売れた細野さんが最初にしたこと

ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち

ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち

  • 作者:岩田 由記夫
  • 発売日: 2009/05/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

[ある日、矢野顕子が]「ねえ、ねえ、岩田さん、YMOが売れてお金が入って、細野さんがいちばん最初に何をしたか知ってる?」と、まるで主婦の井戸端会議のように問うてきた。当然、ぼくは分からない。
 「あのねえ、何百万円か使って、歯をきれいに治したのよ。ほら、細野さんって、口に手を当てながら、モゴモゴって話す癖があったでしょう」(略)
 「なんかさあ、細野さんって可愛いねえ。いちばん最初にそんなことするなんて……」とあっこちゃんは言った。「このことは、秘密」。そう言われたが、もう時効だろう。

「細野さん、駄目ですよ。歌謡曲をちょこちょこと書いて、印税で儲けるなんて」
「なあ、岩田くん、君は、俺がYMOに辿り着くまで、どれだけ苦労してたか知ってるだろう。だから、YMOを散会して、君がいう通り、ちょこちょこと歌謡曲を書いて印税稼ぐの、見逃してくれよ」

『コチンの月』で横尾忠則にプロデュースを頼んだ細野、得意&不得意な楽器を問われ

COCHIN MOON (コチンの月)

COCHIN MOON (コチンの月)

  • アーティスト:細野晴臣
  • 発売日: 2005/03/24
  • メディア: CD

[苦手な楽器は]“キーボードですね。見ているだけで、体調がおかしくなる”と言ったんだよね。
 “それなら、オール・キーボードでアルバムを作りましょう。それなら、ジャケットもプロデュースも引き受ける”って言うんだよね。“参ったな”と思ったけど、横尾さんと仕事できるなら、いいかなと考えて、オール・キーボードで作ったんだな、これが」

大瀧詠一

 野球が大好きで、「ミュージシャンは野球チームを結成しているのが、これジョーシキ」と70年代に言い放った彼のチーム名は「福生エキサイターズ」。当時の彼は、まだ大ヒット曲を持たず、「野球だけで大ヒットを飛ばす大瀧選手なのだ」などと自虐的な洒落を飛ばしていた。

一度顔を出し、二時間後に再訪したら、まだイントロの4音のピアノの録音をやっていた

ロンバケ』の頃、「俺の音楽がどう鳴るかリサーチしてるんだ」と本家・パチモンetc合わせて20台以上のウォークマンを著者に披露。

エドウィンの仕事をしていると話したら、達郎がロンドン・スリム50着一括購入依頼

ドラクエにはまった山下達郎

“ゲームの達人”杉真理

[コンサート開演]直前、山下達郎から緊急の電話が入ったという。
 「もしもし、山下ですけど、杉くん、今どこ?」
 「渋公で、開演直前なんですけど……」
 「あっ、そう、ごめん。実は、俺、今××××のダンジョンにいるんだけど、どうしても抜け出せなくてね……」
 人のいい杉真理は、ダンジョンからの脱出方法を教えたそうだが、教え終わったのは、本番ベルのあとであったという。

次はゴシップネタっぽいので、女装達郎みたいな笠置画像を再掲して、先にお口直し。

竹内まりやからの恋愛相談

[著者の担当編集者Aとまりやは大学時代からの恋人]
A君との仲は続いていたが、何かマンネリ化しているなという雰囲気は、ぼくも感じていた。何回か、「このままでいいのかしら?」と彼女に相談されたこともあった。
 ある日、夜半近く、彼女から電話があった。山下達郎が、強烈に竹内まりやにアタックしてくるというものだった。ぼくは、「A君とそのまま結ばれるのが自然だろうけど、それで竹内まりやという人が、完全に納得できるの?」と答えておいた。
 それから一カ月もしないで、また彼女から夜半に電話がかかってきた。電話の声は涙ぐんでいた。
 「Aさんは、“そろそろ結婚しようか?”と言っても、まあまあ焦ることはないって、掴みどころがない感じなの。達郎さんは、さっき電話があって、今すぐにでも迎えにいくと言うの。私ねえ、もう達郎さんのパワーに負けてしまいそうな気がする。どうしたらいいか、分からない……」
[一ヵ月後に電撃結婚]

理想のセールスは70〜80万枚、最大でも100万枚、それがバブル時は200万枚のミリオンセラープレッシャー、年に数回眠れない夜

 涙が出てきて、枕がビッショリになるほど泣いたりするわ。そんな眠れない夜は、近くのマリーナのヨット置き場へ、フラフラッと歩いてゆく。秋の夜風が、波の音しかしないヨット置き場を吹き抜けていく。すると、ヨットの帆をかけるリールが回る、カラカラって音がするのね。秋風に吹かれて、そのカラカラ、カラカラって音を聴いてると、そのうち、段々と心の荒ぶりみたいなのが治まってくるの。
 1時間ぐらいそうしていて、ベッドに戻ると、疲れでやがて眠りに入る。そして、翌日起きて、すべて忘れることにして、ガーッと頑張るぞと思うのね。私はもう私だけのものではない。スタッフや多くのファンのものなんだと思うことにしてね。
 だって、現実は現実として受け止めなきゃしようがないでしょう