晶子とシャネル語録

前日のつづき。
ココ・シャネルが著作権問題にズバリ言うわよ。

いったん見出されてしまえば、創造なんて無名のなかに消えてゆくものよ。

特に男前な部分だけ斜体にしてみたわよ。

晶子とシャネル

晶子とシャネル

フェミニストについて

そんな数の少ない人たちのことを聞いてもらっても困るわよ。こちらは服を売るのが商売なんだから。
ドレスは、女らしく、エレガントに、男性に気に入られるために着るものよ。だのにブルー・ストッキングは男性に嫌われるありとあらゆることをやった。で、成功したわよ。嫌われたから。

コピーを肯定したシャネル

クチュリエの役目なんてたいしたものではなくて、時代にただよっているものを素早くキャッチするアートだとしたら、いつか他人も同じようなことをするでしょうね。わたしが、パリの街に漂って散らばっているものにインスピレーションを受けたのと同じことよ。別の人間がわたしの真似をして同じようなことをしたとしても当たり前だと思わない?
そうですとも、いったん見出されてしまえば、創造なんて無名のなかに消えてゆくものよ。
……こう思っているからこそ、ずっとわたしは他のクチュリエたちから孤立している。あの人たちにとってコピーされるという大問題は、わたしには最初から無い問題なのだから。

シャネルに言わせれば、誰からも模倣されないような服は魅力のない服なのである。模倣され、コピーされ、街行く皆が同じようになってしまう装い、それこそシャネルのめざした「マスのモード」だった。

偽者主義。

模倣されて広くコピーが出回るということは、その商品に魅力があることの証しである。偽者が現われてこそ、本物は本物としての実を示す。(略)
シャネルのコンセプトは「偽物主義」と呼びうるだろう。シャネルはあらゆる意味で偽物を愛した偽者主義者であった。
なかでも最も名高いのは、宝石の偽物、すなわちイミテーション・ジュエリーである。(略)シャネルに言わせれば、アクセサリーで問われるべきは美しさであって、金の問題ではないはずである。(略)

「わたしがイミテーション・ジュエリーをつくったのは、宝石を廃絶するためよ」
「大切なのはカラットじゃないわ、幻惑よ」

「できるだけ早く死ぬほうがありがたい」

モードをストリートに広げるということ、それはある服装を「流行」にのせるということである。誰もが競ってそのスタイルをし、遂には皆が同じスタイルになってしまうまで流行らせること。そのとき、流行は終わり、また次の流行が始まる。こうしてたえざる現在性を提供しつつ、それを商品化するのがモードという仕事であってみれば、確かにそれは「不滅」の芸術からもっとも遠い。「できるだけ早く死ぬほうがありがたい」のである。
シャネルがコピーを容認したということは、こうして成立するファッション・ビジネスの論理をしっかりと把握していたということだ。

大衆の夢のオーラにつつまれた権威

貴金属でもないそのアクセサリーをシャネルは貴金属と同じくらい高い価格で売りつけた。いかなる理由で? ほかでもない、シャネルがデザインしたという無形の価値によって。いってみればシャネルは自分の名をダイヤモンドのように高価なものにしたてあげたのである。シャネルは、時代にときめく自分の「名」を売った。自分の名が大衆の夢のオーラにつつまれていることをよく承知して。
モードはできるだけ多数に売れなければならない。しかしそれは安物であってはならない---一言で言ってシャネルは「ブランド」というもののパラドクスを見事に解決させた。偽物が大量に出まわるほど、「本物」のオーラがましてその価値がせりあがる。

シャネル以前、商品に夢のオーラをあたえていたのは、たとえばルイ・ヴィトンがそうであるように、皇室御用達のお墨付きであった。皇室という顧客の権威がヴィトンのトランクに無形の信用を授けていたのである。起源にあるのはいわば王の権威だった。これに比ベシャネルの新しさは他の誰からも権威を借りることなく自分自身をスターにしたことにある。いまや権威のオーラは皇室でも貴族の血統でもなく、日々消費されてゆくメディアによってつくられることを彼女は見抜いていた。力があるのはもはや一部の特権階級ではなくマスだということを。

あなたを真似てショートカットが流行しましたねと言われ

ショートカットが流行ったのじゃないわ、私が流行ったのよ。