ダイナマイト・キッド自伝

やはり最高の好敵手と認めているのはタイガーマスク
しょぼマスクへの失笑が感動に変わった伝説のデビュー戦で交わされた会話。

PURE DYNAMITE―ダイナマイト・キッド自伝 (BLOODY FIGHTING BOOKS)

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タイガー初登場

リングに現れた彼の姿を見て言葉を失った。それまでに見てきたマスクの中でも最悪の出来だったからだ。(略)リングに上がった佐山に向かって、俺は例のごとく花束を投げつけてやった。だが、その時のヤツは何かに動揺していた。今にも半べそをかきそうな感じで、両手で顔を覆っていた。(略)
小さな声で聞いてみた。「どうしたんだよ?」と。するとヤツは、「マスクが……」と聞き取れない小声でモグモグ言うと、頭を下げてしまった。だから、息をひそめて「わかってる。最悪だな」と言ってやった。(略)
で、「もうガタガタ言うな。とにかく試合を続けるぞ」と言った。

蛇の穴

71年“蛇の穴”ビリー・ライレー・ジム初体験、シュートでしごかれる

この時すでに年のいっていたビリー・ライレーはひとことも言わず、ベンチに腰を下ろし、ただじっと視線を浴びせるだけだった。正直言って、それが恐ろしかった。彼らのしごきが終わった時には、俺はもう立つことすらままならず、マットの四方で引きずられたために、顔と両腕の皮膚はズルズルと擦りむけ、ヤケド状態になっていた。

  • 75年英国デビュー。一年後“ローラーボールマーク・ロコ(のちの「ブラック・タイガー」)とハードな試合を展開
  • 78年4月所持金僅か20ポンド(8000円)でカルガリーへ旅立つ。たった二ヶ月のつもりが13年になるとは。
  • 友人への悪戯話の後に

でも、ディオンヌ・ワーウィックが歌っていたじゃないか。「そのために友はいるんじゃないか」って。

  • 79年夏。ジャンクヤード・ドッグから「ステロイド」を、ジェイク・ロバーツから「スピード」を教えられる。
  • 79年後半、ミスター・ヒト経由で国際プロに参戦。ギャラは10日で1000ドル(20万円)。最悪待遇で日本にこりごり。だが、数ヵ月後、ギャラ二倍で新日から話が。厚遇に満足。藤波と好ファイトを展開。
  • トップロープからのブレーンバスターは俺のオリジナル。全日で渕に放ったのが最初。
  • 82年仕掛けてきた突貫小僧星野総裁を返り討ち。

「この野郎」とばかりに「グロヴィット」[フロント・フェイスロック]をかけてきやがった(略)ヤツがグロヴィットの掛け方をカール・ゴッチから伝授されたのは間違いない。(略)
[残念だが“蛇の穴”で]俺はその外し方を習得していたのだ。その時、俺はヤツの左ヒジに右手を伸ばし、一点集中でグイッと引っ張ってやった。すると危うく切れてしまうほど、ヤツの指関節は悲鳴を上げた。(略)
 [翌日の試合]星野の手には包帯が巻かれていた。試合前、佐山が「トミー、今夜はトラブルを起さないでくれよ」と言ってきたが、俺に言わせればそのキッカケを作ったのは星野なんだから仕方ないことだ。

  • 人物評

ルー・テーズ、マクマホン・シニアは偉大な人。
テリー・ファンクハーリー・レイスもグレート。
カール・ゴッチは立派かもしれぬが、うぬぼれ屋。
ホーガンはギミックだけでレスラーとしては能力ゼロ、ヘタレのクズ野郎。

  • 25歳背中に激痛。プロレスによるものかステロイドによるものかは不明。
  • バッドニュース・アレンは最も激しいレスラーのひとり

バッドニュースが割れたビンで俺を殴ったことで、すぐにアルバータの競技委員会がスタンピードに対して一ヶ月間の同会場使用禁止命令を出した。(略)
 俺たちの抗争のクライマックスともいえる試合がバンクーバーで組まれた金網マッチだった。(略)
試合前に偶然ヤツと出くわした時も「俺が角材をおまえの頭上にチラつかせた時は逃げたほうがいいぜ。俺は躊躇することなく振り切るからな」と脅されたものだ。
 試合が始まるとそれは脅しなんかではなかった。俺がエプロンの上で大の字になっていると、ヤツは本当に太い角材を頭上に振りかざし、マジな目で振り下ろしてきた。

ステロイド

[84年]頃のステロイド摂取量は深刻なものとなっていた。毎日、最低6ccのテストステロンを両方の尻に半分ずつ打ちし、これが原因で気分がひどくなることもあった。そして俺の体重は81キロから111キロにまで増えていった。(略)
日本へ行く時、俺は常にステロイドを携帯していた。名前は出せないが、俺の手からステロイドを受け取ったレスラーもいた。

コブラを破りWWFジュニア王座獲得

[世界王者の持つ意味は]試合後、控室にやって来たピーター(ミスター・高橋)の真剣な口調からもわかった。
 「キッドさん、ベルト、国へ持って帰りなよ。俺たち、あんたのこと信じてるから。そのかわり大事にしてくれよ。防衛戦なんかしてくれるな。そして、今度来日する時はベルトを一緒に持ってきてくれよ」
 俺には彼らが心配することがわかっていた。(略)[ゲレロ兄弟のひとりがベルトを持ち帰ってこなかったことがあった](略)
「ピーター、心配は無用だ。大事にするよ」
そう言って安心させた。こうして俺はベルトを持って帰国、と同時にタイガーマスクがいなくなった新日本は何かが違うという、なんともいえない思いも残った。もちろん、二度と同じムーブメントは起こらないと思ってはいたが……。(略)誰も佐山の代わりは務まらないということだ

だがしかし、というとこで明日につづく。

爆弾小僧 ダイナマイト・キッド [DVD]

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