ボクのブンブン分泌業/中原昌也

ボクのブンブン分泌業

ボクのブンブン分泌業

メチャクチャなものとメチャクチャでないもの、という疑問さえ起きないようなものがやりたいですね。それを目指したいんです。難しいですよね。ほんとに自由にやっちゃうと、結局はオカルト的な罠にはまっちゃいそうで。
オカルト的なものというのは実在するかもしれないけれども、それはほっておくべきだと、僕は思うの。物語を与えたりとかして語ろうとするものではない。
 
作っている人には直接はないんだけれども、画面には何か情熱的なことが起きているという、そういう現象がおもしろいなと思うんです。血が出るから好きとか、そういうことじゃないんだよね。血が出たりすることに頼らなきゃいけないような投げやりな感じというのか……心ない表現というか、強制的にお金のためにやらされてる、そういう表現が面白いわけです。
 
CGが恐ろしいところは、もうどんなものでも見せられるということになって、みんなが同じように感じられるのを、より目指そうとしているじゃないですか。それが、表現でいちばん恐いところだと思う。
 
[オタクは]すごいひとつのものに固執していて他人と共通の言語っていうのが対象物に対してのみであって、例えば全く知らない人とそれによってコミュニケートしようとしないっていうか、完全に閉じちゃっているもんだと思うんですよ。それからすると僕、絶対そんなことしてるつもりないし、あらゆるものに対して興味持ってるし、社交性ありますしね。自分で言うのもなんですけど。そういうつもりないし、そういうやり方でやってるもの、すごく嫌いですからね、基本的に。一貫してそういうことじゃないことをやりたいですね。・・・だから今の表現って、やっぱりリサイクルっていうか、例えば音楽聴いてもヒップホップとかって音楽クイズになっちゃってるじゃないですか。

音楽ライターをバカにする企画であの渋谷陽一と対談。社長の自慢話でも聞いて裏で笑ってやろうという中原に対して、企画の趣旨や中原のスタンスを踏まえながら、しっかり中原に対応した素材を用意し教育的指導をあえて行う渋谷。接点のない二人の掛け合いが面白い。

渋谷 その意外性で選んだんですよ。ものすごくメジャーなバンドで自分との接点がないと思っていたのに、実際に聴いてみると、「あ、そうでもないし面白いな」というリアクションを期待したんだけど。一聴しかしてないんじゃお話にならないじゃないですか。
中原 じゃあ何回も聴くんですか?
渋谷 そりゃ、仕事に対しては誠意を持って向き合いますよ。その誠意をいきなり踏みにじられたわけで(笑)。(略)
[用意した某バンドの歌詞について]
渋谷 きっと、あまりにフラットな真面目さに違和感を感じると思ったんですよ
中原 その通りです!
渋谷 まだ起きてないんじゃないの?
中原 ……渋谷さんは元気ですよね、こんな早く(午前10時半)から。
渋谷 私は朝の10時から夜中の1時までずっと職場にいますから。
中原 本当に働き者ですね。健康管理はどうしてるんですか?
渋谷 健康管理は・・・健康ですね。
中原 健康管理は健康(笑)。(略)
 
渋谷 せめて感想を言えるくらいはちゃんと音楽に向き合ってほしいね。
中原 僕の感想は「なんて言っていいのか分からない」ってことで。
渋谷 それ音楽評論家としての感想じゃないからね。むしろ不向きなものに対しても、なにがしかのアプローチをしなくてはならないことのほうがこの仕事には多いですから。中原さんにひとつアドバイスするとしたら、向いていないと思います。
中原 そんな!別にロッキング・オンに入れてくれって言ってるわけじゃないんですから!