に勤務]

リーは工場であやうく命を落としそうになったこともあった。(略)

ある日の勤務中、手違いから、低温の塩素が摂氏五〇〇度の高熱にさらされ、たちまち気化してしまった。そのとき工場には一六人の従業員がいた。リーの上司は、会社に十分な数の防護装備がないことを知っていたので、彼に退避するよう命じた。「おれが外へ出てから三〇分後、工場が爆発した。逃げ遅れた一五人のうち、五人が犠牲になった」(略)

[見つからなかった]三人のうちひとりの遺体が、酸に分解されてばらばらになった状態で、バイユーディンドに注ぎ込む下水道の中から出てきた。

(略)

一九六〇年代のピッツバーグ板ガラス社では、最低限度の安全対策しかしていなかった。「(略)化学薬品を扱う仕事なのに、防毒マスクも着けなかった。鼻から息を吸わないようにして、口で呼吸することを覚えたもんだ」

 「会社は危険性についてあまり警告してくれなかった」

(略)

 事故はたびたび起こった。ある日[オペレーターの操作ミスで](略)

高温の有機塩素化合物液がパイプに流れ込み、リーはそれを頭から浴びてしまった。「熱かったよ。全身にかぶっちまった。(略)ひどい火傷を負った。とくにわきの下や脚の付け根、尻の割れ目が最悪だった。そういうところへ薬品が入り込むんだな(略)着ていたものが全部きれいに溶けてなくなったんだ」

(略)

[会社から衣服の弁償代として着用による劣化分を差し引いた]八ドルの小切手を渡たされたんだ」と、リーは苦々しげに言った。「現金化はせずじまいだった」

(略)

酸を浴びた事故からしばらく経ったある日、彼はまたもや、不気味な作業を命じられた。一日に二回、夕暮れどきに、しかも必ず内密でやれというのだ。(略)

[鋼鉄容器の底から回収されたタール状の有機塩素化合物の残渣が入ったタール・バギーを牽引したトラックを夜陰に紛れて走らせ]

「誰にも見られていないことを確認」して、つねに風上にいるように気をつけ(略)「かがんでバルブをあけた」。圧縮空気によって有毒物質が噴射され、どろどろの沼に向かって「七、八メートルほども」飛んだという。

(略)

[ある日]廃棄物を捨てていたら、一羽の鳥が煙の中に飛び込んできて、すぐ落ちてしまったんだ。まるで銃で撃ち落とされたみたいだった。

(略)

「自分がまちがったことをしていたのはわかっている」(略)

リー自身もあの鳥と同じように被害者になった。化学物質に曝露して具合が悪くなったのだ。炭化水素による火傷を負い、「両脚が棍棒になったような感じがして、膝を曲げることも、立ち上がることもできなくなった。

(略)

[障害者医療手当を払いたくなかった会社はリーを常習的欠勤を理由にクビにした]

(略)

[1987年汚染が問題化した際、説明会で「投棄したのはわたしです」と証言]

リーの人生で最も勇気ある行動は、会社の汚れた秘密を公表し、政府に憤りを感じていた一〇〇〇人の漁師たちに、責められるべきはピッツバーグ板ガラス社のような企業だと伝えたことだった。

 しかしやがて時が経ち、リー・シャーマンは左派から右派に転じた。

(略)

リー・シャーマンというひとりの男性の人生の中に、わたしは大きなパラドックスの両面を見た。支援を必要としているのに、それを拒否する姿勢を。自身も有毒物質の犠牲になり、公共用水域の汚染に加担したのちには、環境汚染を憎むようになり、いまでは環境保護主義者だと胸を張って言う彼が、なぜ、反環境保護主義のティーパーティーと運命をともにしようとしているのだろう。

(略)

  ティーパーティーの支持者は、三つのルートを通じて、連邦政府ぎらいになるようだ。ひとつ目は、信仰(彼らは政府が教会を縮小したと感じている)、ふたつ目は、税金への嫌悪感(あまりに高すぎ、累進的すぎると思っている)、そして三つ目は、これから見ていくように、名誉を失ったショックだ。

次回に続く。