偉大なるジャズメンとの対話

偉大なるジャズメンとの対話 22人のジャズメンが語る、ジャズの真実22話

偉大なるジャズメンとの対話 22人のジャズメンが語る、ジャズの真実22話

ソニー・ロリンズ

 昔、50年代のころのことだけど、ジャズという音楽は、今ほど認められていなかったんだよ。ビジネスとしても成立していなかった。「ビジネスとして成り立たないようなビジネス」だったわけなんだ。ジャズに興味を持ってくれる人なんていなかった。
 私たちは、すごく小さなグループで活動していた。その小さなグループの中では、みんなが仲間で、家族で、友人だったんだ。
 ジャズは世界から認められていなかったから、その小さなグループで力を合わせて、世界と対立している。言ってみれば、一人一人が独立した事業家で、その事業家が集まって一つの共同体を作っている。そういう状況だったのだよ。その共同体、グループの中には、マイルス・デイヴィスがいて、ジョン・コルトレーンがいて、セロニアス・モンクがいた。そして私もいたわけだ。
 例えばマイルスは、私にとっては非常に身近で直接的な家族のような存在だった。コルトレーンも同じ。彼らとは本当にいろいろなことがあって、苦しんで、感情を分け合ったよ。
 50年代のニューヨークのジャズなんて、今、君たちが思っているようなきらびやかなものではなかったわけだ。すごく小さなクラブで演奏しなくてはならなかったし、ギャラがもらえなかったり、客が一人もいないような店で演奏しなくてはならなかったり。
 そんな状態だから、空腹に耐えられなかったり、孤独に耐えられなかったりして、その結果、アルコールやドラッグにみんながいってしまう。それで、命を落としてしまった。それがジャズの現実だよ。