論理で人をだます法

前日のつづき。

論理で人をだます法

論理で人をだます法

「私は自分の所得税の申告をごまかそうとしたことなんかない」のどこを強調するかでほのめかしができる。

これを言うときに「〜そうとしたことなんか」を強調すれば、これは、「意図的ではないごまかしはあった」とほのめかしているのかもしれない。
「ごまかそうと」を強調すれば、「『ごまかし』というほどではない過少申告はしたけどね」という意味かもしれない。
「自分の」を強調すれば、「他人の申告書を書くときにはごまかすよ」という意味かもしれない。
所得税」を強調したら、「住民税はごまかすよ」とほのめかしているのかもしれない。
もちろん、これが紙に書かれていたら、読者は勝手な部分を強調して、好きなように意味をゆがめられる。

  • 婉曲的表現

「昨晩、第43大隊は一連の防衛行動を実施し、一群の住民を殲滅した。これらの攻撃は、事前指揮の航空支援を受けたものである。友軍砲火は最小限にとどまり、戦略的に無方向の目標決定行動は、低優先度地域に限定された」

このような軍報道官声明が隠蔽する事実とは

「昨晩、第43大隊は、村をいくつか攻撃して人をたくさん殺した。飛行機からの空爆支援も受けた。誤射で何人か死んだが、あまり多くはなかった。標的をはずれた爆撃もあったが、さほどの被害はなかった」

  • 井戸に毒を盛る

市会議員「市長は口は達者だ。実によくしゃべる。でも実際の行動となると、話はまるでちがう」

市長に反論のしようがあるだろうか。黙っていれば、批判を認めたと受け取られかねない。でも弁明すれば、それはしゃべっているわけだ。そしてしゃべればしゃべるほど、非難を裏づけることにしかならない。井戸に毒が盛られ、市長は進退窮まったというわけだ。

  • まぜかえす

「実際、あの地区の窮状で暮らすより、ジャングルの奥で暮らすほうがましなくらいです」

言葉尻をとらえて、文字通り解釈することでハント氏の説得力を削ぐ汚い反論の仕方。

「もちろんハント氏の議論をあまり真面目に受け取ることはできませんな。なんといっても、ジャングルに住みたがるようなお方ですから---おそらくわれわれが直面すべき本当の問題に向き合うよりも、ヘビだの蚊だのを相手にしているほうがよろしいんでしょう」

  • 人をクビにして責められたら

「クビになんかしてないよ。単に、新しい道に進むほうが彼にとってもいいと示唆して、契約を更新しなかっただけだよ」

笑えるしめくくり。

最後に、どんなに議論の達人になっても、エドガー・アラン・ポー『アモンティリャードの樽』冒頭の一文を決して忘れないこと

「フォルチュナアトから蒙った数限りもない不快を、忍べるだけは忍んで来たものの、彼奴が不敵にも侮辱を浴びせかけたとき、吾輩は復讐を誓った」

世界には小賢しい青二才ならもう十分にいる。あなたまでその列に加わることはない。

うひゃあ、訳したことから少しは学んでほしいものです。