放射線と冷静に向き合いたい

併用PET/CTスキャンによる被曝量

最近の医療現場ではほぼ決まってPET/CTの併用スキャンが行われ、被ばくは20~25ミリシーベルトとかなりの量になる。これは一年でふつうに浴びる自然放射線の7~8倍だ。併用PET/CTスキャンでは体内と体外の両方から被ばくする。体内は放射線トレーサーから、体外はCTスキャンで身体を通り抜けるX線からである。

肥料のポロニウムが煙草だけヤバイ理由

[面倒なので断っておくと、当方は非喫煙者だけど、肺がんは煙草より遺伝じゃないかと思ってますw]

喫煙をことさら不健康なものにしているのは、簡単に言うとたばこの成分ではなくそこに付着したものだ。肥料である。(略)
[肥料の化学物質に含まれる]ポロニウム210は四分の三ほどが食べ物から体内に入り、うち50〜90%は汗や便といっしょに排泄される。しかし、残りは体内にとどまり、血管を通って身体中をめぐる。喫煙者は非喫煙者に比べて血中のポロニウム210が30%多い。
 たばこに火をつけて煙を吸い込むとき、赤々と光る先端の中心温度は800〜900℃になる。これによりポロニウム210がエアロゾル(空気中を浮遊する微小な粒子)と化し、気管支樹や肺に直接吸い込まれる。フィルターはほとんど役に立たず、吸い込まれるポロニウム210の濃度を5%も下げない。ホウレンソウやブロッコリーなどの葉についたものは、何らかの理由で燻してエアロゾル化させないかぎりは危険でない。それに対し、たばこを吸うことはある意味、小さな核兵器を意図的に肺に吸い込んでいるようなものである。
 たばこメーカーは、たばこにポロニウム210が含まれていることを1960年代から知っている。

放射性物質漏れ事故

ゴイアニアでの事件は、きわめて放射能の強い物質が誤って取り扱われた異例の出来事ではない。1983年も暮れようという頃、テキサス州エルパソと国境をはさむメキシコのフアレスで、ゴイアニアでの一件とたいへんよく似た事件が起こった。ある電気技師が、うち捨てられた放射線治療装置のコバルト60満載のカプセルを回収し、危険性を知らずにトラックの荷台でそれを開けた。そして、自分の廃品置き場へ帰る道中で、放射能をもったペレットをあちこちでこぼしていった。
 多数のコバルト60ペレットが、スクラップといっしょに二箇所の鋳造場へ持ち込まれ、そこでテーブルの脚や建設用の補強財につくりかえられた。合わせて数千トンの金属が汚染された。放射能をもった金属はしばらく検出されずにいたが、それを積んだトラックがニューメキシコ州で曲がるところを間違え、ロスアラモス国立研究所の近くを通って放射線警報を鳴らしたためにようやく発覚した。捜査官は汚染された金属の残りをアメリカ国内数州とカナダで見つけ出したほか、汚染された鉄筋がメキシコの少なくとも四州で何百という新築家庭に使われていたことを突き止めた。
 この事故では、スリーマイル島原子力発電所から漏れ出た分の約100倍にのぼる放射性物質が放たれ、多くはなかったがそれなりの線量を200人以上が長期に浴びた。この一件は北米で最悪の放射性物質漏れ事故とされている。
 こうした話は物騒なほどよく起こっている。
(略)
 NRCには線源の紛失や盗難が毎年200件ほど報告されている。1993年以降、そのうち20件で線源が製鉄所などの鋳造場で融かされ、新しい材料としてリサイクルされていた。だがこれらは装置が不適切にリサイクルされたケースのごく一部でしかないとNRCは考えている。
(略)
 1999年、スペインのカディスからそう遠くないところにある製鋼所で、セシウム137を含む医療機器が監視装置で検知されずに門を通過し、製鋼過程でほかのスクラップといっしょに融かされた。このとき発生したガスが工場の煙突から放たれ(放射線検出器は備え付けられていたが、作動していなかった)、大気中に拡散した。これにより、一時的に平常時の1000倍の放射線測定値がフランス、スイス、イタリア、オーストリア、ドイツで観測された。また、1982年から1984年にかけて、廃品に混ざっていた放射性金属が融かされて鉄筋に使われ、台湾北部で少なくともアパート2000戸の建設に使われた。ある報道によると、少なくとも一万人が長期にわたって低線量を被ばくし、数人が亡くなった。
(略)
[1980年代ソ連セシウム137がコンクリートの平板の一部となり]
ある部屋の寝室の壁になった。そこで暮らした一家は病気になって出ていった。そのあと越してきた人たちも病気になった。この寝室を共有し、線源の隠れている壁に足を向けて寝ていた兄弟は、脚に発疹や潰瘍が現れ、のちに骨髄不全を発症した。兄のほうは、かかとに骨のがん(骨肉腫)も患って命を落としている。住民や現地当局は、こうした健康問題を不運のせいにしていた。この話がめぐりめぐって、ゲイルのロシアの同僚アレクサンドル・バラノフの耳に届いた。彼はすぐさま原因は急性放射線症ではないかと疑った。そして問題の部屋に派遣された検査官らが、壁の中の線源をすぐさま発見して回収した。子ども一人とその母親がすみやかに病院に収容されて治療を受けた。

[Q&A]

放射性物質が海にたどりつくのは危険ではないのか?

 答えはイエスでもあり、ノーでもある。放射性物質が海にたまるのを防げる場合はそうすべきである。だが、たとえば福島での事故のような状況では不可能だ。幸い、海にたどりついた放射性核種は大量の海水で一気に薄められる。このことは、魚や海草などの生き物へのリスクを大きく下げる。また、セシウム137など、潜在的に危険ないくつかの放射性核種はカリウムに似ている。そのため、セシウム137は生き物の中に入り込むために何十億の何十億の何十億倍も多いカリウムと競わなければならない。また、吸収されたとしても、比較的すみやかに排泄される。そのため、放射性物質が海にたどりつくことは、特殊なケースを除いて、はじめに思ったよりは危険でない。忘れてはならないのは、1946年から1972年まで、多くの国が意図的に大量の放射性物質(沈めた原潜も合む)を海に投棄していたことだ。この慣行は現在中止されている。また、1945年から1980年まで行なわれていた大気圈内核実験によって、大量の放射性物質が海にたまった。それから、海にはもとから放射性核種が含まれていることも忘れずにいよう。出どころは地震や川からの流入などさまざまで、ウラン、トリウム、ラジウムなどの放射性元素が地中から運ばれて表面に出てきたのである。それに、海には天然のカリウム40が大量に含まれている。

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