羽生、松坂、密約

チラ読み三冊。
定番トークなのかもしれぬが、将棋に無知なので面白かった。対談相手の脱税アハ先生はスルーで。

自分の頭で考えるということ

自分の頭で考えるということ

情報戦の先は力のぶつかりあい

[新手は]公式戦に登場する前に、練習やネット上の対局などの実戦の場で先に結論が出ているんです。そこまでの情報を皆が共有して、また次の段階へ進んでいく。逆に言うと、いま表に出ている情報に有益なものはそう多くありません。それがここ四、五年くらいの傾向です。[全ての最新情報を把握することは時間的に不可能なので取捨選択する](略)
[最新情報に背を向け、自分の直感だけで指す]人もいます。でも狙い撃ちされてしまうので勝ち越せないですね。(略)スペシャリストは、今すごく大変なんです。ある手法について、一人でものすごく広く深く研究するわけですが、相手は浅いとはいえ100人とか150人でしょう。
(略)
[とはいえ]莫大な時間を費やさなければ、情報をフォローできません。だから将棋のプロといっても、本当に専門的なことに関して、一部しか知識を持っていないんです。(略)この形だったら、私よりも三段の奨励会員の子に聞いた方が詳しいですよ、ということはよくある話なんです。ずっとその形ばかり勉強しているから、私よりその子の知識の方がはるか先に行っている。(略)
ちょっと話が出た高速道路みたいなもので、皆が一斉にそこまで走れるようになったけれども、その先はどうなるかという時、やはり昔ながらの力と力のぶつかり合いに戻ったし、むしろそこが大事になってきているんです。だから昔に戻ったといえば戻った感じで、そこに至るまでのプロセスが若干変わったかもしれない、ということですね。(略)
[20〜30手までは研究し尽くされているので、どの戦術でいくかという選択が]すごくシビアなんですよ。以前は結構気楽にやっていたんです。お昼ご飯に何を頼むかというくらいの感じで選んでいたんですけど、今はすごくシリアス(略)
ルールは変わっていないけど、競技の質は変わったと思っているんです。水泳と似ているかもしれません。バサロスタートという泳法ができて、突然すごく速く距離を泳げるようになったような感じ。浮き上がったところからもうちょっとだけ泳いでゴールして終わり

コンピュータになくて人間にあるもの

[美意識が]最大のモチベーションになっていると言ってもいいですね。最も美意識が強いのは谷川浩司さんです。(略)自分の美意識ではこの手は指せないし、この手も指せないし……という制約がすごくたくさんある。だから強いんです。普通は「だから弱い」はずなんですけど。
(略)
コンピュータになくて人間にあるのは、恐怖心みたいなものだと思うんです。それが同時に美意識をも生んでいる。だから美意識や恐怖心を持ちつつ、完璧に自分の中でコントロールできれば、そっちの方がいいとは思うんです。(略)
[詰み寸前の]大丈夫、これは行けるという「見切り」がすごく大事なんです。逆に言うと恐怖心との戦いなので、そこであまり恐怖心を持ってはいけない。一見危なそうだけど実は大丈夫、というのがすごく大事な要素なんです。恐怖心があるから、将棋のプロでも最後のところで間違えてしまう。

手が震えるのは

ごく稀にですが、考える手と違う手を指してしまう時というのがあるんですよ。三手先の手を指しちゃうとか。(略)頭の中では局面が進んでいるので、その先の手を指してしまうことがあるんです。そういうことを確認しているという感じですね。

  • 松坂

メジャーリーグここだけの話

メジャーリーグここだけの話

 彼のフォームはオーソドックスなように見えて、実は結構特殊なんです。モーションの途中で一度も止まらないで流れたまま投げるのでコントロールしづらい投げ方になっています。(略)
松坂投手は本当に器用です。ムーブの大きいフォームのまま、指先でストライクゾーンに行くよう調整しているんです。僕はあの投げ方だったらストライクを取れる自信はありません。ひょっとすると野茂君よりも特殊な投げ方といえるかもしれません。
(略)
 これはあくまで僕の意見ですが、僕だったらいっそスタイルをガラッと変えて、とにかく常に真ん中を狙ってツーシーム、カッター、チェンジアップという球種で勝負をするかもしれません。打者の膝あたりに全部投げ、とにかく高めには投げない。彼のフォーシームはかなり力がありますから、それだけを高めに投げて見せ球にして、あとは低めに沈ませるという投げ方です。
 あるいは、マダックス投法もいいかもしれません。松坂投手がそうしたいかどうかは別ですが、マダックスは、なんというか、ボヤ〜ッと投げているんですよ。ピンポイントで狙って投げていない。でも、ボールのムーブが大きいから打たれないんです。松坂投手もわりとそういうタイプだから、変更は可能だと思います。

このあいだメジャー解説やってた佐々木は、ピネラってすごく温厚ですよって言ってた

 福留選手は実力は間違いなくあるんですけど、ルー・ピネラ監督の下では苦しんでいる部分もあるかもしれまぜん……。彼はややエキセントリックで頑固で気分屋さんの監督ですから。
 ベテラン選手になればそれなりの扱いを受けますが、中堅どころはちょっとしんどいかもしれないですね。若手は、めちゃビビってます。言うことをはっきり言う監督なんですよ。「ストライク投げられないんだったら、次の日から来なくていい」って言って本当にマイナーに落としたりしてますからね。

  • 密約

ゼロからわかる核密約

ゼロからわかる核密約

 交渉のすえ、日本は返還協定の発効から向こう五年間で、総額三億二千万ドルを支払うことになりました。日本政府はそのうちの七千万ドルを、核兵器撤去費として発表しています。アメリカ側が負担するはずだった400万ドルも、この核撤去費の項目にすべり込ませてしまったのです。(略)
 吉野氏によれば、「核抜き本土並み」の実現が大きな課題だったのをいいことに(略)「どんぶり勘定」だったわけです。実際には「核兵器アメリカ軍が港に行って船に乗せるだけ。七千万ドルもかかるわけはない」ということです。(略)
[共産圏を刺激するVOAは]
沖縄駐留のアメリカ軍とは別組織です。しかし不必要に中国を刺激したくないと考えていた日本政府は、沖縄返還のついでにVOAの中継局の撤去も求めたのです。
 アメリカ側は同意しましたが、日本はその国外移転費用の半分近く、千六百万ドルも秘密裡に負担することとなりました。そしてこの費用もまた、先に挙げた三億二千万ドルのなかにすべり込ませたのです。(略)
[米はVOA中継局を韓国に移転しようとしたが果たせず結局フィリピンへ]
(略)
[返還にあたり]日本政府は沖縄県民から、ドルを買い取る(=交換する)ことになったのです。その総額は六千万ドルでした。
 このドルは、ニューヨークの連邦準備銀行に25年間、無利息で預金することになりました。これもまた国民には秘密裡であり、「密約」のひとつです。この利息分と運用益は体の良いアメリカヘの“贈与”でしかありませんでした。