戦争と演説

クロムウェルの演説が面白かったので借りてみたけど、他はそれ程でもなかった。

  • 残部議会の解散(1653)

オリヴァー・クロムウェル

[1648年長老派議員を締め出し「残部議会」が開かれ、国王を処刑。クロムウェルアイルランドスコットランドの反乱を鎮圧して戻ると]
残部議会は国家改革にほとんど手をつけていなかった。いつまで経っても何も決まらないのに業を煮やし、1653年4月20日、クロムウェルは数人の歩兵を従えて議場に乱入し、こう演説した。


 さあもういい加減に、ここで何もせず座っているのはやめてもらおうか。お前たちはこの議場を、あらゆる美徳を軽んじることで辱め、あらゆる悪徳を実行することで穢してきた。お前たちはみな、派閥争いしか頭にない。まさに良い政府の敵だ。お前たちは金目当ての屑で、ひと椀の羹のためにエサウがお前たちの祖国を売り、何枚かの銀貨のためにユダが神を裏切ればいいと思っている。お前たちのなかに、ほんのわずかでも美徳が残っているのだろうか? まだ手を出していない悪徳があるのだろうか? お前たちは、私の馬より信心がない。金がお前たちの神だ。お前たちのなかに、賄賂と引き換えに良心をくれてやっていない者がいるだろうか? お前たちのなかに、少しでもコモンウェルスのためを思っている人間がいるのだろうか? 浅ましい男娼たちめ、その不道徳な心得と邪悪な行いでこの聖なる場所を穢し、主の神殿を盗賊の巣窟にしたな。お前たちは国家にとって、我慢ならないほど醜悪な存在になった。お前たちは、苦情に耳を傾け、その原因を正すために国民の代理としてここにいるのに、いまやお前たち自身が最大の苦情の種になってしまった。だからお前たちの祖国は、このアウゲイアースの厩舎を浄めてほしいと、私を頼ってきたのだ。ここ下院でのお前たちの不正な議事を終わらせてほしいと。そして私は今、神の助けと神より賜った力によって、それを実行するためにやって来た。ゆえに私はお前たちに命じる。命が惜しければ、今すぐここから立ち去れ。さあ、出て行け! とっとと出て行くんだ! 金で動く奴隷どもは、失せてしまえ! さあ! そこのきらびやかなまがいものを取り上げ、扉には鍵をかけろ。神の御名において、出て行け!


その後
 長い非難の演説を終えると、クロムウェルは、議会の権力の象徴である下院議長の職杖(「きらびやかなまがいもの」)を取り上げた。それから「聖者議会」、つまり自分と同じ政治的・宗教的考えをもつ人々を集めて新しい議会を開いたが、政治の新しい形態を創り出すという難しい仕事に関しては、結局、前任者たちの議会と同じく、成果は上がらなかった。この議会は1653年12月に解散した。新憲法が制定され、クロムウェルは自らを、「護国卿」に任命する。だが、国の最高権力を握ったにもかかわらず、議会と軍隊の両方が納得するような新しい政治形態を生み出すことはできなかった。
(略)
[1660年先王の息子が国王に復帰すると]
クロムウェルの亡骸は掘り起こされ、死後にもかかわらず処刑される。そして、鎖で吊り下げられた後、体だけ穴に放り込まれ、首はロンドンのウェストミンスターでさらしものにされた。