基地はなぜ沖縄に、中国の軍拡

チラ見二冊。

基地はなぜ沖縄に集中しているのか

基地はなぜ沖縄に集中しているのか

  • 作者:NHK取材班
  • 発売日: 2011/09/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

烏帽子岩が遠くに見える

[朝鮮戦争の頃は米軍基地の90%が沖縄ではなく日本本土にあった]
湘南海岸で海兵隊が訓練を行っていた事実にも衝撃を受けた。(略)
茅ヶ崎ビーチ」は元々、旧日本軍の砲弾試射場だったのを戦後アメリカ陸軍が接収したもの。海岸のシンボルで、地元出身のサザン・オールスターズの歌にも出てくる沖合の烏帽子岩は、米陸軍の砲弾射撃訓練の標的となったことで崩落し姿を大きく変えたものだった。『茅ヶ崎市史』には、訓練は、朝鮮戦争直前から休戦にかけての時期に激しくなったと書かれている。(略)その後も「茅ヶ崎ビーチ」は、日本本土で唯一本格的な上陸作戦訓練が行える演習場として、全国各地に分散していた海兵隊部隊も盛んに利用することになった。

バンフリート・レポート

一九五四年四月から七月の間にいったい何かあったのか。(略)
《日本本土の第三海兵師団を沖縄に移すことを強く勧告する》と記した電報。送り主は、朝鮮戦争で司令官も務めたジェームズ・バンフリート元陸軍大将。宛先は、極東米軍の再配置を主導したウィルソン国防長官である。(略)
[アイゼンハウワー大統領に提出された文書には]
《日本人は全体的に、中立主義的な傾向を持っており、防衛力を増強することに反対である。(略)米軍の存在そのものが、中立主義を促進する重大な要因になっているように推察される(略)日本政府に、自衛隊の創設を急がせるためにも、米軍の日本本土からの撤退を促進すべきだ》と主張。

沖縄の方がやりやすい

[元海兵隊大佐ミレット博士は]
重要だったのは[地理的重要性ではなく]「コストの問題だ」と切り出した。「沖縄の方が土地の賃貸料が安く、本土に駐留させるよりも費用対効果が大きかったのです。沖縄は米軍の管理下にあり、米軍こそが中央政府でした。本土でやればもっとコストがかかるような難しい訓練も、沖縄では安上がりにできたからです(略)
[駐留による反米感情の高まりを避けるため]
可能ならば日本の一般市民から部隊を“隔離”すること。そのためには日本本土より沖縄の方がやりやすいのは明らかでした」

屈辱の日

[サンフランシスコ平和条約で]沖縄は日本本土から分離され、アメリカの施政権下におかれた。米国民政府は、沖縄戦以後、接収し基地として使用していた土地に関して、布告・布令を発し使用権限を固めていく。(略)
特に住民と米軍が鋭く対立し、大規模な反対運動が起こった地区があった。沖縄県北部の離島・伊江島と、本島中部の宜野湾村(現・宜野湾市)伊佐浜である。(略)
《米軍は、一九五五年三月一一日未明、完全武装した三百名余の軍隊を伊江島に上陸させてきて、「この島は米軍の血を流して日本軍よりぶん取った島だ、君たちには何の権利もない。イエスでもノーでも立退かねばならない」と暴言したあと、手を合わせて歎願する農民に暴行を加え、荒縄でしばり(中略)十三戸の家に(略)火をつけて焼き、又はブルドーザーで破壊して立退かし、畑のまわりに金網を張りめぐらして、核模擬爆弾の演習基地に使いました》

岐路に立つ中国―超大国を待つ7つの壁

岐路に立つ中国―超大国を待つ7つの壁

「核心利益」論

[尖閣事件後の温家宝国連総会演説]
中国首脳が公式に「核心利益」に言及、しかも「決して譲歩・妥協しない」といった強い言辞を用いたのは初めてだ。タカ派のネットですらビックリ、「過去20年間で最も強い外交主張」だと評していた。私が在野の「青っぽい」論調だと楽観していた「核心利益」論は、いきなり中国政府の公式見解になってしまったのだ。(略)[ただ同じ演説内で]中国は決して『国が強くなれば必ず覇を唱える』途を歩むことはない。[とも発言]
(略)
はて、どちらが「本当の中国」なのだろうか。(略)
2009年7月、胡錦濤主席が駐外使節会議で重要講話を行い、この中でとう小平[←文字化けするのでひらがなにした]の遺訓「韜光養晦、有所作為」の前後に四字を加えて「堅持韜光養晦、積極有所作為」(韜光養晦を「堅持する」が、必要に応じて「積極的に」対応することもある)とした。何だか「足して二で割る」感じだが、ある中国外交学者によれば、党中央の重心は「韜光養晦」堅持にあり、新たな情勢を踏まえて「微修正」を施すくらいのつもりだったという。しかしこれ以降、海外を不安に陥れるような強硬な言動が中国から一斉に飛び出してくるようになった。(略)「積極」の二字の追加を見るや、党中央の意向をそっちのけで、あちこちで「待ってました!」とばかりに「対外硬」のスイッチが入ってしまった感じなのである。中国のある学者は、その背景として、いまや中国政治は各種の特殊権益グループの力が強まり、グループ同士の利益のトレードはたとえ国家指導者であっても容易に無視できなくなっていることを挙げていた。
 例えば中国の大手石油三社は最近海外油田権益の獲得に邁進しているが、交渉段階では外交部に一切報せず、成立後これを「通告」して「在外権益の保護」を要求するなどである。案件によっては外交部が難色を示したくなるものもあろうが、後の祭り、そして、消極的な外交部を尻目に「権益保護」に積極協力の姿勢を示すのは、海軍だったり海洋局だったりする。別の筋からも、広大な南シナ海における「核心利益」論は海軍が後押ししているのだが、国内からさすがに「権益(予算など)獲得動機が露骨すぎる」との批判があると聞いた。

中国の軍拡

日本で中国の軍拡と言うと、「毎年軍事費を二ケタ以上の勢いで伸ばしてきた」という認識が一般的[だが](略)公表べースの国防費は意外なことにGDPの1.5%水準をきれいに保っているのだ(略)[これは]党・国務院と軍の間に何らかの「黙契」があることを窺わせる。共産党が解放軍を「指導」するための数少ない有効な歯止めがこれなのかもしれない(略)
「GDPの1.5%」と聞くと1980年代の日本が対外公約にしていた「GDP1%枠」を想起する。(略)[周辺国の「日本軍国主義復活」懸念を和らげるために]案じられたのが「GDP一%枠」政策だ。しかし、中国の「GDP1.5%」は周辺諸国の懸念に応えるためではなく、優れて国内的な必要に応えるためのものだ。(略)共産党と解放軍の力関係が変われば、突破される可能性が十分ある。