レンズの空気感&大気圏突入

 ふつうのレンズの評価で大事なのは、明るさと焦点距離であり、最近では、常用レンズはほとんどズームレンズ化しています。また、性能を向上させるために、非球面レンズを使ってレンズの内部を微妙に移動させることで収差を補正したり、特別なレンズの素材を使ったりと、ありとあらゆるテクニックが導入されています。(略)
 また、以前はレンズメーカーが公表しなかった、レンズの性能をグラフ化した曲線図を公開して、それをカタログに掲載もしている。ようするに高性能の優秀レンズで、非の打ちどころのないエリートレンズであることを証明している。
 そういう「すべてのレンズが極めて優秀な性能でどんぐりの背比べをしている」のが、現在のモダン優秀レンズなわけで、その意味で、かつて存在しなかった、まずカメラ人類には天国のような環境に生きているのです。
[だが不満が残る]
(略)
 最近のモダンなレンズの描写というのは一体どのようなものなのか。簡単にいってしまえば、それは完全な蒸留水のようなものです。まことに純粋で清冽ではあるのですが、なんの旨味もそこには感じられない。
 (略)かつては「現実をそのままに複写したような、なんの加工も歪みも変色もない、第二次現実とでもいえる画像」が得られれば、理想の映像世界が到来すると思われていました。そしてコンピューターの光線追跡の成果で、ついにほぼ理想に近いと思われるレンズが、しかも、かなり安価にそこらにあるのです。
[だがそれでは満足できない、空気感がなければ]
(略)
空気感とは何でしょうか?
撮影した画像の中に「たゆとうている、ある視神経への刺激」であって、その刺激はきついものではなく、むしろ、みる者をリラックスさせる、ある要素
(略)
 レンズの空気感。このレンズの見分け方をいったん知ってしまうと、そこには広大なレンズの平原、見渡す限り果てのないレンズの森林が、いきなり我々、レンズ人類の前に現出するのです。(略)
 「空気感を基準にしたレンズブランド選び」が基準になると、まずレンズに付いているプライスタグが意味をなさなくなる。
(略)
[エドワード・ウエストンのオリジナル・プリントをオーバーマットをめくって、直に検証]
 あたしが画面全体を観察する作業というのは、画面の中央部をみて、今度は画面の周辺部をみて、さらに視神経は画面の中央に戻るという一種の視線のスキャンによって構成されています。
 面白く思ったのは、画面の周辺部ではあまりピントがよくないのです。それで画面周辺部で彷徨っていたあたしの視線が画面中央部に戻ってくると、また画面が非常にシャープに感じられる。その視線のさまよう効果で、ウエストンの作品は実際のシャープさよりもさらなるシャープさの効果を上げているのです。
 最近のモダンレンズはそのようなことはありません。まず、画面中心から周辺まで一律にシャープなのです。それは永年のレンズ設計者の絶えまない仕事の成果なのですが、初期のレンズ、つまり中央と周辺部に画質の差のあるクラシックレンズを巨匠写真家が使用すると、モダンレンズが演出する以上の予期しない効果が生まれる(略)これは「レンズの空気感の一形態」と呼んでよいでしょう

イケナイ宇宙学―間違いだらけの天文常識

イケナイ宇宙学―間違いだらけの天文常識

大気圏突入

[流星が輝くのは摩擦熱によると思われているが]
実際には流星物質と空気のあいだにはほとんど摩擦は起きない。きわめて高温の圧縮された空気は、流星物質の前の離れたところに留まるのだ。それを物理学者は「離脱衝撃波」と呼んでいる。この高温の空気は、岩石の本当の表面からかなり離れたところに留まるので、その直後には比較的ゆっくり動く空気のポケットができて、それが岩石と接触する。圧縮された空気の熱が流星物質を溶かし、ゆっくり動く空気が溶けた部分を吹き飛ばす。これは「融除(アブレーション)」と呼ばれる。流星物質から融除されて後方に流れるかけらは輝く長い筋(流星痕)となる。
(略)
流星物質が音速以下にまで減速すると、空気はもう激しく圧縮されなくなり、流星の輝きは消える。ふつうの摩擦が大きく働くようになり、時速数百キロメートルまで流星物質を減速する。
(略)
[よく映画などで落下隕石で火災発生なんてのがあるが]
現実にはそうはならない。流星物質はその生涯のほとんどを宇宙ですごし、それゆえにとても冷たいのだ。流星物質は大気を通過する短いあいだ加熱されるだけで、熱が内部に達するほど長時間過熱されはしない。
(略)
 実際もっとも高温になる部分は融除されて飛んでいってしまうし(略)[冷たい空気の層で冷却されるうえ]
流星物質の内部の超低温が外側の部分も冷やしてしまっているのだ。だから小さな流星物質は火災を発生しないどころか、その多くは実際に発見されるときには霜で覆われている。
 大きな流星物質になると話は違ってくる。差し渡しが1キロメートルかそれ以上の大きな流星物質になると、大気では十分に減速しない。