ジェイムズ・ブラウン闘論集

JBに関する記事を集めた本。

JB論 ジェイムズ・ブラウン闘論集1959-2007 (SPACE SHOWER BOOks)

JB論 ジェイムズ・ブラウン闘論集1959-2007 (SPACE SHOWER BOOks)

ジェイムズ・ブラウンアウト・オブ・サイト(すばらしい)」
66年 ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン紙

 ツアー・メンバーが総勢で何人いるのか、誰もきちんと把握してないようだった。たとえ知っていたとしても、正確な人数を明かすのは裏切り行為になるのではないか、と彼らは懸念しているようだった。(略)ジェイムズ・ブラウンにとって面倒になりかねない発言をすることを恐れていた(「何を調べようとしているんだ? 良いことを探しているのか? それとも悪いことだけを知りたいのか?」)。誰もが彼を信じている。彼こそが、ショウそのものなのである。(略)
 フェイマス・フレイムズの一員であるボビー・ベネットが(略)ミスター・ブラウンの髪の毛にカーラーをつけ、ミスター・ブラウンをドライヤーの下に座らせたところだ。これが、彼の日課である。こうして縮れた髪を伸ばし、丸く大きなミスター・ブラウンのヘアスタイルを作り出すのだ。
(略)
彼は止まらない。歌うことだけでなく、他のことにも挑戦しようとしている。「おそらく徘優業だろうな。次は俳優になるうと思う」
 「俺の地位は、かなり恐ろしいものだ。皆から見られている感じだ。わかるかい? 世界中、黒人にも白人にもね。俺はすべてを背負っているのさ。今のところ、俺は他のどんなヤツらよりも、黒人のために頑張ってる。俺は『ソウル』について語っているんだ。他のことは忘れているよ。たわい無いことだからな。俺は『生きてる』ことについて話しているのさ。『フィーリング』についてな。これがすべてなんだよ」。
(略)
「俺はとことん一匹狼なんだ。わかるかい? 俺はすごく真面目な人間なのさ。俺の言ってること、わかるか? 俺には『たくさんの』問題がある。俺は相当混乱しているよ。それでも、自分の胸にしまっておくしかないんだ。すべてを内に秘めておかなくちゃならない。というのも、俺が心から話せる相手がいないからなんだ。腹を割れないのさ。わかるか?」
(略)
俺の話は『深い』んだよ。でも、ある一定の位置までたどり着くと、振り返り、かつて自分がどこにいるかを見ることができる。しかし、下にいる時、自分がどん底にいる時に、上を見ることはできない。そうだ。俺の話は『とことん』深いのさ。
(略)
[公演終了後]
ダニーは大きな紙を化粧台に広げると、ジェイムズの前に置いた。衣装デザインは八案。王子のようなもの、ナポレオンのようなもの、乗馬服のようなもの、シャーロック・ホームズのようなものがある。「ああ」と、ジェイムズは満足気な声を出し、シャーロック・ホームズのような衣装を指差した。彼はその衣装を非常に気に入り、誰もが最高だと同意した。彼は、ダニーに手渡された生地見本をめくると、この茶色で細身のストレート・スラックスを作ってほしいと言った。「ここからここまでが、ぴったりしていればいい。ここが動く場所だからな。ここで事が起こっているんだ」。一同はジェイムズの発言の意図を理解し、体をよじって腿を叩き、大笑いした。彼らはジェイムズに賛同すべく、彼が掲げた手の平を順番に叩いた。
 これは、公演の私的な世界、ジェイムズ・ブラウンの世界である。温かく友好的かつ親密で、よそ者が入り込めない世界なのだ。独自の言語すら特っている。その言語は高く激しい声で話され、母音が強調され、最高の言葉は息の続くまで伸ばされる。
(略)
誰かに今すぐ何かをして欲しい時、時間を無駄にしたくない時には、こうするんだ」。彼は私の手を取ると、人差し指のみ立てた状態で、握り拳を作らせた。「この指はそのままでな。それから相手にこういうんだ。“ここに来い、riaaiight naaahw(今すぐにな)”って」。(略)
彼は「naaahw(今)」と言いながら、挑戦的な人差し指でテーブルを突いた。「さあ、君もやってみろ!」と彼は言った。「raaight naaahw」。誰もが再び笑った。「わかるか? 彼女はアウト・オブ・サイト(最高)だ。最高だよ」。
(略)
[バンド・リーダーのナット・ジョーンズに「アイ・ゴット・ユー」のイントロ指導]
まずは理想的なイントロ、次にナットのイントロ、そしてまた理想的なイントロを叩くと、ふたつのイントロにどれほど大きな違いがあるかを示した。「ナット、わかったか? お前の演奏では、あまりに簡単なんだ。ビートに合わせてる。自分でもやってみろ。両方試してみろ。俺が間違っているか、確かめてみろよ。ビートの“後”に来なきゃいけない。これが本当のソウルってもんだ」
 イエス。ナット・ジョーンズは理解した。彼は同意したものの、何かに納得していなかった。「ジェイムズ、ソウルって何でしょう?」。彼は真面目に尋ねた。
 「わかるだろ!」ジェイムズは、まるで心を傷つけられたかのような声を上げた。「フィーリングだ」「はい、わかっています。でも、私たちが話していた時のこと、覚えていますか? 二人でソウルについて話しましたよね? ソウルが何かってことを」。彼は私の方を気にしながら言った。
(略)
「これについては、誰もいない時にもう少し話し合いましょう。二人きりの時にね」
「ああ」。ジェイムズは、ナット・ジョーンズが正しいと認めざるを得なかった。彼は私に振り返ると、首を振って残念そうに私に言った。「君のことは気に入っている。わかるだろう。君に対する俺の態度で、それはわかるはずだ。しかし、これについては君にも聞かせられない。わかってくれるか?これは『特別なこと』なんだ。ベイビー、これが俺の『秘密』なんだよ」

「彼は『ブラック・イズ・ビューティフル』の意味を教えているのか?」
68年 二ューヨーク・タイムズ紙

 ブラック・パワーについて語るなら、ジェイムズ・ブラウンを見よ。そう、ジェイムズ・ブラウンアメリカのナンバーワン・ソウル・ブラザーだ。いまだ白人にとっては、ジェイムズは風変わりなリズムでラジオの向こうから呻き声を上げる男に過ぎない。しかし、黒人にとって、彼はボスなのだ――その場で人種暴動を止め、人々を家路につかせ、テレビを見させることのできるアメリカ唯一の男。マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が暗殺された後の悲惨な二日間で、彼はその奇跡を二度も起こした。
 奇跡はボストンから始まった。ブラウンはボストン・ガーデンズで公演をする予定だった。彼は悲報を聞き、公演を中止。すると、市長から救援要請の電話を受けた。状況は深刻だった。既に人々は通りに出ると、略奪と放火に手を染めていたのだ。流行に敏い黒人政治家が、市長に進言した。「ジェイムズ・ブラウンをテレビに出してください」。こうして発表がなされた。今夜。テレビ。JB。これで十分だった。誰もが踵を返し、家路へと向かった。「ザ・マン」を見る機会を逃すなどありえない。その夜、ブラウンはテレビに出演すると、歌い踊り続けた。六時間ものあいだ、彼は人々を魅了し続けた。限界まで体を揺らし、声を上げた。(略)ショウが終わると、誰も街頭に戻ろうとするもなどいなかった。街は救われたのだ。
 翌日は、ワシントン市長が電話をかけた。同じ番号に。「街を救ってくれ」。ブラウンは路上に飛び出すと、略奪している少年の集団をつかまえた。一人前の男同士として彼らと話すと、厳格なおじのごとく、彼らを家に送り返した。その夜、テレビに出演した彼が、タキシード姿でパフォーマンスすることはなかった。ジェイムズ・ブラウンは一人の男として、苦痛の表情を浮かべてその場に立ち、アメリカの証人となった。「ここは世界最高の国だ」と彼はかすれた声で話した。「それを壊そうとするなんて、正気の沙汰じゃない。ここまで頑張ってきたんだ。努力を無駄にするわけにはいかない。尊厳を持って闘え」。翌日、ワシントンは落ち着きを取り戻した。ジェイムズ・ブラウンホワイトハウスに招かれ、大統領と夕食をした時、彼の座席札には「国を思う君の行いに感謝する――リンドン・B・ジョンソン」と書かれていた。それがなぜであるかは、これらの逸話で説明がつくだろう。

ジェイムズ・ブラウンは、ソウルを売る」
68年 マイアミ・ヘラルド紙

「ソウルっていうのは、あらゆる努力をしても、二番になってしまうことだ。ソウルっていうのは、週に百ドル稼いでも、生活するのに百十ドルかかるってこと。ソウルっていうのは、他のヤツらの重荷も背負い込むこと。ソウルっていうのは、黒人だからって理由で、無価値な人間になることだ」
(略)
 「俺が手に入れたものの大半は、みんなが見て喜んでくれるものだ」と彼は言う。「ロールス・ロイスを持ってる黒人男なんて、滅多に見ないからな。俺は欲しいものなら、何でも手に入れる。同胞たちはそれを喜んでくれるのさ。彼らは『俺たちには買えないかもしれない。でも、ソウル・ブラザーは手に入れてる。ってことは、不可能じゃないんだ』って言ってるよ」
 これが、ジェイムズ・ブラウンのソウルというブランドだ。荒れ狂う動きと平凡な歌詞の下には、メッセージがある。「俺にはソウルがある。君にもソウルがある。俺が成功したんだ。君だって成功できる。俺のように頑張ってみろよ」
 これは、黒人向けに形を変えたプロテスタントの倫理だ。
 ブラウンは語る。「信頼と信用なのさ。ジェイムズ・ブラウンは、ひとかどの人物だ。彼らはジェイムズ・ブラウンを信じている。ジェイムズ・ブラウンは、決して同胞に背を向けたりしない」
(略)
 JBE(ジェイムズ・ブラウン・エンタープライゼズ)はビジネスだ。だからこそ、ビジネスとして運営される。帝は自分の部下を「ミスター」と呼び、部下には自身を「ミスター・ブラウン」と呼ぶよう要求している。彼の下で働く者たちは、企業イメージを大切にするよう釘を刺され、ブラウンは、罵り言葉、飲酒、だらしのない身なりに対し重い罰金を科している。
(略)
[青少年センター建設のための募全活動をしている三人の黒人少年]
代表者:僕たち、何かをすべき時だと思ったんです。僕たちの両親は何もしなかった。
ブラウン:わかるよ。俺もブラック・マンだからな。俺の両親も何もしなかった。親父は怖気づいていたのさ。「くそっ、困った」なんて言っていたが、俺は親父に言ったよ。「だから何なんだ」ってね。俺は二十年間、それを耳にしてきた。俺たちは、行動を起こさなきゃならないんだ。
 少年たちは王に対し、その晩の公演で募金を促す発言をしてほしい、と丁重に持ちかけた。ブラウンは応えた。「任せておけ。俺も黒人だ。喜んで協力しよう」
 ジェイムズ・ブラウンが、募金について発言することはなかった。
 もちろん、彼は忘れただけだろう。
(略)
彼は、「ドント・ビー・ア・ドロップアウト」という曲を録音した。黒人の子供たちの励みとなりたい、というのが表向きの理由だったが、彼は百万人以上の黒人が一ドルを支払い、このレコードを買うことを知っていた。また、彼は「ステイ・イン・スクール(中退するな)」というバッジを自費で何千個も作ると、公演会場で無料配布した。しかし、その一方で「ジェイムズ・ブラウン公式パンフレット」を一部で一ドル五十セントを売り出していた。

ジェイムズ・ブラウン:“サ・マン”対“ニグロたち”」
70年 ローリング・ストーン紙

 「俺は、音楽を使って、映画とテレビに進出する」と彼は続けた。「三月には、ディック・クラークと手を組み、自伝映画の撮影を始める。サウンドトラックをはじめ、俺がすべての権利を持ち、全面的に仕切っているのさ」。ジェイム・“ザ・マン”・ブラウン物語だ。
 テレビに関して――「俺は長い間、テレビから締め出されてきた。というのも、俺が男らしさを求めたからだ。彼らは、スポンサーを失うことを恐れた。しかし、今や俺は、一週間に五日、好きな時に自分の番組を持てるようになった。だが、そんなことはしないぜ。露出過多になるからな。それでも、特別番組はやるつもりだ。そしておそらく、週に一度、冠番組をやることになるだろう。俺は、この国のために多くのことができるだろう。人々をまとめ上げることができるはずさ」
(略)
彼は既に、マイク・ダグラスの番組で、レスリー・アガムスとロバート・フックスを「白人になりたくて」仕方のない「ニグロ」と呼んでいた。この発言の結果生じた混乱で、FCC(連邦通信委員会)はブラウンを援護した。
 「ヤツらは、俺を援護する必要などなかった。俺が正しかったんだから」
 ブラウンは、自身よりも先にハリウッド入りした黒人の大物エンターテイナーの大半を、あからさまに軽蔑している。彼らは、黒人が白人と同じようにヒット・アルバムを作り、映画やテレビの特別番組、さらにはヴァラエティ・ショウで主役を演じられることを証明していた。しかしブラウンは、彼らの誰一人として、人種的な理解の向上を促してはいないと感じている。堂々たる、ありのままの黒人らしさをビジネスにもたらしてはいない、と感じているのだ。
 ブラウンは楽屋で話しながら、ブラック・ハリウッドに対してさらなる批判を展開した。「ロバート・フックス、シドニー・ポワチエ、サミー・デイヴィス・ジュニア、ビル・コズビー、レスリー・アガムス、ダイアン・キャロル――ヤツらは全員ニグロだ。彼らは、黒人であることを恥じている。白人になろうとしているんだ。国のために一肌脱ぐ機会があるっていうのに、何もやろうとしない。なぜ俺が、白人を攻撃する前に、ヤツらのようなニグロを攻撃するかって? ヤツらは俺の敵だからさ」
 ブラウンは、自分がハリウッド進出を果たすことで、真の黒人らしい、新種の映画スターを生む土壌が作られると信じている。
 「俺は自伝映画で、自分自身を演じる。他の役柄も、全部その本人が演じる。
(略)
この日のコンサートで、観客を最も盛り上げたのは、彼のこの発言だ。「俺は国のために闘う。しかし、国が俺に権利を与えてくれなければ、俺は国と闘う」。

明日につづく。