ジャズ・ヒップホップ・マイルス

ジャズの「黒さ」は、アカデミックな良心的継承者のマルサリスより、ヒップホップにあるという著者。

ジャズ・ヒップホップ・マイルス (NTT出版ライブラリーレゾナント)

ジャズ・ヒップホップ・マイルス (NTT出版ライブラリーレゾナント)

  • 作者:中山 康樹
  • 発売日: 2011/09/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

あいつらは曲が作れない

きっとまた世の中は俺たちのところに戻ってくるさ。だってあいつらは自分で曲をつくれないんだぞ。連中にできることといえば、元のデザインがわからなくなるくらいごてごてに飾りつけることくらいなんだから。
これは誰が何に対して発した毒舌だろうか。(略)1948年、アメリカのジャズ専門誌『ダウンビート』において、ルイ・アームストロングビバップのミュージシャンに対して放った言葉である。

ジャズの進化の果て

[1947年ジャズのリズムに限界を感じたディジー・ガレスピーはコンガを導入]
《クバーナ・ビー》と《クバーナ・パップ》は、そもそもはガレスピーが思いついたイントロをジョージ・ラッセルが発展させたものだった。そして完成に至る過程で、単なる「ジャズとラテンのフュージョンだったはずのもの」は「モード・ジャズ」の先駆的作品へと生まれ変わっていく。
(略)
[同時期にマチートと共演した]パーカーは実にリラックスした表情でサックスを吹いている。次なる展開としてビバップとラテンの融合を考えたガレスピーと、あくまでも主流はビバップ、それ以外の音楽は傍流とみていたであろうパーカーとの差異は、ここでも対照的な結果として表れている。
(略)
ガレスピーやチャノ・ポソあるいはメンバーによる意味不明のかけ声の応酬はラップそのもののようにも聴こえるが、こうした手法はすでに以前から存在していた。ブラック・ミュージックの常套ともいえる。しかしながら打楽器の使用、つまりはガレスピーが最大の魅力と考えた「ポリリズム」にこそ、その後のジャズの可能性そして進化した果ての「ヒップホップとしてのジャズ」の萌芽がみられる。

On the Street in Watts

On the Street in Watts

 
I'll Stop Calling You Niggers

I'll Stop Calling You Niggers

  • The Black Voices
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

ラップ生誕の地

本書ではラップ生誕の地をロサンゼルス、最初のラップ・グループをワッツ・プロフェッツ、そして69年に発表された彼らのデビュー作『ザ・ブラック・ヴォイシズ・オン・ザ・ストリート・イン・ワッツ』をのちのヒップホップ/ラップの第1弾と規定したい。
発端は65年、作家/脚本家[マーロン・ブランド『波止場』]バッド・シュールバーグがワッツに開設したワッツ・ライターズ・ワークショップに遡る。(略)ワッツ・プロフェッツは67年、そのワークショップに通っていた三人の黒人青年によって結成された。


Sweet/Black Dada Nihilismus - Amiri Baraka(Leroi Jones)&The New York Art Quartet

ニューヨーク・アート・カルテットの演奏は、フリー・ジャズと称されるスタイルの典型であり、ヒップホップに発展する要素は見当たらない。しかし[詩人&ジャーナリストの]リロイ・ジョーンズが参加した《ブラック・ダダ・ニヒリズムス》だけは、基本的に朗読であり、その意味ではポエトリー・ブルース/スポークン・ワードの範疇に入るものだが、独特のリズム感とある種のグルーヴ感は、明らかにのちのラップを想起させる。

西のワッツ、東のラスト・ポエッツ

ラスト・ポエッツのデビュー作『サ・ラスト・ポエッツ』は70年に発売されたが、すでにライヴ・パフォーマンスを通じて話題を集め、その名は西海岸にも届いていた(故にワッツ・プロフェッツのデビュー作に収録されている《パーティーズ》では、ラスト・ポエツツの名前も登場する)。

When the Revolution Comes

When the Revolution Comes

  • ザ・ラスト・ポエッツ
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes
ウェン・ザ・レヴォリューション・カムズ

ウェン・ザ・レヴォリューション・カムズ

 

メリー・メル証言、始まりは74年

俺が13歳のころ、クール・ハークというDJがサウス・ブロンクスにいた。(略)ヒップなセリフを吐きながらレコードをスピンさせた。1974年のことだ。(略)
ハークのセリフに肉付けをし(略)俺たちはリズムをつけた語り口で、詩やちょっとしたフレーズを並べ立てた。(略)俺たちはめきめき上達し、あっという間に人気が出た。(略)カウボーイはココア・モーが踊る様子をみて、軍隊が行進するようにかけ声をかけた。「Hip,Hop,hibbit to the hip-hop」(略)
《ラッパーズ・デライト》を聴いたとき、俺たちは嘲笑った。グループはシュガーヒル・ギャングといったが、奴らはブロンクス出身じゃなかった。ニュージャージー出身が2人もいた。ラッパーはみんな、そのレコードを嫌悪した。はっきり言って、ごたまぜだった。カウボーイの「Hip Hop hibbit」というフレーズを使っただけのくだらない演奏だった。俺たち本場のラッパーは、「こんなもの、絶対ウケないぜ」と口々に言った、だか、それが世界中でもてはやされた。


Kool Herc - Merry Go Round technique

『ザ・ファンキー・16・コーナーズ』にはストーンズ・スロウ・レコードが「世界初のラップ」と認めるコ・リアル・アーティスツの《ホワット・アバウト・ユー》が収録されている。録音は1974年。

What About You?

What About You?

  • Co-Real Artists
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes
Funky 16 Corners

Funky 16 Corners