ビバ、AT限定フィールド

鉄の棺に乗る権利を取得してはや三年。助手席に人を乗せたことがありません、轢くよね、いとうあさこです。
インドア一直線な人間には不要だった気がしてなりません。そもそもそんなものを取る気は全くさらさらサラサーテ、大体あれじゃない、若い時に取らなかったら「ここまで取らずに来たんだから今更」と益々頑なに取りたくなくなるというか、そもそも貧乏一直線で鋼鉄棺購入の可能性がないわけで、国家や警察に搾り取られてまで必要なものには思えないし、自転車サイコー、ビバ、人体エネルギーえころじー、俺のパワーでどこまでも。
ところが、核家族の最後の一人になってみるとどうにも精神が集中できなくて、うーん、一ヶ月この調子ならいっそのこと今しかできないバカなことをやったらどうよ、それに遺品のプログレ3000ccもあるし、やっぱり田舎暮らしには必要なのかもと、永年の堅い決意を破って突発的に鉄棺学校に入学したのであった。受付の女性は年齢を見て「免許取り消しの過去があるなら正直にゲロするように」と言ったですよ。確かに回りを観ればヤングばかり。さすがに教官は運転を見れば初心者だとわかるので「どうして今までとらなかったの」と聞いてくる、くだくだ説明するのもメンドーなので「ずっと東京にいたもので」と言うと、せっくるネタを振られたDTのように皆ミナ遠い目になって、ナルホドーと納得したふり。へいかんとりいまん、とーきょーにいたつて、のるひとはのつてます。ぼくはびんぼーいんどあはだつたのでひつようなかつたのです。
そうだ問題はマニュアルかオートマ。迷わずAT限定フィールドを選択。もう歳だし、ともかく取得が最大の目的だ。でも入学後、2chを覗いたら、男でATはヘタレ、彼氏がATだったらひくよね、そんな衝撃発言が。そのときのボクはきっとウクレレを抱いた「いとうあさこ」のようだったはずさ。いいじゃない気にしないさ、ATコースはオンナノコばかりでサイコーって2chに書いてあったもの、どうしても欲しくなったら、がまん円払って限定解除しちゃうもん。そんなわけで三週間毎日片道20分自転車で通って、AT選択のおかげで、さしたる苦労もなく仮免まで到達して、なんとなく学校というのもこれはこれでこのばかばかしさというのもそれなりに新鮮な気がして資格取得にはまる人の気持ちがちょっとわからないでもなかった。

  • 不満

30万かかるシステムをどうしても維持したいならそれでもいいけれど、もう少し有効なシステムを作れないものか。安全マインドとかやってる時間があったら車を運転する技術をもっと教えて欲しいものだ。だって初心者が最初にぶつかる困難って結局、車庫入れじゃない。たぶん縦列駐車は一生やらない、できない。まあ学校側にすれば不安な奴はさらに金を払えということなのだろうけれど。

  • 疑問

合格率90%という試験。どうみても嘘くさい。もし本当に90点が合格ラインならありえない。言葉遊びのような引っ掛け問題ありで、たとえ知識が完全でもかなりデンジャラス。俺真面目だからちゃんと勉強しちゃったけど、周りの様子を見ていて、あの調子で九割合格は絶対ありえない。多分、下一割で足切りか、もっと低い合格ラインがあると思われ、だって日本語も覚束ない外人さんが受けに来てたよ。つまり真面目な人間は真面目に勉強してしまうし、そうじゃない人間には学校がこんな調子では受からないとハッパをかけるただの口実。でもやっぱり気が小さい人間はついつい勉強しちゃうよね、引くよね、いとうあさこです(余談だが、いとうあさこ、押しが弱そうで多分バラエティ的には未来はないだろうし、自虐ネタもかなり痛々しい年齢に突入、ネタ自体もさほど斬新ではなくブレイクはないだろうとは思うが、どうにかしてあげたくなる人柄芸風にハラハラする今日この頃、でも人の心配してる時じゃないよね)。

  • 惨事

まあともかく晴れて免許を取得してショッピングセンターの端の誰も止めてないところに駐車して買物をしてやや傾斜のついたマンションの駐車場に入れようとして途中で止まっちゃったので軽い気分でアクセルを踏んだら恐ろしいことに。もう横でブレーキ踏んでくれる教官はいなかつた。割と簡単に取れたのでチョット車をなめてたよ。しみじみ竹中直人の気持ちがよくわかつた。そう大変なのは免許を取ってからなのだった。

女性自身・2003年11月4日(火)発売
免許とりたて「若葉」マーク 
“車庫入れ”悲劇
竹中直人(47)
ああベンツが新築の塀が…

つづく。
きっと誰か轢くよね。
いとうあさこでした。