何でもレイプのせいにするなよ

前日のつづき。

性犯罪被害にあうということ

性犯罪被害にあうということ

事件から九ヶ月後元彼と別れた著者は他の男性と交際しようとするが

 しかし、たとえ相手がそんな友人だとわかっていても、腰に手を回されただけで吐いてしまうこともあった。
 彼と恋人としてつき合ってみようとも思った。食事や遊びに行くことは今までどおりにできる。なのに、彼の部屋に行っただけで、私は吐いてしまった。彼の目の前で。*1
 異性に「男」を感じた瞬間、相手が私を女として見たと感じると同時に性の対象と見られたと感じ、吐き気をもよおす。
(略)
 実際、その後出会う男性とも、身体が触れると気分が悪くなってしまった。
(略)
 身体の反応は、そんなことが当たり前になってしまったが、ひとりの時間はやはり不安だった。
 「シンちゃん」に電話をしてしまう……。
 「頼むから、もう俺のことは忘れて、幸せになってくれ」
 彼は言った。
 もう恋人じゃないことは解っている。でも、「シンちゃん」に頼り、何かあると電話をしてしまう癖が抜けない。

触られるだけでダメと言っている著者に新恋人出現。生理中にレイプされ玩具挿入された著者は

 私がセックスに対して人よりも恐怖心が強いこと、敏感であることは話していた。事件のことも話した。話せば分かってもらえると思っていたから。車の中ではイヤだということ、玩具などの身体以外のものを入れられるのは怖いこと、真っ暗で大音量の曲が流れている環境もダメなこと、生理中は絶対にできないこと

こう釘を刺されているのに問題の新恋人は

 でも、彼は、数日後には私が「怖い」と訴えたことを忘れてしまう。セックスが始まればまた、口を押さえられたり、玩具を使われたり……。吐き気がする。
(略)
 彼が私に、
 「セックスを恥ずかしいなんて思わないで。美佳は真面目すぎる。こんなときくらい大胆になったり、理性を失ったりしていいんじゃない? たまにはリラックスしなよ。いつも気を張ってると疲れちゃうよ」
 と言ったことがあった。

バカ炸裂である。レイプ被害者の恋人の「口を押さえて玩具を使う」とは、唖然である。どういう神経をしているのだ。
さて著者はどうしたか。三択クイズ。


1.何を考えているのかと、小一時間説教。糾弾球団設立。
2.口には出さなかったが、深く傷付いたので、即、別れました
3.結婚しました!o(^O^)o



察しのいい方はもうおわかりでしょう。
正解は「3」です。スゴイネ!
日頃痴漢扱いされぬかと怯え「なにかわたくしに失礼が…」と女性の顔色を伺いつつ生活している繊細な男性諸君には理解しがたい現実がいまここに。一番許せないのはレイプ犯である。でもレイプ被害に苦しんでる女性の「口を押さえて玩具を使う」って、どうよ。レイプ犯はつかまえられないけど、バカ男は目の前にいるぞ。「噛み付かないのか、今しかないぞ」ですよ。編集者もあざとい表紙でメイクマネーする前に少しは突っ込んだらどうだ。部屋に呼んだだけで吐かれた男性はもう自殺しているのでこの本を読むことはないが、もし読んでいたらきっと憤死してるYO。
この本の目的はなんだ。そんな本にこのような無神経な男が平然と登場している。レイプ被害についてなにかを世に問うていく前に、そのバカ男をどうにかするべきだろう。どうにかするどころか結婚してしまうとは。触られるだけでダメなんですとか書いておいて。
まあ百歩譲って「人間だもの」複雑なのよ、レイプされて精神状態が普通じゃなかったのよ、etc、で結婚するのもヨシとしてですよ。
その結末はどうなったか。
事件は「2000年8月31日」に起こり、一年半後「玩具男」と同棲、そして結婚

 夫とは、生活はうまくいっていたが、相変わらず気分は悪くなり、「吐く」ことから抜け出せない。(略)
どんなにかたちを整えても、整えれば整えるほど、押さえつけられる力を感じるようになり、吐いたり、発疹など、身体に症状が現れるようになった。
 家に帰ることも嫌になり始めた頃、私は夫に、離婚したいと伝えた。
 突然のことに、夫は驚いていた。
 本当の理由を伝えたくなかった。
 「嫌いになったわけじゃない」「悪いところがあるわけじゃない」という曖昧な私の申し出に、夫はなかなか応じてくれず、いろいろな解決策を提案してきた。が、夫とのセックスの後に吐いていたことを打ち明けると、承諾してくれた。
 そして二〇〇五年十二月、離婚をした。
 夫を傷つけてしまった……。

ここでもレイプ後遺症でうまく性生活を営めなくて結婚がうまくいきませんでした、みんなわたしが悪いの「夫を傷つけてしまった……」とかなんとか暢気な事を書いているが、問題はレイプ後遺症じゃなくて、「口を押さえて玩具を使う」バカと結婚したことでしょうが。
こうやって世間には「まあ、レイプされた汚い女とか言われて恋人に捨てられちゃうのよねー、かわいそう」とか「後遺症で結婚破綻するのねー」とかいう暢気な見解が世間に広まっていくのである。
著者の決定的にダメなところは、肝心なところでは何も考えずに「レイプから立ち直れない私が悪いんです」で済ませ、どうでもいいところで色々考えたつもりになって、か弱い私が勇気を出してすべてを話します風を装っているところ。

 「シンちゃん」は、電気を消すことも、私に覆い被さることもしなかった。理由を尋ねて初めて、彼が私に「怖いと思わせないように」気を遺ってくれていたことを知った。

私もまさか、「シンちゃん」以外の人とセックスをし、ましてや結婚するなど夢にも思っていなかった。
 「好きだったからでしょ」
 そう言われてきたし、そう誰もが思うかもしれない。でも、私はかたちだけでも、順調に幸せと思われ、そう呼ばれる姿でありたかった。

著者は「シンちゃん」と結婚したかったのだが果たせず、レイプによって汚れたからだと勝手にフィクションをつくりあげて、それを正当化するためにバカな「玩具男」と結婚して破綻してしまう。その不幸はレイプとは全く関係がないのだ。結婚したかった男にふられて、バカ男に手を出したというだけの話なのだ。それをレイプ被害者だからオールマイティなのをいいことになんでもレイプに結び付けて世間に誤った認識を撒き散らしていく。


と、まあ相当にヒドイ書き方をしたのだが、これをセカンドレイプだなんだというのならね、まず例のバカ男を先に糾弾して下さい。あきれてものもいえません。
他にも著者と親の関係がつっこみどころ満載なのだが被害拡大しそうなのでやめておく。
とりあえず

「俺の姉ちゃんになんてことを!!」ではなく、「そんなひどいことをされたのに、姉ちゃん、仕事に行ってるの?凄いよ」

という弟の反応にこころなごむものを感じたのであった。

*1:部屋に来ただけで吐かれたこの男性は後に自殺