〈インターネット〉の次に来るもの―未来を決める12の法則

チラ読み。

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

ハイパーテキスト

 コンピューターのパイオニアであるバネバー・ブッシュが、ウェブの中核的な考えとなるハイパーリンクのアイデアを構想したのは1945年に遡るが、この概念を最初に補強しようと考えたのはテッド・ネルソンという自由思想家で、1965年に独自の方式を構想した。(略)
 私は1984年に、コンピューターに詳しい友人の紹介でネルソンに会ったが、それは最初のウェブサイトが出現する10年前のことだった。われわれはカリフォルニア州サウサリートの波止場にある暗いバーで会った。彼は近所のボートハウスを借りていて、まるで自由人の風情だった。彼のポケットからは畳まれたメモがはみ出しており、いろいろ挟み込んだノートからは、長い紙の切れ端が垂れ下がっていた。首に紐を付けたボールペンをかけた彼は、人間のすべての知識を整理するという構想について、午後4時のバーには似つかわしくないほどの真剣さで語り始めた。その教義は3×5インチの何枚ものカードに書かれていた。
 ネルソンは親切で魅力的で話も上手だったが、私は彼の話についていくのがやっとだった。だが彼のすばらしいハイパーテキストという考えにはピンときた。彼が主張するには、どんな文書にも、その文書に関連する他の文書を参照する脚注が付されるべきであり、そうすればコンピューターは両者のリンクを見える形にして恒久的に張ってくれるというのだ。それは当時、新しい考え方だった。しかも、ただの始まりに過ぎなかった。彼はおおもとのクリエーターにまで戻って著作者を特定し、かつ読者が文章のネットワークを行き来する過程での支払いをどうトラッキングしていくかという難解な機構をインデックスカードに殴り書きでスケッチし始め、それをドキュバース(docuverse)と呼んだ。彼はトランスクルージョン(transclusion)とかインタートゥインギュラリティー(intertwingularity)という言葉を使いながら、そうした構造を組み込むことで大いなるユートピア的な利益があることを説いた。ばかげたことから世界を救えるというわけだ。

「僕らが本当に作っているのは、AIなんだよ」

 2002年頃に私はグーグルの社内パーティーに出席していた。同社は新規株式公開をする前で、当時は検索だけに特化した小さな会社だった。そこでグーグルの聡明な創案者ラリー・ペイジと話した。「ラリー、いまだによく分からないんだ。検索サービスの会社は山ほどあるよね。無料のウェブ検索サービスだって? どうしてそんな気になったんだい?」。私のこの想像力が欠如した質問こそが、予測すること――特に未来に対して――がいかに難しいかを物語る確固たる証拠だ。だが弁解させてもらえるなら、当時のグーグルはまだ広告オークションで実収入を生み出してもおらず、ユーチューブなど多くの企業買収を行なうはるか前の話だった。私もその検索サービスの熱心なユーザーだったが、いずれは消えていくのではと考えていた大多数の一人だった。ペイジの返事はいまでも忘れられない。「僕らが本当に作っているのは、AIなんだよ」と彼は笞えたのだ。
 私はここ数年、グーグルがディープマインド以外にもAIやロボット企業を13社も買っているのを見て、このやり取りのことを考えてきた。一見すると、グーグルはその収入の80%を検索サービスから得ているので、検索機能の充実のためにAI企業の買収を強化しているように思われるかもしれない。しかし私は逆だと思う。AIを使って検索機能を改良しているのではなく、検索機能を使ってAIを改良しているのだ。あなたが毎回、検索語を入力し、その結果出てきたリンクをクリックしたり、リンクをウェブ上で新たに作ったりするのは、グーグルのAIのトレーニングをしていることになる。あなたが「イースターのうさぎ」の画像検索をして、結果一覧の中から最もそれらしい画像をクリックすると、あなたはAIにイースターのうさぎとはどういう姿なのかを教えていることになる。グーグルが毎日受けている30億回の検索要求の一つひとつがディープラーニングの先生役となってAIに繰り返し教えているのだ。今後10年、このままAIのプログラムが改良され続け、データが何千倍にも増えてコンピューターで利用できるリソースが100倍になれば、グーグルは誰にも負けないAIを持つことになる。(略)
私の予想では、2026年までにグーグルの主力プロダクトは検索ではなくAIになるはずだ。

コピーできないモノとは

この新しいオンラインの世界では、コピー可能なものはすべて無料でコピーされる。
 経済の普遍的な法則では、何かが無料でどこにでもあるようになると、その経済等式における位置が逆転する。かつて夜間の電気照明が新しく希少だった時代、貧乏人はロウソクを融通し合って使っていた。その後に電気が簡単に使えてタダ同然になると、人々の好みは逆転して、夕食のテーブルにロウソクを灯すのが豪華だと思われるようになった。工業化時代には、手製の一品物よりも、正確なコピーの方に価値があった。発明家が作った不恰好な冷蔵庫のオリジナルな試作品をほしがる人などいなかった。誰もが完璧に動くクローンの方をほしがったのだ。(略)
 現在、価値の軸は再び反転している。無料コピーの奔流が、既存の秩序を脅かしているのだ。膨大な無料のデジタル複製物で溢れかえるこの過飽和状態のデジタル宇宙では、コピーはあまりにありふれていて、あまりに安い――実際はタダ同然――ので、本当に価値があるのはコピーできないものだけとなった。(略)その代わり、コピーできないモノは、希少化して価値を持つ。(略)
では、コピーできないモノとは何なのか?
 例えば信用がそうだ。信用は大量に再生産はできない。信用を卸しで買うこともできない。(略)
誰か他人の信用を複製することなどできない。信用は時間をかけて得るものなのだ。(略)
ブランドカのある会社は、そうでない会社と同じような製品やサービスにより高い値段を付けることができるが、それは彼らが約束するものが信用されているからだ。信用が手に触れられないものである限り、コピーで飽和したこの世界では価値を増すのだ。
 他にもコピーできない信用のような資質はたくさんあり、それらが現在のクラウド型経済では価値を特ってくる。(略)
以下には、「無料より良い」八つの生成的なものを列挙する。
即時性(略)
多くの人は映画作品の公開初日の夜にかなりの金額を払って映画館に観に行くが、その作品はいずれ無料になったり、レンタルやダウンロードでほぼタダになったりするものだ。つまり本質的には、彼らは映画にお金を払っているのではなく(無料でも観られる)、即時性に対して払っているのだ。(略)
パーソナライズ
 コンサートを録音した一般的な盤は無料になるだろうが、あなたの部屋の音響環境にぴったりに調整されて、まるで家のリビングルームで演奏されているような音が出るなら、かなりお金を払ってもいいと思えるだろう。(略)
本の無料コピーがあったとしても、出版社があなたのこれまでの読書歴に合わせて編集してくれればパーソナライズできる。(略)
こうしたパーソナライズのためにはクリエーターと消費者、アーティストとファン、プロデューサーとユーザーの間でやり取りを続けなくてはならない。相互に時間をかけて行なわなくてはならないために、それは非常に生成的なものとなる。マーケターはこれを「粘着性」と呼んでいるが、それは相互にこの生成的な価値にはまり、さらに投資することで、その関係性を止めてやり直そうとはしなくなるからだ。この手の深い関係は、カット&ペーストすることはできない。
解釈
 「ソフトは無料ですが、マニュアルは1万ドルです」という古いジョークがある。しかしもはや冗談ではない。レッドハットやアパッチといった高収益を叩き出す企業は、フリーソフトの使い方を指導したりサポートしたりしてビジネスをしている。ただのビットに過ぎないコードのコピーは無料だ。その無料のコードにサポートやガイドが付くことで、価値のあるモノになる。
(略)
信頼性
 流行のアプリを裏ネットで無料で手に入れることはできるかもしれないが、仮にマニュアルは要らなくても、そのアプリにバグがないことや、マルウェアやスパムでないことは保証してほしくなるかもしれない。その場合、信頼のおけるコピーには喜んでお金を払うだろう。同じ無料ソフトでも、目に見えない安心がほしくなる。あなたはコピー自体ではなく、その信頼性にお金を払うのだ。グレイトフルデッドの演奏の録音は雑多なものがいくらでもあるが、バンド自体から信頼できるものを買えば、自分がほしいものが確実に手に入るし、それは正真正銘このバンドが演奏したものだ。
(略)
アクセス可能性
 所有することは得てして面倒なことだ。いつも整理し、最新のものにし、デジタル素材だったらバックアップを取っておかなくてはならない。いまやモバイルが普及し、いつもそれを持ち歩かないといけない。私も含め多くの人々が、自分の持ち物の面倒を誰かに見てもらって、あとは会員登録してクラウドから気ままに使いたい。(略)
有料のサービスに加入していれば、無料の素材にすぐアクセスできて、自分の使っているさまざまな端末で使え、しかもユーザーインターフェースがすばらしい。これは一部、アイチューンズがクラウド上で実現している。どこかで無料でダウンロードできる楽曲でも、使い勝手よくそれにアクセスするためならあなたはお金を払う。そのときの対価はその素材自体ではなく、いちいち保管する手間をかけず簡単にアクセスできることなのだ。
(略)
支援者
 熱心な視聴者やファンは心の中ではクリエーターにお金を払いたいと思っている。ファンはアーティストやミュージシャン、作家、役者などに、感謝の印をもって報いたいと思っている。そうすることで、自分が高く評価する人々とつながることができるからだ。しかし彼らがお金を出すには、かなり厳しい四つの条件がある。1.支払いが非常に簡単であること、2.額が妥当なこと、3.払ったメリットが明快なこと、4.自分の払ったお金が確実に直接クリエーターのためになっていることだ。バンドやアーティストがファンに無料のコピーの対価として好きな金額を払ってもらう投げ銭制の実験が、そこかしこで始まっている。
(略)
発見可能性
 (略)見つからない傑作には価値がない。(略)毎日のように爆発的な数のものが作られる中で、見つけてもらうことはどんどん難しくなっていく。ファンは数えきれないほどのプロダクトの中から、価値あるものを発見するために多くの方法を駆使する。(略)お勧めの番組を教えてもらおうとTVガイド誌を買う読者が100万人もいたのはそれほど昔のことではない。ここで強調しておきたいのは、そうした番組が無料なことだ。TVガイド誌は、ガイドしている3大ネットワークのテレビ局を合わせた以上の収入を得ていたと言われる。アマゾン最大の資産はプライム配達サービスではなく、この20年にわたって集めた何百万もの読者レビューだ。アマゾンの読者は、たとえ無料で読めるサービスが他にあったとしても、「キンドル読み放題」のような何でも読めるサービスにお金を払う。なぜならアマゾンにあるレビューのおかげで、自分の読みたい本が見つかるからだ。(略)
こうした事例では、あなたは作品のコピーではなく、発見可能性にお金を払っている。
 以上の八つの性質はクリエーターにも新しい手法を求めてくる。流通を制したからといって、もはや成功は約束されないのだ。流通はほとんど自動化され、すべてが流れとなる。天にまします偉大なるコピーマシンが、すべてやってくれるのだ。コピー防止の手法も、コピーというものが止められない以上もはや有効ではない。コピーを禁じようと法的な脅しや技術的な策を練っても効果はない。一時的に囲い込んで欠乏状態を作っても役に立たない。それよりも、こうした八つの新しく生成するものが教えてくれるのは、マウスのクリック一つでは簡単にコピーできないような性質を育てようということだ。この新しい世界で成功するには、新しい流動性をマスターすることが求められるのだ。
(略)
 流動性によって新しい力が生まれた。もうラジオDJによる専制ではない。流動化した音楽なら、アルバム内やアルバム間で曲の順番も変えることができる。ある曲を縮めたり、引き伸ばして倍の長さにしたりして聴くこともできる。他人の曲の一部をサンプリングして、自分の曲に使うこともできる。曲の歌詞だけを替えることもできる。(略)
 重要なのはコピーの数自体ではなく、一つのコピーが他のメディアによってリンクされ、操作され、注釈を付され、タグ付けされ、ハイライトにされ、ブックマークされ、翻訳され、活性化されたその数だ。(略)
重要なのは、その作品がどれだけうまく〈流れていく〉かなのだ。(略)

サブスクリプション方式

 アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス2007年に初めてキンドルの端末を紹介したとき、それはプロダクトではないと主張した。そうではなく、読むものへのアクセスを売るサービスだと言うのだ。その話はその7年後にアマゾンが、約100万冊の電子本を読み放題にするサービスを開始したときに、よりはっきりしたものになった。読書好きの人はもう個々の本を買う必要はなく、キンドルを1台購入することで、現在刊行されているほとんどの本へのアクセスを買うことになるのだ
(略)
 「所有権の購入」から「アクセス権の定額利用」への転換は、これまでのやり方をひっくり返す。所有することは手軽で気紛れだ。もし何かもっと良いものが出てきたら買い換えればいい。一方でサブスクリプションでは、アップデートや問題解決やバージョン管理といった終わりのない流れに沿って、作り手と消費者の間で常にインタラクションし続けなければならなくなる。それは1回限りの出来事ではなく、継続的な関係になる。あるサービスにアクセスすることは、その顧客にとって物を買ったとき以上に深く関わりを持つことになる。乗り換えをするのが難しく(携帯電話のキャリアやケーブルサービスを考えてみよう)、往々にしてそのサービスからそのまま離れられなくなる。長く加入すればするほど、そのサービスがあなたのことをよく知るようになり、そうなるとまた最初からやり直すのがさらに億劫になり、ますます離れ難くなるのだ。それはまるで結婚するようなものだ。
(略)
 アクセス方式のおかげで消費者が製作者により近づき、あるいは消費者がますます製作者のように行動するようになって、1980年に未来学者のアルビン・トフラー命名した「プロシューマー」になっていく。ソフトウェアを所有する代わりにアクセスすれば、そのソフトが改良されたときにそれを共有できる。それはまた、あなたが雇われたことも意味する。あなたは新たなプロシューマーになり、バグを見つけて報告するよう促され(会社のQ&A部門の人件費を抑え)、フォーラムで他のユーザーからの助言をもらい(会社のヘルプデスクの人件費を抑え)、自分用にアドオンや改良版を開発する(高コストの開発部門を代替する)ことになる。アクセスによってそのサービスのありとあらゆる部分とのインタラクションが増えていくのだ。

[関連記事]
kingfish.hatenablog.com
kingfish.hatenablog.com
kingfish.hatenablog.com
kingfish.hatenablog.com
kingfish.hatenablog.com