どうすれば「人」を創れるか

どうすれば「人」を創れるか―アンドロイドになった私

美人ジェミノイドＦ

研究員であるＯ君は、最初、きれいな女性の見かけを持つジェミノイドＦに触ることを非常に躊躇していたという。（略）しかし、研究を進めるにあたり、ロボットの体に触れないではいられない。やがてジェミノイドＦが研究室にきて一週間もすると、その研究員もアンドロイドの体に触れることに躊躇が少なくなっていたそうである。そうした折りのことであった。報道発表の準備のために、アンドロイドＦのモデルと、Ｏ君が会う機会を得た。その時、Ｏ君は何だかとても恥ずかしい思いをしたのだという。
（略）
報道発表の数時間前から、Ｏ君は、Ｆのモデルが操作する練習につきあっていた。（略）それまでに何人かにジェミノイドＦを操作してもらっていたが、それらの人と比べて、Ｆのモデルは格段にうまかった。そうして数時間、Ｏ君が、Ｆのモデルが操作するジェミノイドＦと一緒に過ごしたのである。その直後に、私はＯ君に「どうだった？」と感想を聞いてみたところ、非常に照れながら「うまくいえないんですが、ジェミノイドＦと一緒にいると、すごく愉しかったです」と、顔を真っ赤にして答えていた。
（略）
[見学者の一人が]遠慮なく、ジェミノイドＦの手を握って写真を撮っていた。それを見ていたＯ君は「腹が立ちます」と怒っているのだ。確かに私にもその気持ちが分からないではなかった。

自分よりも「私」をうまく操作する他人

[アンドロイド演劇を観た]Ｆのモデルにさらに意見を聞くと、「自分よりもうまく操作していて、悔しい」ともいっていた。Ｆのモデルも、報道発表以来時折アンドロイドを操作している。そしてその操作は、他の誰よりもうまかった。しかし、このアンドロイド演劇では、プロの役者が一ヶ月にわたってアンドロイドを徹底的に使いこなしてきた。そのため、Ｆのモデルよりもずっとうまく操作して、アンドロイドに適応できている。Ｆのモデルは自分の姿形を他人に取られたような気がしたことだろう。
「その姿形は誰のものか？」と問われたときに、一つあり得る正しい答えとして、「その姿形を最も効果的に使える人のもの」といえるだろう。
（略）
そしてさらに、ジェミノイドは操作する女優からも解き放たれて、舞台上で独立した存在になる可能性がある。実のところ、アンドロイド演劇には、操作者はもう必要ないのだ。一度遠隔操作すれば、コンピュータが、女優の語りとともにジェミノイドの動作も全て完璧に記録してしまうことができる。ゆえに、その後はデータをプログラミングしてしまえば、女優は遠隔操作しなくても、アンドロイド演劇は公演できるのである。

加齢と肥満で自身をモデルにしたジェミノイドとズレが生じた著者は、ジェミノイド頭部皮膚を新しくするだけで300万円かかるから自分を改造した方が安上がりと、ダイエット＆若返り整形を敢行。「美容整形とアンドロイド製作は似ている」と実感。さてこのような著者の行為に対する周囲の反応は・・・、誰も気付かなかったｗ。
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