夜露死苦現代詩 都築響一

夜露死苦現代詩

夜露死苦現代詩

ネタのデキにバラつきがあるというか、「点取占い」「誤変換」「スパム&ネットエロ広告」とかって今更じゃないのか、「新潮」読者層には斬新なのか。池沼は飛び道具だろ。餓死日記、死刑囚俳句は納得か。
ヒプホプ&ヤンキーネタもパッとしない。編集者の言葉の方がw。

実は「今回は暴走族で行こう」と話したとき、すごくイヤな顔をされた。この連載の担当編集者は佐賀、編集長は岡山出身である。「そういうのばっかりの中で、背中を向けて、ヘッドフォンをしっかり耳にかぶせて、それでここまで来たんです!」と訴えられた

『はねたハネタ』

あと『はねたハネタ』というラップ。人をはねたら、相手は戸籍も売り払ってる存在しない人間で減点ゼロetcという小話。

人をはねました 思い切りはね飛ばした
月の凄く綺麗な夜 (略)
トイレットペーパーが宙に舞い
ついでにおっさん IN THE SKY(略)
「ひき逃げにあった」とつぶやくおっさん
「ごめん、俺がはねたんだ」(略)
はねたハネタ 人を 人を はねた
交通事故で人を HIT OH MY GOD!(略)
存在しない人間 はねても罪にはなりません
(略)
一方カワちゃんは病院で 3食屋根付き 風呂付き
廊下で俺に会ったら「ハロー!アンちゃん、はねてくれて本当有難う!」って感謝されたよ
まあ、とにかく保険の見舞金で
フルーツバスケットとプレステ買って
フルーツはカワちゃん プレステは俺
なんか丸く収まったよね

そして池沼ネタ。たしかにこれは凄いが、池沼は飛び道具だからなあ。

あの坂もこの夜も幾つもお葬式がおこなわれてて・・・
わたしはいつだって独り
でもその目的はわたしを皆殺しなんですよ
いつだって7人か9人の殺し屋が狙ったまま
窓の向こうで御無沙汰地獄してるんです(略)

出題者しかわからないクイズ

わたしは景浦清先生のどこに魅力に惚れたんでしょうか。
①景浦先生のデート。女の人とね。
②景浦先生のハネムーン。
③景浦先生のジャズ、笑い、キッスのハネムーン。
④景浦先生の笑いのキッスね。女の人とね。男の人ともね。
   [答え③]

このクイズの後に謎の解説文がつく。コーヒーの飲みすぎに注意してちゃんと生きようというだけの内容がこんな文章になってしまう。

景浦先生は生前、女の人と、好きな女の人たちと、ジャズを船で連れてって誘って笑わせたりしてキッスのハネムーンをしてくれました。先生は、僕にコーヒーを教えてくれました。好きな先生のいつも誘ってくれていた先生の彼女とコーヒーの飲みかたや、加減や、加減というのは、コーヒーに対して飲む量数の限度で、限界点を、教えてくれました。「1日1杯なら、いいけれど、それを1杯でもオーバーしたら、腎臓を悪くするよ。」「1杯以上やったらいけないよ。あんちゃんのような人や、そういう人たちはたくさんいるんだ。おまえさん。俺の言うこときけよ。ちゃんと長生きしろよ。お腹こわすから、こわさないようにしろよ。コーヒーは、1杯以上飲んだら腎臓悪くするから飲むなよ。わかったか。おまえさん。約束しろよ。」と、言って、厳しく優しくして、教えてくれました。「うん。先生。僕、生まれて、大きくなったら約束するよ。1杯と、決める。僕、みんなの言うことをきちんと聞く。僕、きちんと生きる。」と、話を語って、お話を受け取ってくれた先生に感謝をして受けて、その私の心ざしを信頼してくれた先生を見て、「どうも、ありがとう。じゃあ。行くぜ。」と、言ってくれて、「じゃあ、俺が死んで、お前さん1人になっても、みんなの言うことを聞いて、1人前に、生きていくんだぜ(略)[さらにつづく]」

曽根幸明は練馬鑑別所時代に

『夢は夜ひらく』の原曲『ひとりぽっちの唄』をつくった。

はじめは「いやな看守ににらまれて 朝もはよから便所掃除?」なんて、いい加減な歌詞をメロディに乗せていたのだが、しだいに同房の仲間たちも歌詞を付け加えるようになり、「何十番にもなった」という。

うわあ、モロに『監獄ロック』の世界じゃありませんか。ブルースだなあ。
シャバに出て歌手デビュー、スター、転落、ドサ回り、再起を期して『ひとりぽっちの唄』を吹き込むも売れず。しかし「1オクターブしか音域がないので歌い易いせいか」、園まりが歌ったのを皮切りに32人が録音(もちろん藤圭子も)。

作者としては「年中命からがら、喧嘩三昧の日々に明け暮れる真っ暗けの人生、そういう思いで作った唄ですから、暗く暗く唄ってくれるとうれしい」。あの「夜ひらく夢」は眠りながら見る夢ではなくて、「少年院では夜寝るしかない。真っ暗な部屋の中で、逃げることもできず、ただひたすらに寝てるしかない。その暗い中で目をあけ起きていて、昔のことを思い出したり、想像したり、いろいろな夢を思い描いているわけです。うまいもの食いたいなあとか、女と仲良くしたいなあとかね(笑)」。そういう手の届かない世界を、夢に託した唄なのだ。
そんな曽根さんが個人的に気に入っている『夢夜』は、「藤圭子が唄った石坂まさをのもいいけど、やっぱり三上寛のやつがいちばん好き」だという。「七に二をたしゃ九になるが 九になりゃまだまだいい方で 四に四をたしても苦になって 夢は夜ひらく」という、あの暗さが少年院の暗い天井を見つめていた自分の心情に、もっとも似合うのだそう。

あと愛唾蜜男ネタで驚いたのが

倍以上の大きさの紙を使って書いて、それから余白をトリミングするんです。フレームがあるとその中に入れようということで萎縮してしまうから、フレームがない状態で書きたいと(略)その余白の取り方にものすごい時間がかかって

好きじゃないけど、ナルホドネー。

風俗店の注意書き

一番現代詩的だったのは、風俗店からの来店者への「他店の客引きに対する」注意書き。

お客様へ絶対!絶対!絶対!超!超!超要注意!毎度ありがとうございます。以下のことを必ずご注意下さいませ!お客様へお知らせです当店は○○○駅東口から歩1分たらずの駅のホームからも見える、風俗ビルの5Fにあるお店です。当店の風俗ビル&その廻りのビルも風俗ビルです。したがって当店の風俗ビルに入ってる同業店&廻りのビルの同業者が昼の12時ごろから道ばたに出て歩いている人に手あたり次第、声をかけまわってます。ちょっとでも聞く耳持つと、“写真だけでも見ていって!””そのお店はおばさんだけだからやめとけ!”とその他色々、他店の悪口を言いながら強引に引きつれていこうとします。しかもビルの中のエレベーターの中までついてきます。まさしくゴキブリ並のしつこさです,ビルの入口には、こ汚い、人生終わってるオッサン連中が立ってます。とにかく、しつこい、しつこい、しつこい、しつこい、カンベンされてもしつこい!そのしつこさは新大久保のオカマの立ちんぼよりも上野公園の売り専サブちゃんも、新橋のロリコンチカンオヤジリーマンよりも、いや、北朝鮮工作員もビックリするほどの忠誠心としつこさで歩く客を手あたり次第、ねらいうちしてます。本当に用心して下さいませ。(略)[さらにつづく]