あの細野晴臣がここまで不遇感いっぱいで土曜の夜はシックシックなのかと。
- 作者: 細野晴臣,鈴木惣一朗=聞き手
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2011/02/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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不遇
[はっぴいえんどもソロも売れず]
で、その後クラウンに移ってつくった二枚。あれはもっと孤独だった。いままで聴いてた人がみんな離れちゃった。怖がって。(略)
とにかく苦労してきた。全然売れなかったんだよ。で、YMOで売れちゃったら、それはそれで別の苦労があった。(略)
[幸福感を味わえるようになったのは]
今だよ、今。去年くらいから。
瞑想
[YMOワールドツアー中]
とにかく孤独に負けてた。慰めが欲しかった。「いい子いい子」してもらいたかった。癒されたかった。でもそれが一切なかった。このままじゃダメになると思って瞑想するようにしたんだよ、ツアー中に。そしたら変化があったの。ヨーロッパツアーを終えて帰ってきたら元気になっちゃった。
空気
その場の空気と音をまるごとひとつのマイクで録るっていう、その豊かさを取り戻すことなんだ。(略)
1940年代頃の音楽の良さは、レンジの狭さとかセピア色とかそういうことじゃなくて、空気をまるごと一本のマイクで録音したっていうことなんだよ。(略)
マルチレコーディングになって以来、空気を全部削ぎ落として「音」だけの情報にして、空気がなくなった分をエコーで処理して空間をつくっていくことの空虚さ。それを今、痛感してる。
孤独
[音楽をつくっているときの孤独は]
楽しくてしょうがない。地球が相手っていうか。盛り上がるよ。孤独の対極にある状態だね。むしろ孤独を感じるのは、土曜日の夜に誰ともご飯に行けないようなときだ。
昭和
1950-60年代の初期くらいまでは、毎日が、ホントに『サザエさん』みたいだった。つまり何も考えなかった。考えずに日々が過ぎていった。「明日も来るな。おやすみなさい」って、何の不安もなかった。家と家の間は垣根だけだったし。ブロック塀で固めてない生け垣だったから、すかすかだった。フラっと誰でも入ってこれて、食べ物を持ってきてくれたり。お裾分けっていって。そういう自然な流れがあった。犬も猫も入ってくるし。とても気持ちのいい空間だった。
個人
今の人間のあり方ってきついと思うの。点でしか存在できないから、もろになんでも自分でかぶっちゃうんだよね。メディアからも個人がターゲットにされる。
若者
コミュニケーションの回路を開けば、必然的に悪いニュースも入ってくる。これはしょうがないことなんだよ。でも、それを閉じちゃうと私小説の世界に入っていくしかない。今の若い人の心って柔らかくて弱いんだろうね。キレイなんだと思う。ピュアでね。だからこそ守らないと崩壊しちゃう。だから回りを固めちゃう、ヨロイカブトで。そうするとだんだん中身も固まっちゃうんだよ。だから余計用心深くなっていっちゃう。でも、それは本当は危険なことなんだよね。
いい音楽はフルボリュームにしたって静か
CDとかレコードの場合は、実はゲインは関係ないんだよ。うるさい音楽は音を小さくしたってうるさいし、逆に、いい音楽はフルボリュームにしたって静かなんだよ。これはホントに不思議なことなんだ。最近の音楽で言えば、ぼくはブリトニー・スピアーズとかを、クルマでフルボリュームで聴くのが好きなの。音のつくり方、とくに低域の処理に感心しちゃうんだ。フルボリュームでも音が割れないのがすごいし、うるさくない。やっぱり日本のポップスの人はアメリカにもう一度勉強にいかなきゃダメだと思った。
(略)
大ヒット曲なんだけれども、静かなの。音数が少なくて、構造がしっかりしていて、音楽的にしっかりしてる。「静か」っていうのは、音楽として聴こえるっていうことだよ、音の塊じゃなくてね。
断絶
「そんな風に思ってたのか」とか思うわけ。仲良かったつもりだったから。
(略)
自分の問題で家庭を顧みなかったことをどういう風に伝えるべきかと思って、小学校の娘に「親の因果を受け継ぐな、親の因果を越えろ」って言ったの。
(略)
受け止めてくれるのかと思ったら、受け止められなかった。
(略)
そのときのことを彼女はちゃんと覚えてて、ついこの間も、そのことで責められた。