東電テレビ会議記録49時間 その3

前回のつづき。

福島原発事故 東電テレビ会議49時間の記録

福島原発事故 東電テレビ会議49時間の記録

  • 3月14日

11:29:20

本店高橋フェロー 要はさ、1号機を3号機に変えただけだってんでしょ、それで、水素爆発かどうか分かんないけれども、国かなんか保安院が水素爆発と言ってるから、もういいんじゃないの、この水素爆発で。


■この会話から、東電が3号機の爆発の種類を水素爆発とした根拠は「保安院が水素爆発と言ってるから」であり、東電として、3号機の爆発が水素爆発なのか、あるいは別の種類の爆発なのか、きちんと吟味していなかったことが分かる。

12:37:42

1F吉田所長 悪いけどよ、こんなときに悪いけどよ。


■3号機が爆発し同機周辺は瓦礫が散乱し、放射線量も高くなっていることが予想される。そのような状況の現場に注水量変更のために行けと言わなければならない指揮官の胸の内が表れている。

12:41:50

1F吉田所長 あとですね、ちょっと、あの、こんな時になんなんだけども、やっぱり、この、この2つ爆発があってですね、非常にサイトもこう、かなりショックっていうか、まぁ、いろんな状態あってですね。
本店高橋フェロー そうだね、はい。
1F吉田所長 職員がですね。多分、みんなもう落ち込んでんですよ。
本店 うん、お察し申し上げます。
1F吉田所長 やれることはやるんですが、かなり士気が衰えると思います。それで、いろんな業務あるんですけども、なかなか。それと被曝線量がかなりもう、みんなパンパンになってきてますので、なかなかこの業務がですね、これから差し支えると思うんで、その辺の配慮をぜひお願いしたいなと思っております。


■吉田所長は、1号機に続いて3号機も爆発し、福島第一原発の現場の士気が下がってしまった状況を伝えている。とはいえ、現場側から交替を申し出ることはなかなか難しい。それを察してほしいと訴えている。

13:17:35

本店広報班 (略)福島事務所からちょっと依頼が来てます。次の第3報の、福島第一のプレス文に福島県庁、具体的には県知事からこの文言を入れてもらいたいという話がありました。えっと、ちょっと読み上げますと 「これから天候が崩れる予想だが、いま北西の風が吹いており、観測された放射線量から健康に被害が出る心配はない」という文言を入れたい、入れてほしいという話がありましたけれども、えー、ちょっと、これ言いたいのは山々なんですが、こういうことでいいのかっていうのを、ちょっとお諮りしたいと思うんですけども、いかがでしょうか。
(略)
本店 えっと、ぼくはね、こういうね、国の本部の体制下においてね、ここまで電力から言っていいかっていうと、ちょっと気になりますけども。で、あの、恐らくそうだと、恐らくこうだと思います。ただしこれが西のほうに行ったやつが、もういっぺん東に揺られて戻ってくることもあり得ますから。その時は拡散作用、薄くなってるとは思いますけど、ちょっとリスキーですよね、ここまで言い切るのは。ほんとは、だから、こういう話は国から言ってもらいたいとこですけど。

13:44:57

1F吉田所長 ちょっと現場から入ってきた、まだちょっと未確認なんだけど。(略)2号機のですね、ブローアウトパネルは、何かもう多分1号の爆発の時か。
本店 あぁ、ずれてるの?
1F吉田所長 開いちゃってるみたいだって情報があります。
本店 おお、ラッキー!
1F吉田所長 そう、それでちょっといま、大至急確認に行ってますけども、ちょっとまだ未確認だから喜ばないでね。
(略)
本店 つい喜んじゃったよ。

15:26:00

[消火栓からピットのあいだに自衛隊の散水車が放置されている]
1F吉田所長 はぁ?散水車が邪魔してるのね?(略)その散水車、動かないのか。
1F 動かないですね
1F 鍵ないの?
(略)
1F なんで置いていっちゃったんだ。
1F 免許あれば。
1F 免許なんて言ってる場合じゃなくて動かしゃいい、いま現場、誰かいるの?
1F 私道だもんね。

16:13:11

1F吉田所長 えっと皆さん聞いて。本店さんも聞いてください。いま、安全委員長の班目先生から電話が来まして、格納容器のベントラインを生かすよりも、注水を先にすべきじゃないかと。要するに減圧すると水が入っていくんだから、そんなの待たないで一刻も早く水を入れるべきだというサジェスチョンが(略)
[斑目案に従うか、ベントライン構築という従来の東電案でいくか、以下議論が交わされる。斑目に説明し、一旦斑目案は取り下げに]

16:21:25

[準備万端とみていた圧縮空気周りの不具合が疑われてきて]
本店清水社長 清水ですがね、斑目先生の方式で行ってください。


■清水社長が東電としての決断を下した。清水は原子炉の技術的なことが分からないので、高橋フェローらに助言を求めて判断を下すべきであるとも考えられるが、即断した。
(略)
本店清水社長 イエス、それでやってください。
1F吉田所長 あれ、本店の社長の指示が出ましたけど、技術的に武藤、ほっ、本部長、大丈夫ですか。


■技術系の首脳の助言がまったくない中での社長決定に吉田所長はとまどいを隠せない様子。あわてて武藤副社長の考えを聞こうと呼びかけたが、あいにく武藤は、小森常務と持ち場を交替すべく、東京に向かうヘリコプターに搭乗中であった。


本店清水社長 大丈夫だね。
本店高橋フェロー 《電話》やる方向で、ということで、いまここの場で決めましたんで、早速注入やります。

16:36:36

ベントラインの構築がうまくできないから、それを待たずにやれということで始まった2号機の減圧操作が最初から躓いた。炉水位はプラス圏にあり、核燃料はまだ露出していないとみられているが、水位は刻一刻と下がっている。

16:53:08

■[減圧注水を]指示した清水社長だったが、SR弁の構造や機能をよく分かっていなかったことがここでもうかがえる。清水はこの時間帯、繰り返し、収束作業の失敗を前提にどんな対策を採るのか考えるよう求めている。
(略)
福島第一原発の現場は、どうすれば2号機の炉の減圧ができるか、あの手この手を考えている。清水社長は対照的に、弁の操作がうまくいかなかった場合どうすればいいかを考えている。
(略)
東電の最高責任者から「最悪のシナリオ」という言葉が出る。(略)
それに向けた対応策をつくるよう復旧班に命じた。

18:30:25

■2号機はせっかく減圧できたのに消防車の燃料切れで注水できない状況にあることが分かった。核燃料はすでにほとんどが水から露出している。炉心が損傷した後のベントとなれば外部に大量の放射性物質が放出されてしまう。

18:58:05

1F 炉圧0.630。炉水位、ドライウェル圧力、変化なし
1F くっ。


■炉圧が再び上昇し始めたことが報告される。SR弁が閉じた影響とみられる。


1F ああー、もう早く入ってくれ。
(略)
本店 えっと、誰かがー、あの、ポンプ現場見に行って、ちゃんと動いているかとか、スピーディーに動いてる、対応しているかとか、そういうことをご覧いただくといいんじゃないでしょうか。
1F吉田所長 いやいや、それは言ってんだけどね。1つの条件で言うとね、ものすごい線量高いのよ。ここの現場来ない人は分かんないかもしれないけど、もうほんとにチンチンなんですよ。それで、滞在時間短いんで、ちょっと交替で行ってるもんだから。
(略)
[燃料切れの問題]
本店武藤副社長 多分ね、その、余っているところはみんな、人がいなくなっちゃったとこのガソリンスタンドだよ。これ、その、その簡単じゃないかもしれないけど、それが一番近いと思うよ。
(略)
■(略)武藤副社長は、人がいなくなった近くのガソリンスタンドからいただいてくるよう教唆した。

19:10:00

本店高橋フェロー [武藤副社長に向かって]もうドキドキドキ。ずーっとドキドキしてますよ。もう死にそうですよ、もう。やけくそで==。ずっと寝てなくて。

19:23:00

東京電力として、2号機の核燃料が全部露出したのは18時22分であると認定した。その後、2時間でメルトダウンし、さらに2時間で原子炉格納容器が損傷する可能性あるとの認識も共有した。

19:36:00

■2号機のベントラインを完成しないまま従業員が撤退してしまうと、格納容器の圧力上昇をとめるすべはなく、格納容器破損を招いてしまう。必ず退避する前にベントラインを完成しておくよう求めている。
(略)
1F吉田所長 はい、吉田です。
本店武藤副社長 ≪電話≫もう燃料が裸になって==。
1F ==してよ、海水で、海水だけのやつで==

19:39:46

本店 えっと、今の検討状況を申し上げます。一応、いま、あの、えっと、1時間ほど前に退避をすると。その30分前から退避準備をするということを考えています。
(略)
本店高橋フェロー あの、何の?炉心溶融
[炉心溶融1時間前に退避と説明される高橋]

20:02:00

[ようやく燃料が入った消防車が給水再開]
1F吉田所長 水はね、5分位前からどうも入り始めたみたいな感じです。(略)
本店武藤副社長 ではあるが……
(略)
1F吉田所長 ただ、武藤さん、あれですよね、まぁ、こんなタイミングは、どうしましょうかね。


■何かとてつもなく間が悪かったのか、あるいはもう手遅れと判断されたのか、消防車による注水開始を素直に喜んでいる人がいない。

20:05:30

本店勝俣会長 入ったけど、時、遅しか。

20:27:00

本店 いまドライウェルベントは、NISA(保安院)のほうの《ピー音》のほうのは、先方の判断ではなくて東電の責任である分には構わないということで。


保安院もドライベントを容認した。一方で、事実上ドライベントは東電の責任でやれ、という責任を負いたくないお役所らしい指示とも言える。
(略)
オフサイトセンターも撤退を視野に入れ始めている。

20:45:00

1F 歯医者、あははは。何かこういう時に気が抜けるような電話が。はあー。
1F《ピー音》。でもジュージュー、ジュージューいっているかもしれないけど、毎分1000リッター入ってれば、多分それなりに、それなりに崩壊熱には勝ってくれるよね。
本店 分かんないです。あの、どちらかと言うと、圧損の関係で、3号に行っちゃってる量が多いかもしれません。
1F 引き上げる。
1F 多分いま海風だから。

21:22:16

[2号機だけに海水が流れるようにしたことで2号機の炉水位が回復]
1F おーーーー。≪歓声と拍手≫
本店 ポンプの切り替えは終わったという理解でいいんですよね?誰かのお誕生日ですか。
1F はい。ポンプの切り替えというよりは、いまようやく水位が出てきました。
1F おーーーー。≪歓声と拍手≫
本店 やったぁ。
(略)
1F あぁ、よかった。
1F ドライウェル圧力、読んで。
1F まだ、分かんねぇぞ。

22:21:53

[正門前3.2mSV/hという報告]
1F吉田所長 ちょっ、ちょっと待ってくれ!ちょっと待って。あの、聞こえないのと、3テン、ミリシーベルトなの?
(略)
本店武藤副社長 それ、大変だよ。
1F吉田所長 ミリってことはマイクロに直すと3000ってことだろ?
1F 3200μSVです!
1F吉田所長 だろ? だからそう言わないと!あの、超えてるんだろ!15条。
1F保安班 はい!
1F吉田所長 なぁだから、それが先なんだから!15条通報ですって言ってくれよ、だから。
1F保安班 15条つっ……ほうです。
1F吉田所長 10時23分、15条通報、判断!おい、技術!
1F 通報します!
1F吉田所長 だからね、じゅうよっ、重要なデータはそうやって、ちゅっ、注釈つけて言ってよね,
本店武藤副社長 了解。ちょっと、だけど、今までになく高いよね、これ。
1F 59分のデータ。
1F吉田所長 そんなことないですよ。1500とか2000位ありますから。
本店高橋フェロー ええ、この半分位はありましたね。
本店武藤副社長 えっ、1500 ?
1F吉田所長 1500とか2000とかありましたから、全然大丈夫ですよ。
本店高橋フェロー 600とかね。
本店武藤副社長 1500?1500マイクロだろ。
1F吉田所長 ええ。
本店武藤副社長 だけど、いまいくらって言った?
1F吉田所長 だから、1.5とか2ミリ。
本店武藤副社長 1.5だろ。いま、いくらって言ったの?
1F吉田所長 いま3、3って言ってたんだけど。
本店武藤副社長 3だろ?


■毎時3mSVの放射線が観測されたことを、武藤副社長は吉田所長より深刻に受け止めている。
(略)


1F吉田所長 うん、だからまあ、高いんだけど、結構その2000台のやつだって出てますから。
本店武藤副社長 まあ2倍位ってことか、分かった
1F吉田所長 もう全然気にしなくなっちゃった。
本店武藤副社長 15条通報、しっかり。
(略)なんかやっぱり出てるんだよ、だから。
本店 多分、ブローアウトパネルが開いてるんで、そこから出てると思っていて(略)

22:48:33

[吉田所長の燃料交換についての回答に対し]
1F いいと思います。ぜひ、燃料のことについて言えばですが、あらかじめもう用意しといていただきたいと思います。
1F吉田所長 そりゃあね、用意しといてもらえばいいんですって言うだけの人はうらやましいよ。なあ、誰だってそう思うよ。このドタバタの中でさぁ、物資が来ない、運ぶ手段もない、そういう中でギリギリみんなやってんだからさ、そんなきれいごと言ったってできないものはできないんだよ、だから、どうしたらさ、よくできるかとかさ、そういうこと考えて言ってほしいんだよ。
(略)
お願いなんだけど、それはこの少ない所員の中でさ、それをやるって言ったってもう無理よ、もう。普通のプラントじゃなくなったんだから。全社的に変えてやらない限りできませんよ、そんなことは。私に言われてもあれなんだけれども、社長に言ってほしいんだけれど、ぼくは社長に申し上げますけれども。