私の昭和史の終わり史

新刊にみえてジツは86年の連載エッセイ。でもあえて新作だと思うと新しい世界が見えてくる。というか最初新刊だと思って読んでびっくりした。なにせ赤瀬川原平なのだからして、これは前衛を超えトマソンを超え老人力を超えた新しい世界。これからは週刊誌は昔のエッセイをリアルタイム時評のように新連載するのが新しい。でも、なんかそういう企画あったような気もする。それより20年前を知らないヤングにはなんのことやら、いやそのほうが衝撃か。

私の昭和の終わり史

私の昭和の終わり史

ジャイアンツ8連勝、そんな時代に

とうとうジャイアンツの原が六番に移動したがもう遅い。すでにジャイアンツの勢いというのは消えているのだから、いまごろこの移動は情けない気もする。ガンとして原四番を動かさない監督の「信念の強さ」が、もうすでにジャイアンツの勢いを消していたのだ。

すごい、「とうとう」である。たいへんなことになっている。なにしろこの監督というのが王監督である。WBCで世界一になったと思ったら不動の原四番。王監督は不変です。じりじりさせちゃうのです。福留じゃなくて吉村二軍監督が起死回生のホームラン。代打、オレ。

日本には時間切れ引き分けというものがある。広島は今年、その細かいカスの金利みたいな引き分けを捨てずに積み重ねて優勝したのだ。最多勝利は巨人であるにもかかわらず、最多引き分けで優勝というのは。

八戦目で西武が優勝したんだけど、しかしこのシリーズは最後まで広島ペースだったと思う。敗けはしたけど最後の試合まで広島の流儀が影響を与えつづけた。つまりパッと燃えずにズブズブズブズブと背中を丸めてくすぶりつづける。
燃える闘魂、ではなくて、燃えない闘魂、というか。
その粘着性はやはりなかなかのものである。好きではないが。

どうも落合が一度目のFA目前らしい。

しかしマジメに考えて、落合の代りに西本、中畑、篠塚、原の四選手がロッテに行って野球をしている場面を想像すると、何だかガリバー旅行記みたいな異物感があらわれてくる。
トレードというのは順列組合せみたいなものだから、落合選手と王監督のトレードということも考えられるのだった。
落合は全力で走るという感じではないので、ゆっくり歩く監督が似合うかもしれない。九回裏にジャイアンツの落合監督がゆっくり出てきて、右手でピュッと投げるマネしながら、「サンチェだよサンチェ、わかるだろ」などとふてくされて審判に告げる。これもなかなか新しい風景である。

やっぱりこれからは冷戦。

どうもアメリカとソ連は変なことをしている。アメリカがザハロフというソ連人をスパイ容疑で逮捕したあと釈放したら、ソ連でもダニロフというアメリカ人を逮捕したあと釈放していた。どうしてこんなに似たようなことをするのだろうか。しかも名前まで似たもの同士。

ソ連原子力潜水艦が火事になったらしい。(略)
ソ連のゴルパチョフ書記長がアメリカのレーガン大統領に直通電話をかけたそうだ。

プロレス寂れたね。BI砲。中曾根も出てこいやあ(高田というよりは有田口調で)と言ったら、北の家族が出てきた。

金日成主席が暗殺などされるわけがない、と北朝鮮朝鮮民主主義人民共和国)側の人が言っていたが、本当にそうだったので驚いた。あれはどの報道だからケガぐらいしているのではないか、と思っていたのだ。
なぜあのようなことになったのか、朝鮮問題に詳しい人でもわからないらしい。私なんてまるでわからない。
この疑感度は三浦和義落合博満に匹敵するかもしれない。
しかし北朝鮮というのもわからない国で、かつて金日成の後継者は息子の金正日だと聞いたときは何だか気持わるくなった。
共産主義って何だろうか。
この人事は国家というより、ほとんど会社感覚である。有限会社。

これからは銀塩AF

AFが各社いよいよ出はじめましたね。
一眼レフの話です。オリンパスのストロボーグというのが出て、京セラも230・AFというのが出た。(略)
二つ出たAF新機種が小型ストロボ内蔵ということは、以後あらわれる新機種もこの路線をいくのだろう。
現在AF一眼レフは、ミノルタ、キャノン、ニコンオリンパス、京セラ、と出たわけである。まだ出してない一眼レフメーカーはペンタックス、リコー、チノンコニカとあって、それが全部出すとは限らないが、しかしカメラ製品の華はどうしてもAF一眼レフに向かっているのだ。
春にはキャノンがもう一度腰を据えたAF一眼レフを出すという噂があるし、ニコンにも同様の疑惑がある。そしてやはりペンタックスが黙っていないだろうと思う。

キャノンのは凄いらしいですね。前回はレンズ部モーターの出っ張りで、これはボディ部モーターにすっきり収めたミノルタにドーンと抜かれてしまった。
で後発メーカーはみんなこのミノルタ方式のボディ部モーターで、私もこれが一番合理的だと思っていた。ところがキャノンにはレンズ部モーターの意地がある。その意地を突っ張りつづけて二十年、いやそんなにはならず二、三年というところだけど、レンズ部モーターのまま出っ張りをなくして出てきた。
さあそうなると凄いもので、何しろモーターがピントリングそのものだから、ピッ、とピントが合ってしまう。

ホリエモン講談社を襲撃

たけし軍団講談社を襲撃したらしいが、いつかはこうなると思っていた。何しろ「軍団」だから。名前というものはバカにできないものである。

フライデーは地上げ屋である。
芸能人が街を歩いている何でもない写真をスキャンダルのスクープ写真に底上げしてしまう手口が、地上げ屋にそっくりなのだ。一人の芸能人を何度も何度もつけ回して誌上に載せつづけていくうち、そのこと自体が次第にスキャンダルとなり、駅の売店でどんどん売れてしまう。駅裏の何でもない空地をあれこれといじくり回すうちにとんでもない高値にするのと同じこと。
土地転がしと写真転がしは、ほとんど同じ経済原理で利潤を生み出す。

芸術の世界も地上げ屋の温床である。芸術の世界というより芸術の業界といった方が正しい。たとえば現代の抽象美術の価値などは具体的に表示できないものだから、地上げ屋の力がモロに発揮される。画廊とか展覧会とかあちこち転がしながら、あの人が買った、この人が買ったというハクをつけることで価格が高騰していくさまは、銀座や新宿周辺の地上げ屋の手口とそっくり似ている。

小沢でも勝てず、自民党が圧勝

売上税である。
ぜんぜんわからない。
しかしこれでは日本国民として面目が立たないからもう少し考えるけど。
大型間接税という言葉もあった。これには導入もついていた。いや言葉の問題だけど、これは単なる選挙用語だと思っていたら、やはりその通りで、選挙後に服を脱いで売上税となったのである。(略)
とにかく三百四議席だから、最後にはしっかり両手でつかまえて押さえつけられて、手篭めにされてしまうわけです。

うーん、これは赤瀬川の文章全部を読まないと面白さがでないというか、引用部分だけだと赤瀬川の文章の面白さが伝わらないし、結局あまり面白くないようである。困ったものだ。俺の時間を返して欲しい。
ともかく、まず国鉄がJRになったり、鉄人衣笠が連続出場記録に挑戦したりしてたのである。

JRに乗った。
どうってことなかった。
(略)
掛布がサードゴロをさばいているのを見ると、あ、あの掛布が、と思う。
    *
オグリビーがバットをピクピクさせながらヒットか何か打つと、あ、あのオグリビーが、なんて思う。