ポールだけど、なにか質問ある?

スルーしかけるも、「わたしの人生においては、ゴッド・ファーザーといえばJBではなく、モーリス・ホワイト」という一節が目に入り借りてみたら、ビートルズ、マドンナ、マイケルetc逸話がオモロ。
時系列を無視してオモロ逸話から先に。

ビートルズが四人勢ぞろい?

ダニー・コーチマー等とダークホースから二枚出した頃の話なのだが、なんとなくレイモンド・カーヴァーっぽい。

 ある夜のこと、アティテューズがあっという間にポシャッてしまってまだ間もない頃、ジム・ケルトナーとわたしは他の何人かの男たちとキャロルウッドにあるジョージ・ハリスンの自宅へ行き、軽く飲んで音楽を聴いていた。リンゴ・スターもその場にいたので、わたしは突然、あるアイディアをひらめいた。「ねえ。ジョンとポールに電話して、ここへ来てもらったらどうです?」
 二人がロスにいるのを知っていたし、どういうわけだかビートルズが四人勢ぞろいするなんてことが、実現しそうな気がしたのだ。
 ハリスンは向こう側からわたしを見て言った。「うん。悪くない考えだ」リンゴはただ、うーんと唸っただけだったが、別に嫌じゃなさそうだった。でも誰も立ち上がって電話をかけに行こうとはせず、時はそのまま過ぎてしまった。

ポールから依頼

憧れの人の復活の一助となれないもどかしさが滲み出る文章。

ボールは実に小さい車に乗ってやってきた。ミニクーパーだ。(略)
 マッカートニー一家は、寝室が五部屋のシンプルな家に住んでいた。これといって目を引くようなものはなかった。リヴィング・ルームのテレビの前に、一人用のソファが置いてあったことは記憶に残っている。それと、正真正銘、本物のピカソの絵が二枚、部屋の隅に立て掛けてあったこと。どうやらその絵はずっと壁に掛けてもらえないみたいだった。(略)
[微笑ましい家族の光景描写]
 それはあまりに普通すぎて、かえって現実離れして見えた。わたしはもっと違う何かを求めていたのだ。(略)
 残念ながら、ポールとわたしは音楽的に合わなかった。わたしはロンドンヘ「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロードPt2」を書こうと意気込んでやってきたのだが、それは実現しなかった、たぶん、わたしのせいだろう。(略)
[ポールへの畏怖]が勝ちすぎていたのだろう。しかしポールは、わたしが自分の素晴らしさをもう一度思い出して欲しいと願うアーティストの一人だった。わたしは色々やってみたが、ポールは耳を賃さず、それはまるで盛り上がらないデートにも似ていた。(略)何かしら突破口が見つからないかと思っていたのだが、結局、どうにもこうにもならなかった。自分があまりにも尊敬する相手に方向性を与えるというのは、どうもちょっと上手くいかなかった。そしてデイヴ・ギルモアがスタジオに現れると、事態はますます難しくなってしまった。(略)わたしは萎縮しきってしまって、何の指示も与えることができなかった。

その時の曲が『フラワーズ・イン・ザ・ダート』「幸福なる結婚」

「ポールだけど、なにか質問ある?」

ある日、機材の修復でぽっかり二時間空いて、まさに「ポールだけど、なにか質問ある?」状態に。

ポールとわたしはスタジオのキッチンヘ行き、向かい合わせに座った。ポールは正面からじっとわたしを見つめていた。「少なくとも二時間は、こうして座ってなけりゃならないってことだ」とポールは言った。「何でも好きなことを訊いていいよ」(略)
いきなり本題に入るのもどうかと思い、まずはジョージ・ハリスンのことを訊くことにした。(略)
 「彼はものすごく良いソングライターですよね? ほら、『サムシング』なんか、本当に永遠の名曲じゃないですか?」
 ポールは悪戯っぽい笑みを浮かべた。「まあ、誰だって一曲くらいは、うまくいくときもあるさ」
 冗談で言っているのだろうと思った。きっと、冗談だろう。いや、やっぱり冗談じゃないかもしれない。(略)[ジョンとではなくジョージとの]間に摩擦があったのかも。わたしはもうちょっと突っ込んで事の真相を尋ねたかったが、それ以上知りたくないという思いもあった。
 そこでいよいよ、解散について訊いてみることにした。(略)ポールはこの問いにも、実にざっくばらんに答えてくれた。(略)
[その日、ヨーコを連れて遅れてやってきたジョンは]「俺はバンドをやめるよ」とだけ言うと、回れ右してヨーコと一緒にすたすたと出ていってしまった。
 「それからどうしたんです?」わたしは椅子から身を乗り出して訊いた。
 「そうだな」ポールは答えた。「そういう状況に立たされたとき、他のバンドがするのと同じようなことをしたね。お互いの顔を見合わせて、こう訊いた。『で、誰を入れる?』そこで色々な候補を挙げはじめた。クラプトンはどうだとか、ベックはどうだとか、リチャーズはどうだとか」

[↑『で、誰を入れる?』のくだり、幾度となく同じ質問を受けてきたポールのネタ話のように思われるのだが。]

マドンナ

マドンナのやり手フェミ社長振りにうんざりのoleも納得のちょっとイイ話

[正直に『イン・ベッド〜』を観てないと答えた著者に]
「ぜひ、見てちょうだい」と彼女は言った。
その言葉は提言というより、はっきりとした命令に近いように聞こえた。(略)
[後日再度感想を聞かれ、面白かったが、ゲイカップルのキスシーンにはげんなりしたと答えると]
 「わたしはそういう偏見には断固戦うわ」マドンナは続けた。「二人の男たちが堂々とキスできる世界になってほしいの。あなたがそんな風に思うんだったら、あなたは頭が固すぎるのよ」マドンナはつくづく嫌気がさしたようにそう言い、自分でも歯止めがきかないようだった。「あなたは、わたしが変えようとしているものの全てを固めたような人だわ」
(略)
[しばらくしてスペイン語版をつくることになり再会。録音を開始するも突然歌うのをやめたマドンナ]
マドンナは床の上にべったりと横になって、ヨガのポーズのようなものをとっていた。彼女はとても悲しそうに見えた。
 「どうしたんだい?」と、わたしは尋ねた。
 「わからないわ」とマドンナは答えた。
 「気分が悪いのかい?」
 「わたしにはただ、男が必要なだけ」マドンナは言った。「本物の男と一緒にいたいだけ」
 正直、その言葉にセクシャルな響きはなかった。はかなさと孤独から漏れたたこの言葉に、わたしは非常に胸を打たれた。実際、わたしは彼女のことが以前よりもっと好きになった。それからものの数分のうちに、マドンナは深々と、疲れ切ったため息をついて立ち上がり、また歌い始めた。そしてセッションが終わるまで、いつも通りのタフなマドンナで押し通した。そこには運命の人を求める、はかなげなマドンナの姿はどこにもなかった。

スペイン語バージョンはなかった
(あなたの愛なしには生きていけないと思っているんでしょう?見ててごらんなさい) 

You'll See

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マイケル・ジャクソンとリサ

マイケルはおそらく、この地球上で最も複雑な男だったが、仕事をする上では問題はなかった。(略)しかし、わたしが一番不満だったのは、すべての曲に対して何十回となく録り直しをしたがることだった。多くてもせいぜい、八回までだろう。わたしはマイケルの執拗な録り直しにイライラした。(略)
彼は知れば知るほど、つかみどころのないように思えた。ある時は、まるで小さな子供のような声で、ソニー・ミュージックの社長を罵るのだ。「あの、トミー・モトーラって奴はイジワルだ」そう言う時、マイケルの声は六歳の子供のような声なのだ。ところがスタジオに入るとプロになり、普通の大人の男性とほとんど変わらない様子で、わたしとも実によく気が合った。(略)
[著者の妻リンダはかつてプレスリーと交際しておりリサと義母的関係にあった。映画に行きたいというマイケルのために著者の子供等が自分達の服で変装させるも]
マイケルはカールした前髪をキャップの中へたくしこむのは嫌なようだった。世間でお馴染みように、前髪は額のしかるべき位置に垂らしておきたいのだ。(略)マイケルは頑なに言い張った。「ダメ、ダメ。前髪は出さなきゃダメなんだ」なるほどそういうものかとわたしは思った。彼は見られたくないと思いつつ、一方で見てほしくもあるのだ。それは有名人なら、常につきまとうジレンマなのだろう。(略)
[子供たちは『スピード』がいいと言い、マイケルは『リトル・ビッグ・フィールド』を希望]
マイケルはリサの隣に座りたくてたまらない様子だった。映画館へ行く途中、彼はリサを振り返ってこう言っていた。「リサ、こっち。こっちへ来て、隣に座りなよ」そんな時、マイケルは小さな子供の声ではなく、普通の大人の男性の声で話した。まるでおい、俺の隣に座れよとでもいった感じで、リサはマイケルの言葉に素直に従った。その様子はとても胸を打つものだったが、同時にわたしを混乱させもした。いったい、この男は何者なんだ?
 おそらく、リサがマイケルのテストステロンを分泌させたのだろう。わからない。しかし、これだけは確かだ。リサはマイケルを愛していた。

疲れたので肝心の自伝話は明日へ。

 

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