クラッシュ再結成、か?

前日の続き。
クラッシュを解散させた十字架を背負い、うつ状態で彷徨うジョーの明日はどっちだ。

リデンプション・ソング ジョー・ストラマーの生涯

リデンプション・ソング ジョー・ストラマーの生涯

 

ミック・ジョーンズ追放

「ジョーと俺は『ロンドン・コーリング』を出した直後から、この件を話し合ってきたんだ」と言うのはポールだ。「俺はスタジオでは、ミックと大声で怒鳴りあってたよ。ミックの脱退を望んでたのは、バーニーじゃなくて俺たちだったんだ。
[5年後インタビューではジョーがバーニーが俺とポールをそそのかしたと語っている]

1983年8月最終週。珍しくリハーサル一番乗りのミック。そこへ突然トッパー・ヒードンが顔を出したので二人はジャムった。

それから『帰った方がいいな』って言うとミックが『そうだな、他の連中はどこ行ったんだろう。いつもは俺が一番遅いのにな』っていぶかしがってたよ。
 トッパーが帰ってから、ミックは本屋に行き、そこから戻ると(「いつも通りあいつは遅刻さ」とポールは僕に言ったが、こうした行き違いが話を複雑にしているのだ)ジョーとポールが待っていた。「俺たちはお前にやめて欲しいんだ」とジョーが口火を切る。「お前はどうなんだ」とミックはポールを振り返った。「俺もだ。やめてくれ」とポール。ミックは僕に語ってくれた。「俺はギターをケースに入れて、抱きかかえて出て行ったんだ」。バーニー・ローズが彼を追いかけ小切手を持たせたそうだ。「退職者に金時計を、ってわけさ」

かつての仲間マルコム・マクラーレンがミュージシャンとしてアルバムをヒットさせたことに刺激され、バーニーはミックの代わりになろうと目論む。
84年にジョーの父が死去、母が末期癌宣告。

やり直したかった、ジョー

85年8月初頭偶然あった著者をパブに誘い、「ミックが正しかった」「バーニーが最新アルバムをジャックして曲を書かせろと言ってきた」とジョー。時すでに遅くミックはBADのアルバム制作中。
それでもミックが参加した『シド・アンド・ナンシー』「ラブ・キルズ」セッション後、二人は引き続き会うようになり、86年BADのセカンドではジョーが共同プロデュース、他のメンバーは二人がやり直すのではと心配するくらい。

スタジオでの彼の姿を見ると、このときも目には悲痛な表情を浮かべ、今にも泣き出しそうに見えることもあった。ミックや彼の気の合う仲間と仕事をしているうち、ジョーは改めて彼とのパートナーシップがどれほどすごいものか実感し、素晴らしいチームが決裂したことを悔やんでいたのだろう。このとき彼は不可能と知りつつも、クラッシュをやり直そうと思っていたのだ。

86年末母死去。さらにひきこもるジョー。

  • アースクエイク・ウェザー(89年発表)

デモを聴かせろと会社から言われてソングライターとしてのプライドが傷ついたり。
最新音楽事情を把握させようと優れた新作を周囲が聴かせようとすると。
ルー・リードの『ニューヨーク』は自信喪失したくないと断固拒否。
当時好んで聴いていたのはポール・サイモンの『グレイスランド』。
ウォーターボーイズ『フッシャーマンズ・ブルース』を聴かせると

『こいつは感じたことを歌ってないな。ボブ・ディランは〈ドアをくぐりぬけた〉とは言わずに〈煙が宙を舞う〉って歌うだろ。あからさまなことは言わないんだ。なのにこいつはまともに受け止めてる。つまんないな』

ウツのせいか失敗を大きく受けとめてしまう

「ツアーでニューヨークを訪れた夜に、グリニッチ・ヴィレッジのタワーレコードに俺のレコードがないことがわかって、思ったよ。『もう引き際かな』ってね」
 その言葉からは音楽への情熱が冷め、魂が凍り付いてしまったかのようにも感じられる。
(略)
 ツアーは成功だったが、レコードは売れなかった。『アースクエイク・ウェザー』の売り上げは全世界でわずか7000枚という寂しい数字で、映画のサントラだからという言い訳ができた『ウォーカー』の半分にも満たなかった。こうした悲惨な売れ行きは(略)大きな痛手となり、この失敗を一人で背負い込んだ彼は(略)失望しバンドを解散させてしまう。
 (略)「面白かった。みんな腕のいいプレイヤーだったし。だけど俺は心の奥で、新しいものはもう作れないなとわかってたよ。だから解散させたんだ。みんなには感謝してる」。

94年ペリー・ファレルが再結成に数百万ドルオファー

 ロラパルーザの場合はともかく、ルシンダと付き合いだしてから、ジョーはクラッシュの再結成には執拗にこだわっていた。仕事が必要だし、何より収入と刺激が欲しかったのだ。(略)
ミック・ジョーンズは、ジョーの計画を持ちかけられると、反対こそしなかったが、唯一つ条件として自分のマネージャー[起用を主張](略)「他の二人は反対してたわ」とトリシアは言う。
[遂に三人でミーティング]
 ジョーはまずクラッシュをやめさせたことに対して、ミックに謝罪しようとした。だがこのとき意外なことに、ポールが文字通りジョーの口を押さえたのだ。『俺は謝らないぜ』と彼はミックに言う。『お前をクビにしたのにはちゃんとわけがあるんだ』」
 「小道に呼びつけられて殴られた気分だったよ」とミックは言う。
 「ミックはいろいろと耳の痛いことを聞かされてたわ」とトリシア。「でもミックは前向きに話す気になっているのに、ジョーが突然『カクテルを作るから飲んでみてくれ』って言い出したの。それから10分ちょっとくらいかけて作ってた。ジョーはミックを避けていたのよ。心の底ではそんな昔の話をいまさらほじくり返したくなかったのね。ミックとコズモは一緒に帰っていったわ」

泣けるミック回想

(号泣ポイントをデカ字にしてみた)

 「その前にもジョーは何度か、『よお、クラッシュをもう一回やろうぜ』 って言ってたよ」とミックは言う。「バハマでもそう言ったけど、あれは時期が悪かった。けど90年代の前半に再結成の話をしたとき、あいつは突然『面倒なことはやんないほうがいいな』って言い出したんだ。イズリントンのユニオン・チャペルに座ってたときだ。レイヴの時代だったんだ。あいつも少し遅れてレイヴを見つけて、突然『わおー』ってのぼせ上がったんだ。隣同士に座ってその話をしてたよ。いきなり『面倒なことはやめようか』って言い出したから、俺は『わかった』って言ったんだ」、ミックは笑う。「それっきりさ。再結成の話をしたのはそれが最後だった。多分ね……」
 「あいつと話をしてよかったのは、ずっと変わらず親友でいられたってことだね。再結成することはなかったけど、友情は続いたんだ。再結成でもしてたらまた揉めてたかもしれないしな。そんなことないか、俺たちも成長して物事がわかったからな。ずっと一緒に頑張っただろうな

墓を掘るジョー

 ある晩、ジョーはジャマイカのDJにちなんでチャカ・デーマスと名づけた剛毛のフォックステリアの死骸を腕に抱えて、デイヴのいる工房にやってきた。デイヴが振り返る。「チャカ・デーマスは車に轢かれたんだ。それでジョーが工房の裏に埋葬したのさ。葬式にはうってつけの天気だった。木々の間から満月が出て、そこを細長い雲がゆっくりと過ぎていくんだ。ジョーは製造所の裏で黒くて長いコートを着て墓を掘っていて、僕にブランデーを一口くれた。大粒の涙を流しながら墓を掘っていたよ。ニューポートで墓掘りのバイトをしていた話をしてくれたんだ。実はさぼって掘らなかったって言うけど、ちゃんと掘り方をわかっていたよ」
 「ジョーの涙は、犬のことだけではなさそうだった。いろんな思いが去来してたんだ。『俺がこの犬をどれだけ愛してたか、誰もわからないだろうな。今それを自分の手で葬っているんだ』、彼は犬を他に見立てていたんだと思うよ。もちろん兄デヴィッドのこと、それに両親さ。

95年5月ルシンダと結婚。日高博正が結婚祝いに送ったグラストンベリー・フェスのチケットがジョーの人生を変える。エクスタシーを初体験、ミックがダンス・ミュージックに惹かれたわけを実感。その後のフェスでは宿のない人のためにテント10個張ったり、『ここをフリー・コンサートにしてやろうぜ』と自腹購入のチケットを仲間にタダで入手したと言って配ったり。ようやく調子が出てきて

  • メスカレロス結成

 バスの中でバンドの席順は決まっていて、メンバーは後部のラウンジ、ジョーが前の席に座り、ギターの整備をしていたアンディ・ブーがジョーの相手をすることが多かった。クラッシュ時代と同じく、ジョーはライヴが始まるまでの昼間はほとんど口を利かず、飴玉をなめてハーブ・ティーをすする。ライヴ前の気付け薬となるグラスー杯のブランデー以外は、ステージが終わるまでほとんど口にしない。サウンドチェックではジョーだけバンドを抜けて一人でプレイし、修正したい問題が生じたときだけバンドとチェックする。「僕たちが実際口を利くのはライヴが終わって、夜バスに戻ってからやっとだよ」とスコット。「本当に奇妙な関係さ。時々ジョーは親父みたいにどっしりして、時には悪魔、また時には理解できない人間になるんだ。ステージではいつもとんがっていて、次どうくるかわからなくて、冷や冷やさせる。最初バンドの中では緊張してたよ」。ラティーノ・ロカビリー・ウォーのときと同じく、ジョーは観客の見えないところで、手を背中に回してバンドに指示を出していた。合図を見逃したメンバーにはモノが飛んでくるのだ。

パンクとヒッピー

 マジック・マッシュルームのメリットを話しているうち、僕はジョーが田舎に引っ越したことについて、結局パンクは髪をショートにしたヒッピーではないのかと聞いてみた。「いや、違うな。ヒッピーで始まりパンクで終わった俺だから言えるよ。二つの違いは、ヒッピーは別世界の存在を手放しで信じようとしたが、パンクはその世界を作り上げようと努力したんだ」

  • 焚火事件

ホテルの横の駐車場でキャンプファイア、当然警備員が駆けつける。ビデオの撮影と言っても信じないので、ポール・ウェラー「Wild Wild Wood」のカヴァーだと言うとようやく納得。

  • 心臓発作

ではなく、先天的心臓欠陥で50年の生涯いつ突然死してもおかしくない状態だった