中国・朝鮮の地名・人名の読みかた

ところで新聞界が最初にこの問題で混乱したのは昭和六年の満州事変の時だった。大陸からの膨大な電報の中に続々と中国固有の難解な地名・人名が現れるので、これを受ける新聞、通信社も大変だが、読者にとっても、難解な文字ほど振り仮名がないので、会話になると不便この上もないという声が起きた。
そもそも、この中国文字の音符統一に先鞭をつけたのは、高田知一郎編集局長時代の報知新聞である。大正後期、報知は中国の地名、人名にすべて中国式の振り仮名をつけ、難解な文字は全部カナ文字に改めたが、あまりにも急激な改革だったため、かえって読者の不人気を招き、率先して行った漢字制限とともに、不首尾に終わった。だが満州事変以来「報知の運動は無意味でなかった」と識者の間では惜しむ声があがったという。
『新聞経営の先人』(春原昭彦)