ジブリ汗まみれ・2 鈴木敏夫

鈴木敏夫のジブリ汗まみれ 2

鈴木敏夫のジブリ汗まみれ 2

以下「TOKYO FM」の Podcastのリンク
Podcast】2008/09/04 漫画家の浦沢直樹さんがれんが屋に!

浦沢 「あっ、これいいなあ」なんて思った構図って、案外、宮崎さんも関わった『母をたずねて三千里』あたりからの影響が大きいんですよ。
(略)
[四週に一度やってくるうまい人が描いた回にクレジットされていた、大塚、高畑、宮崎といった名前を見て、違うジャンル、違う会社なのに出てくる、この人たちは誰なんだろうと思っていた]
「このアニメーションは影が違う」って、いつも言ってたような気がする。「すごいや、影が!」って。(略)
マルコが、タタタタッと走って、トンネルの下に入った瞬間に、クッと影になる。キャラが暗くなって、それでまた向こうに抜ける時に明るくなったりとか、そういう影の表現が、「ただごとじゃないわ、これ」って。
(略)
魔女の宅急便』とか『紅の豚』とか、あのへんを観ると、「ああ、『母をたずねて三千里』、懐かしいなあ」と思ったりします。
鈴木 そうです。その時々のネタで、同じことやってる。全部、イタリアになっちゃうんですよ(笑)。最初は違うところでやろうって言ってても。『ハウルの動く城』もね、最初はイギリスを舞台にしてやろうなんて言ってたんですけど、宮さんが途中でぼくのところにやってきて、「どうしよう、鈴木さん、またイタリアになっちゃった」って。(略)
[高畑勲は『自転車泥棒』とかあの時代のイタリア映画にしようとしてる]
絵を描かないくせに、実は空間感覚が一番あったのは、高畑さんなんですよ。(略)
浦沢 そう。『三千里』での、手前と向こうの多重構造になっている画面効果ね。暗いところから明るいところを見るとか、そういうのが多いんですよ。
鈴木 宮さんは、そういうことを高畑さんからガチガチに教えられたというのか、勉強させられた。で、がんじがらめで映画を作ってきた。あと、宮さんと高畑さんとの中でそうだったらしいんですけど、たとえば、“魔法”というのは禁じ手だったらしいんですね。(略)
[コナンが飛びおりて、「ビイ〜ン」となるのは]
高畑さんがいたら、できなかった。(略)その後も宮さんは、延々と言ってましたよ。「高畑さんに怒られる、怒られる」って。「怒られるけど、一回やってみたいんだよ」って。(略)
そういうことで言うと、『崖の上のポニョ』は、ほんとに宮さんの思いどおりにやっていますからね。一度そういうことを全部やってみたかった。高畑さんの呪縛からの脱出。

Podcast】2012/11/08 押井守、鈴木敏夫、川上量生のニコニコ生放送「世界の半分が怒る生放送」
イノセンス』について

押井 当時、たしかに自分の身体もすごく調子が悪くって、不健康だった。『攻殻』を終わった時に犬と暮らし始めて、少しわかったんですよ、それが。
 犬はさ、自分の身体をどういうふうに意識してるんだろうって。で、もしかしたら、人間だけが自分の身体について考えているのかな、っていう話だよ。(略)
機械の身体と、獣の身体と、人形と。三つ並べてみて、自分はどれを選ぶんだっていう、ただそれだけの映画だもん。(略)
脳みそはどうでもいいんだよ、もう。どうでもいいっていうか、みんな、人間の実体を、なぜ脳だと思うんだろう。
(略)
[養老孟司と対談して]
やっぱり同じようなこと考えてるんだこの人は、って思った。
 ようするに、「自分は、ほとんど人形として生きてます」っていうさ。自分が、「ここにもう一人の自分がいる」という瞬間は、実は24時間の中で、たかだか1時間か2時間に過ぎませんよ、と言ってたの。あとは、習慣だけで動いてるし、身体が動いてるだけだと。“自分”は置き去りになっているだけで。(略)
「じゃあ、人間の本質は何だ」っていったら、脳とか神経系以外に何が人間を支配しているんだというと、ぼくに言わせれば、それは、具体的な肉体のことじゃないと。自分が――自分の身体っていうのをどういうふうに意識化しているかという、言ってみれば、“言葉”なんだよね。人間を人間たらしめているのは

哀・戦士編』、あの夏

[「アニメージュ」の部数が45万部に]
鈴木 とにかく、ドル箱雑誌になっちゃった。そうすると、それをね、外したくなったんです。ある種のストレスで。それで、そこへね、絶対売れないであろう「宮崎駿特集」をぶつけるんですよ。(略)
[それまで返本率1割以下だったのが、半分の23万部返本]
でも、こっちは確信犯だから、わかってるわけ。ようするにそれが、「宮崎駿と共にやっていこう」って決めた日だから(略)
それまでぼくは毎日のように富野さんと会ってたのに、ちょっと遠ざかった。(略)
ぼくはひどい男なんですよ。(略)
[色も塗ってないガンダムの企画書にピンときて]
急遽、校了の日に、全部ページを差しかえた。それ、とんでもないことなんですよ。なにしろ色がないから、勝手に色を作っちゃうんです(笑)。キャラクターに対して。(略)
居並ぶアニメ雑誌の中で、『ガンダム』のページが「アニメージュ」は一番多かった。それが、富野さんとの絆になるんです。(略)
ぼくがいきなり編集部で、「もう、これでやっていきます。この1年」って言って。それで毎号、『ガンダム』特集。そこまでやっておいて、あの夏に、はしごを外すんですよ。(略)
それまでは、『ガンダム』の映画化の話にしたって、ぼくと富野さんで一緒に相談するわけですよ。「『ガンダム』映画化案」って謳って。でね、あれ、実際は三部作だったけど、当初は四部構成で。その案を、雑誌で大特集。そしたら、まあおかげさまで、その号は3日で完売ですよ。そのぐらいやってきたのを、最後、当の映画を公開してる最中に、はしごを外した。それで、宮さんのところに行っちゃうんですよ。これはひどいですよね(笑)。
[代償として部数は20万部を上下]
もう一つ決定的だったのは、『となりのトトロ』と『火垂るの墓』ですよね。(略)もうこれは、編集部員から総スカンですよ(笑)。「何でアニメ雑誌の中で、そういうものをやらなきゃいけないのか」って。(略)「読者が望んでるものと、まるで違うじゃないか」っていう大批判を浴びて(略)いわゆるサブカルチャーの王道のほうを、自分たちがいろいろやってきたくせに、それに背を向けた。(略)これは、裏切りなんですよ。
(略)
[富野さんのところへ遊びに行くと『未来少年コナン』の再放送を観ていて]
「鈴木さん、『コナン』はよくできてる。でもね、いいものは宮さんにかなわないかもしれないけど、お客さんを集めるのはぼくのほうです」とか言われちゃって

宮崎吾朗ハウル』を語る

宮崎 生っぽくて、嫌だったです(一同笑)
 ぼく、最初は、老人同士の恋愛の映画だって思ったんですよね。(略)
年寄りの三角関係。最初、すごく油っこいなと思ったんです。「(駿監督が)そこまで歳とって、まだこういうものを持っているのか」と、愕然とした覚えがあって……(略)
[「誰かに向けて作る」ことがなくなったのが]『ハウル』から、というふうに感じたんです。

高畑とケンカしたわけ、『かぐや姫』「製作・氏家齊一郎」のわけ

高畑さんは絶対妥協しない人ですから、一緒に仕事すると、24時間つき合わないと作品を作らない。ちょうどそのころ、徳間康快が亡くなって、徳間グループをどうしていくかってことで、ぼくはジブリの人間ですけど、徳間グループのこともやらなきゃいけなかった。当然、24時間はつき合えない。そうなると、高畑さんて、怒るんですよね(笑)。あげくの果てに、ちょっとケンカみたいになっちゃった……。それまでは、映画の制作にしても宣伝にしても、非常に良好な関係でやってきたんですけど、『山田くん』の時から、どうもそれがうまくいかなくなった。高畑さんって、スケジュール内、予算内に作ったことが一度もない人なんですよ(笑)。それで、ぼく、(プロデュースするのが)もう嫌だったんですね(笑)。
 たしかに、企画は話し合っていましたよ。『平家物語』とか何とか。でも、心の底では、「もう嫌だなあ」って思ってた。(略)
[高畑ファンの氏家からの死ぬまでに見せてくれというオファーも受け流してた]
1年ぐらいたってから、いきなり怒り出した。「敏ちゃん! 高畑の作品、どうなってんだ?」「わかった。高畑が作れないのは、おまえのせいだな?」って。バレちゃったんですよ……(略)
[なぜ高畑にこだわると言い返すと]
沈黙のあと、突然、「おれは、あの男に惚れてる」なんて言い出した。(略)「あいつにはマルキストの香りが残ってる」って言ったんですよ。