押井守、ビートルズ

アニメはいかに夢を見るか―『スカイ・クロラ』制作現場から

アニメはいかに夢を見るか―『スカイ・クロラ』制作現場から

不幸になる

[将来を留保しておきたい若い]人たちに対して、僕ができることは一つ、背中を押してあげることだと思いました。(略)
人間にとって、生きるということは基本的には辛いことなんだということは間違いない。(略)
[ただ]不幸になることさえ恐れなければ、あるいは不幸になることを覚悟すれば、さらに積極的に言って自分自身が不幸になるという権利を行使する意志があるならば、人生というものは各々にとって、最も大きな情熱の対象になりうると思うのです。

 どこかの巨匠のように明るい未来を語るとか、子供に未来を託すとかという気持ちは僕には依然としてないのだけれど、人生というのは幸せになることも不幸になることもあわせて人生なんだという、不幸になることは実は人生の醍醐味の一つなんだと、僕は最近考えるようになったんです。

僕は今回真面目です。

いつも真面目なんですが、なかなか真面目だということを理解してもらえないだけなので、今回は逃げも隠れもしません。
 今までは適当にはぐらかしたり煙に巻いたり、判りそうになるとはぐらかすことをやってきたので、詐欺だのペテンだの散々言われてきましたが、今回に関しては額面通りの映画です。監督として機能しようと現場に臨みました。そういった意味で僕にとっては転機になる作品であり、監督としての技量を試される作品だと思っています。

真実のビートルズ・サウンド (学研新書)

真実のビートルズ・サウンド (学研新書)

アイム・オンリー・スリーピング

メンバー全員によるリズム・トラックの音を、テープ・スピードをかなり速めて録音。次にそのテープを普通のスピードよりもずっと遅く再生しながらジョンのヴォーカルを録音し、そのテープ・スピードを少しだけ速く(通常よりまだ少し遅いスピードで)再生したヴォーカルをコピーし、OKテイクとしたのだ。
 テープ速度を速めたり遅くしたり、非常にややこしいが、結局は通常よりやや遅いスピードであるヴォーカルは、不思議な声に見事に変化し、耳から離れなくなってしまう。
(略)
ジョージの「逆弾き」ギター・ソロの正体
1.既に録音しているリズム・トラック(カラオケ状態)を聴きながら、間奏8小節間のギター・フレーズを考える
2.そのギター・フレーズをリズム・トラックにオーバー・ダビング。
3.このトラックのテープを逆回転再生させ、逆向きで聴こえる不思議なギター・フレーズ(間奏8小節間)の音を採譜。
4.再度[3.]の逆回転再生させたテープの間奏部分に、採譜した音をギターで弾きオーバー・ダビング。
 これを普通に再生させると、アルバムに収録されたとおり、あの不思議なギター・ソロになるのである。