サマワ篭り、ボッタクリ米軍再編

前日のつづき。

「戦地」派遣―変わる自衛隊 (岩波新書)

「戦地」派遣―変わる自衛隊 (岩波新書)

1000人派遣は大げさになると首相官邸、結局600人に。安全確保優先で、肝心の復興支援に従事できるのは100人。

ここから読み取れるイラク派遣の意義とは、「復興支援を行うことではなく、イラクに居続けること」。サマワ宿営地は最初はテントだった。次に鉄製のプレハブの周囲を分厚いコンクリートで固めた。最終的には天井に土嚢、壁はコンクリートという鉄壁の要塞が完成した。派遣開始から実に一年が経過していた。完成後、部隊は外出の回数を極端に減らした。襲撃の危険性を回避するため、外に出て地元民と交流して信頼を得るという手間がいらなくなったからだ。

なぜサマワ

[人口が少なく監視しやすい。派遣先選定ポイントは復興支援より安全確保]
陸幕幹部は「米軍から離れている地域であることが極めて重要だった」と打ち明ける。「当初、自衛隊を守ってくれるのは米軍しかいないと考えていたのは事実です。しかし、その米軍がイラク人や武装勢力の反発を買い、襲撃を受けている。サマワなら米軍のいるバグダッドから約300キロと遠く、自衛隊が米軍を狙った攻撃に巻き込まれることはないと考えた」

シミック

[サマワ入りすると治安維持担当のオランダ軍が日本のやるはずの施設復旧をやっていた]
ほとんどの軍隊はCIMIC(Civil Military Cooperation)と呼ばれる民生協力部隊を持ち、施設復旧や給水を始めていた。軍隊が支援活動まで踏み込むのは、地元の人々を雇用して復興事業を進めれば治安の安定につながると考えるからだ。いわば部隊を守る保険である。
「われわれは海外経験が乏しく、シミックの存在そのものを知らなかった」

ストレス

はじめから派遣延長ありきの行政府に対し、チェック機能を果たさない立法府。対米支援に傾斜したイラク派遣の実態は国民に語られることもない。国民の支持を受けない活動は、派遣された隊員のストレスにしかならない。

[空自幹部]「前のめりになりがちな政治家やマスコミはシビリアンコントロールの自覚をしっかり持ってもらいたい。情報のない海外派遣は暗闇を全速力で突っ走るようなもの。自衛隊は未熟だ。弱さを自覚して、はじめて地に足のついた活動ができる」

なぜ空自空輸の八割が米軍使用となったか。
2006年6月の陸自撤退の代わりに米軍から空輸強化の要求。さらに米軍空輸のみになることをおそれた外務省の要求で無料国連空輸も開始(他国は有料)。米軍からは「タクシー」と呼ばれ、米軍内で搭乗手続きしてなかった米兵が空自に搭乗拒否されたと苦情電話一時間という始末。
「無償」

テロ特措法の特徴は、「無償」で燃料や水を提供している点にある。米国や英国から提供を受ければ有償だから、日本の参加が喜ばれるのは当然といえば当然の話だろう。(略)
[海自幹部]「[軍事行動できない日本は]燃料の無償提供を提案した。政府は「テロとの戦い」を強調するが、テロ特措法の本質は対米支援にあった」

2003年米軍再編案

1.ワシントン州フォートルイスにある広域司令部の陸軍第一軍団をキャンプ座間に移転させる、2.横田基地の第五空軍がグアムの第十三空軍を吸収後、司令部機能をグアムに移転させる、3.在日米軍司令部を横田基地(空軍)からキャンプ座間(陸軍)に移す――である。(略)
[日本は仰天]空軍を弱体化させるのは、もはや日本への本格侵攻はないと米軍が考えている証拠である。しかも陸海空軍と海兵隊の四軍で編制される統合任務部隊の中核になる陸軍に司令部を移す。(略)[これはブッシュ政権採用の]「先制攻撃戦略」の先兵となる可能性を示唆しているからだ。
 米軍の構想からは、日本を防御対象ではなく、作戦指揮の拠点にしようとする意図が透けてみえる。

再編は打ち出の小槌

米軍は普天間移設が進まないことを理由に、沖縄に居座るだろう。(略)そして、米軍は日本の費用で建設したグアム島と沖縄に二ヵ所の軍事拠点を労せずして手に入れることになる。(略)
防衛施設庁関係者は「厚木基地から岩国基地への移設費用は三千億円以上かかる。言い出しっぺは米軍なので費用は米側負担が筋だが、米軍再編と絡めたことでなぜか日本負担になった」と解説する。米軍再編は米国にとって打出の小槌でもあったようだ。

艦に戻る前に消毒せよという海自に「おれたちはバイ菌か」と陸自激怒。陸自の装備は海上輸送を想定しておらず、ヘリは揺れで海に落ちる危険。起床艦内放送に「安眠妨害」と陸自激怒。点呼方法から、ヘリの飛び方までちがう。陸自ヘリは艦艇をさがして海上を飛べず、海自ヘリは山間部飛行を苦手とし天候悪化の際は山間横断ルートを避け、海岸線を迂回。燃料までタイプが異なり、連携を想定していなことが露呈。
官僚化

イラク派遣を担当した防衛省内局の幹部は、極端に官僚化した陸上自衛隊幹部の姿に驚いたという。
 「行動のひとつひとつに防衛庁長官の命令文を出すよう求めてくる。法律や実施計画を読めば、分かることなのに自分で判断しようとしない。「危険な地域に派遣したのは政治の責任だ」と毎回、迫るわけです。シビリアンコントロール大義名分のもとで、一切の責任を回避する。万一、死者が出たら、彼らはどんな態度をとったのか」