偽りのホワイトハウス

偽りのホワイトハウス 元ブッシュ大統領報道官の証言

偽りのホワイトハウス 元ブッシュ大統領報道官の証言

若き日のコカイン使用を問われたブッシュの答え

若くて責任などとれない時代、私は若くて責任などとれなかった
"When I was young and irresponsible, I was young and irresponsible."

パーマネント・キャンペーン

ヒュー・ヘクロが説くように、現在のパーマネント・キャンペーンは「国民の支持の源を操作して政権を運営しようとする、絶え間ないプロセス」である。(略)
悪意あるネガティブな攻撃やこじつけ、言葉の都合のよい解釈や根も葉もない中傷、誤った情報を流すことが、当たり前になる。(略)但し書きや注釈など気にもとめない。情報が矛盾しても顧みず、はねつけ、見向きもしない。複雑な問題は、勝者と敗者という文脈に単純化され、白か黒かのどちらか一方に色分けされる。たいていは情報操作が巧みな陣営のほうが優勢になり、ときとして微妙なニュアンスや全体的な論調とは関係なく、攻撃する側のほうが勢いづく。欺瞞が真実を脇に押しやるのだ。

 選挙で選ばれた人間は、みな基本的にいい人だ。しかし、自分の有利になるように国民を操作することに夢中になり、周りが見えなくなってしまっている。党派の利益を優先するあまり、意識的に、または無意識のうちに(たいていは無意識だと私は信じている)、国民を欺く行為に手を染める。そのすべては、自分の主張を通そうとする政治的なプロパガンダの一環だ。
 そして、メディアの存在もある。メディアが興味を持っているのは、このパーマネント・キャンペーンでの確執や論争、勝敗の行方だけだ。そのため一方の、または両者の主張をおおげさに報道し、結果として現実のゆがんだ姿、ときにはまったくの嘘を広めることになる。

ブッシュのビジョン

[イラクでの成果が自身の評価を定めるのか問うと]ブッシュはきっぱりと即答した。
「それは違う。私の業績を決めるのは、対テロ戦争だ。イラクはその一部に過ぎない」
 ブッシュの遠大なビジョンによると、自由な中東の実現は、世界の抑圧された人々に希望とチャンスを与えることになる。(略)貧しくて教育のないイスラム教徒を集めてテロリストに教育することもできなくなる。それが対テロ戦争における究極の勝利だ。(略)
ディック・チェイニードナルド・ラムズフェルドは、ただ中東の脅威を排除して、経済的な安定を確保したかっただけだろう。自由によって世界を変えるというブッシュの夢に、そこまで魅力を感じていたわけではなかったと思われる。(略)
 しかし、戦争売り込みキャンペーンが始まると、中東を変えるという理想主義は影を潜めてしまった。大統領も他の政権メンバーも、大量破壊兵器の脅威と、イラクとテロとの関連性ばかりを強調するようになる。(略)
キャンペーンが過熱するにつれ、慎重な姿勢がどんどん失われていった。内容の矛盾する機密情報は、あらかた無視されるか、最初からないものとして扱われた。(略)イラクアルカイダがつながっているかもしれないという「疑惑」をことさらに強調し、テロ支援という問題がどんどん大きくなっていった。それらをすべてまとめると、早急な対応が求められる「重大で、高まりつつある脅威」が出現する。

ブッシュはアホなのか?

 そこで、ブッシュ批判者がよく口にする、ある重要な疑問が浮かび上がる。ブッシュには知的好奇心というものがないのだろうか? または、ある人たちが断言しているように、ブッシュはただの間抜けなのだろうか?(略)
ブッシュは、大統領に必要な知性は十分に持ち合わせている。しかし、私も前に指摘したように、ブッシュは知的な思慮深さよりも直感を頼りに決断するというタイプのリーダーだ。ブッシュの知的好奇心が発揮されるのは、主に自分の政策を効果的に伝える方法を考えるときになる。

わかちこわかちこw

 「フセイン大量破壊兵器を持っている」という開戦の理由づけと、その背後にある「フセイン体制は危険で打倒しなければならない」という動機とがつながっていないことを、大統領は今でも気にしていないように見える。開戦理由がどのように組み立てられたかにも関心がないようだ。いったん自由なイラクが軌道に乗り、中東の民主化が違めば、彼の政策の正しさは歴史が証明してくれる、というわけだろう。(略)
[TVインタビューでこう尋ねられ]
大量破壊兵器が見つからない状況をふまえてですが、イラク戦争は選択の余地のある戦争だったと思いますか、それとも必要に迫られた戦争だったと思いますか?」
 大統領は答えた。
「興味深い質問だね。もう少し詳しく質問を説明してくれ。選択の余地のある戦争か、必要に迫られた戦争か? 必要に迫られた戦争だよ。私の判断では、あの人物が脅威だと伝える情報を見たとき、選択の余地はなかった」(略)
アメリカにとって選択の余地のない戦争と、やらないで済んだかもしれないのに自らあえて選んだ戦争との違いは、明らかではないか。侵攻に至るまでの数カ月間、ブッシュはこの問題を考えていたに違いないと私は思っていた。だが大統領には、この違いは明らかなことではなかった。彼の国家安全保障チームも、この点を大統領に十分理解させていなかった。

2004年大統領御指名の記者がなにげなく「9.11後の最大のミスは?」と問うとブッシュは会見場を凍らすほどに沈黙。そしてようやく答えたのがこの支離滅裂な内容。感動したっw

 アフガニスタンには、実際にアフガニスタンでやったのと同じ形で攻撃しただろうね。たとえ大量破壊兵器の存在について今日わかっていることをわかっていたとしても、私はサダム・フセイン打倒を世界に呼びかけただろう。ほら、私は(たまたま)、兵器についての真実を発見すると信じている人間なのでね。だから、独立委員会を設立した。真相を聞くのが楽しみだ。まさにどこに兵器があるのかをね。まだあるはずだ。隠されているかもしれない、七面鳥牧場の50トンのマスタードガスのように。
(略)
 だが、すべて解決すると思うよ、ジョン。私たちはなんらかの時点で兵器についての真相を発見するだろう。だが、私がいま懸念しているのは、彼が兵器を作る能力を持っていたという事実だ。当時もその懸念を抱いていた。
 彼は危険人物だ。彼は実際に――大量破壊兵器を持っていただけでなく――そう確信を持って言えるのは、彼がそれを使ったからだ。私たちを憎んでいるという理由で彼がアメリカに害を及ぼしたかったこと、あるいは金を出してそうさせようとしたこと、あるいはそのために要員を訓練したことを、私はまったく疑っていない。
 私は――自分が全然間違いを犯さないと言うつもりはない。間違いを犯したことがあることには自信がある。ただ――きみのおかげで、いまここで注目を浴びて、たぶんかなり返事にもたついたがね。

……

 今日、イラクに対する私の見解は、おそらくほとんどのアメリカ人と同じようなものだと思う。そもそも急いで戦争に突入すべきではなかったのだという結論を出さざるをえない。(略)
 こんな遅い段階でも、こうした解決を実現することができるだろうか? こんなに多くの人命と貴重なものが失われたあとでも? そうあってほしいと思う。だが、悲しいことに、今の大統領にはそれを実現する力がない。大統領は自分が起こした戦争とその代償について正直に話すのを拒否した。そのことで、アメリカ人も世界の人々も、彼の信頼性に疑いを持っている。

犬死

戦争で大怪我をした退役軍人や二度と家に戻らない若い兵士の妻や子供と会って、ブッシュが深い苦しみと悲しみを昧わっている姿を、私は何度も見ている。だが、ブッシュには決して自分に許さないことがあった。それは自分を疑うことだった。どちらかと言えば、イラクで愛する者を亡くした人々を慰めようと試みる辛い瞬間(究極的には戦争開始というブッシュの決断で死亡したわけだから)は、ブッシュにとって、侵攻が正しい選択で、彼らの死が犬死にではないことを証明するのだという決意をさらに固めるものになっていた。

やられるときはやられるのだ

ラムズフェルド長官はクウェートの基地を訪れ、イラクに派遣される兵士たちから、貧弱な装備と配置の拡大に関して辛辣な質問を浴びた。(略)
「なぜわれわれ兵士が、配備先のゴミ捨て場をあさって金属片や中古の防弾ガラスを集めて、私たちの車の装甲を強化しなければならないのでしょうか」
ラムズフェルドの返事は彼のキャリアに打撃を与える決定的な瞬間になった。
「ご存じの通り、戦争に参入するには、いま保有する戦力を適用するしかない。その戦力は理想的とは限らない。だいいち、戦車に最大の装甲をしても、やられるときはやられるのだ」