徹底検証 日本の右傾化 創価学会

徹底検証 日本の右傾化 (筑摩選書)

徹底検証 日本の右傾化 (筑摩選書)

  • 作者:塚田 穂高
  • 発売日: 2017/03/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

第18章 創価学会公明党自民党「内棲」化

藤田庄市

2014年の総選挙小選挙区の半数で学会票が自民を当選させている。その見返りに公明は9議席の割譲と比例区での議席増。
藤原弘達創価学会を斬る』の出版妨害で池田大作が国会喚問要求されたのを、田中角栄幹事長と佐藤栄作首相がかばいきったのがそもそもの自民・公明連立の縁。それでも学会は深手を負い、池田は学会と党の政教分離を宣言。しかも借りができた角栄から選挙のたびに、落選危機候補に学会票注入のお願い。公明が出ている選挙区の時もあった。
93年の非自民連立政権後、自社さ連立で政権復帰すると、自民は学会・公明の政教一致憲法違反だと激しい批判を繰り広げる。それにも屈せず95年夏の参院選新進党は躍進、学会パワーを見せつけた。

自民党が受けた衝撃と危機感の大きさは尋常ではなかった。折しも同年のオウム真理教事件は、秋の臨時国会で宗教法人法改正を最大のテーマにさせた。好機とばかり、自民党は同事件の教訓どころか、創価学会政教一致を標的に据えた。彼ら独自の「政教分離法」案まで振りかざし、池田の国会招致を強く主張、新進党と激突した。(略)
結局、池田招致は「先送り」とされ、秋谷栄之前会長が出席した。(略)
 池田の国会招致には失敗したが、自民党創価学会攻撃の手をゆるめず、1996年には機関紙『自由新報』を使って池田スキャンダルの大キャンペーンを行った。同時に、野中ら多くの自民党幹部がそれぞれのルートで学会側に対し、「新進党から離れて元の公明党に戻り、自民党に協力してくれれば学会攻撃は終わる」と囁き続けた。(略)
[97年新進党解党、98年公明党が復活]
99年に「国旗国歌法案」「通信傍受法案」など右傾化を促す諸法案に賛成。自民党への協力姿勢を示しながら10月に自自公連立政権に参画した。あっという間だった。(略)
[どうやってパイプをつくったと問われた野中広務はこう答えた]
「叩きに叩いたら、向こうからすり寄ってきたんや」。権力政党の底知れぬ怖さを、創価学会公明党は思い知ったにちがいない。
(略)
「「比例は公明党、小選挙区自民党の私」と言うのはいやだと言ったら、そんなことは長続きしない。自分の本当の親衛隊がいるだろう。そういう人たちだけは公明党に入れておけ。ある程度の票を出してくれ」というやり方を僕は指導したんです。(略)
 票のバーター取引の端緒と実態が赤裸々に語られている。野中の凄みは党本部同士の協定とその指示という並のやり方にとどまらず、選挙協力の永続的な体制を構築したところにあった。(略)[どれだけ比例票をとったか点検される公明党議員の]手柄になるような方法、すなわち後援会の名簿の提供まで自分から率先して行なったのである。

集団的自衛権容認


[2014年集団的自衛権容認をなぜ公明党は了承したか。内閣官房の知恵袋、飯島勲が講演で]
集団的自衛権が話題になっている。(略)[公明党創価学会の関係は]長い間「政教一致」と騒がれてきた。内閣法制局の発言を担保に、その積み重ねで「政教分離」ということに現在なっている。公明党創価学会の幹部の心理を推測すると、そのことを一番気にしているのではないか」
そして核心に入る。
「もし内閣によって内閣法制局の発言、答弁が今まで積み重ねてきた事案を一気に変えることになった場合、「政教一致」が出てきてもおかしくない。単なる安全保障問題とは限らず、そういう弊害が出ておたおたする可能性もありうる。そういうことがない状態で着地点を見いだせば、きちんと収まるだろう」
新進党時代の強烈な創価学会攻撃の悪夢を思い起こさせる、忽れぼれするほどみごとな「恫喝」である。与党として生き残るどころか、組織としての生命が惜しければ九条の解釈改憲に異を唱えるなとばかりの勢いだ。
(略)
近未来、日本の右傾化が続いた場合、創価学会公明党は、どう変容するだろうか。(略)
この参院選において公明党所属でありながら「安倍チルドレン」と称される新人議員が誕生したことだ。(略)
「内棲」化の進化・深化によって自民党との運命共同体議員が出現したのである。(略)
創価学会公明党のDNAにはじつは全体主義的要素がたっぷりあるのだ。「内棲」のなかで存在感を示すには、右傾化の先頭を突っ走ることである。(略)カリスマ願望も根深くDNAにある。(略)池田に代わるカリスマ指導者が出現し、創価学会が右派政権の投票基盤にとどまらず、そうした社会への積極的牽引勢力にならないとも限らない。