東横インの経営術

たまには下らない本でも読んでみるかシリーズ。
本を読む暇がないのでお手軽本で穴埋めしているわけではありません(棒読み)。小嶋社長の顔というのは200キロで飛ばしておいて「運転してたのは姉歯だから」と主張している顔だったのだけど、西田社長の顔は本当に「そりゃ違反だろうけど20キロくらいだろ。意味のない速度規制だ。今までは暗黙の了解だったじゃないか。」という顔をしていたので実際どうなのだろうと興味がわいたのです。
とりあえず順番をとばして一番肝の箇所を最初に。
電気工事会社をやっていた経験によるノウハウ

建物を建てる際には建築図面がまず必要だ。ところが建築図面だけではビルは建たない。電気図面が必要だ。建築士は普通、電気図面まで作れないから、われわれが担当する。この仕事を多く経験すると、ビルの資産価値の見分けがつくようになるのだ。
電気の図面を書くためには、建築図面を子細に検証しなければならない。いかに効率よく配線をめぐらすかに、この仕事の成否はかかっている。
また、電気工事会社というのはビルの仮設工事からかかわる。杭を打つにも電気は要る。建った後も、修理が必要だから、一度かかわったビルとはずっと付き合うことになる。必然的に、利益の出るビル、出ないビルの見分けがつくようになるのだ。(略)
どういう建物にすれば高い利益を確保できるか。そのためにはどの程度の容積率が必要なのか。こういったことを電気工事の仕事を通じて自然と学んでいったのだ。
東横インでは、ホテルを建てる際、設計はすべて自前だ。限られた面積から、いかにして効率よく部屋を取るか。わたしたちはこれを「陣地取り」と呼んでいる。

なぜ上場しなかったか。

実をいうと、以前上場を視野に入れたことがあった。一度、監査法人に依頼して内部監査をお願いした。当然、支配人たちにも監査が及ぶ。すると彼女たちが萎縮してしまい、のびのびと意見をいう雰囲気が壊れてしまったのだ。
これを見て、この会社は上場で大きく変わることを確信した。支配人たちが「うるさいわね、社長」といえなくなる組織になってしまう。お客様第一で動く「女将さん」タイプの支配人が次々と消え、アカデミックで世渡り上手な人間が出世していく会社になってしまう。

社長は「内観」はオカルトでも啓発セミナーでもありませんと力説。社員が内観によって「気づきのトレーニング」を積んでいることがサービス向上につながっているそうで、なんとなく「内観ホテル教」の気配。仕事のない働きたい女性のハートを完全掌握して西田教祖のハーレム状態。仮にホテル業が破綻しても「バツイチ女にもてる」セミナーが開講できるハズ。
本当は4500円で十分やれるのだが、同業者の圧力で。

その値段でスタートしたのだが、旅館組合の人から「バス・トイレ、エアコン付きでその値段はないでしょう」と叱られた。旅館組合の電気工事も手がけていたので、すぐに5000円に値上げした。が、それでもまだ「安すぎる」というので、5800円に落ち着いた。

幼馴染の旅館の息子から相談を受けたのがきっかけ。

「消防法が厳しくなって、旅館を鉄筋にしろという指導を受けている。もう旅館なんてやりたくないから、貸しビルにしたいんだが」

ホテルを運営することになったが、自分も本業がある。行きつけの飲み屋のママが引退するというので任せることに。これが「女支配人」の原点。
五島慶太は無関係ですからあ。とんぷく。

蒲田は東京と横浜の中間にあるから、というきわめて単純な理由からだ。正直なところ、「東急イン」の影響もあった。もちろん先方には断りを入れたが、当時はここまでホテル数が増えるとは思っていなかった。多くの人から、いまだに間違われるが、東急イン東横インは何の関係もない。

家族連れ・女性客が増えた訳は(でも、障害者はきっと来ない、来れない、ハズ)。禁煙フロアを設置して完全分煙化だそうです。

ひとつの理由に、各部屋にアダルトビデオのサービスがないことが挙げられる。スタッフ全員が女性である。彼女たちが強硬に反対したため、ずいぶん前に廃止した。経営者側からいえば、アダルトビデオのサービスは実はたいへん儲かるのだが、廃止したのは結果的に正解だったと思っている。健全なホテルというイメージが浸透し、それまでビジネスホテルを利用しなかったお客様が来てくださるようになったのだ。

転勤なし全部地元採用。能力給にすると逆にはりきりすぎて燃え尽きるので、初年度320万から地道に昇給して20年後で700万くらいにする。

子育てを終えた40歳前後の女性というのは、人材における、ある意味「ニッチ(すき間)」である。
この年代女性の求人は、非常に少ない。仮にあっても、特殊な専門技術が必要とされるものや、パートタイマー的なものばかりだ。とりわけ地方都市になると、その傾向が顕著である。この傾向が顕著であればあるほど、私たちは優秀な人材を確保できるので、ありがたいことではある。

ビジネスホテルにはレストランや宴会場は不要だという発想なのだから、そりゃ障害者施設なんて尚更だ。

まずスペースが無駄だ。たとえば一フロア100坪の10階建てホテルを考えてみよう。当然、一階はフロントスペースで部屋は取れない。だから必然的に二階や三階がレストランや宴会場スペースとなる。すると客室は七階分しか取れないことになる。

建設業界「三方一両得」

あえて乱暴な言い方をするなら、私が長年いた建設業界は、業界内すべての人たちが儲からない仕組みとなっていた。自分のところが儲かろうとすれば、下請けが損をする。下請けの利益を増やそうとすれば自分のところの利益が減る。結局、長年これを続けていると、どちらも生き残れなくなってしまうのだ。私がいつも考えているのは「三方一両得」ということ。

節税を学ぼうと大学院へ。卒業時に「外部の目」になってほしいと担当教授を社外取締役に。

日本大学大学院グローバル・ビジネス研究科は、「エグゼクティブ・マネジャー・コース」や「ベンチャー・ビジネス・コース」など五つのコースを持ち、MBAの取得も可能という「社会人大学院」の先駆け的存在である。(略)25名の第一期生のうちのひとりが本書の著者・西田憲正氏である。
ここに登場する石井脩二教授は、担当教授として”学生・西田憲正”を指導した人物だ。
さらにはこの出会いをきっかけに、現在は東横イン社外取締役も務めており、西田社長をもっともよく知る人物のひとりである。

ああ、なんか時間を無駄にした気分。