ロックンロールが降ってきた日2

最後の4人のとこだけ読んだ。

早川義夫(聞き手:松村雄策

ドアーズ

ジャックスは「日本のドアーズだ」みたいな言い方をされたことがあるけど、僕はドアーズって聴いたことがないんだよ。有名な曲ぐらいは、もしかしたら、聴こえて来ていたのかもしれないけど、聴いてない。だからこれを真似ようとか、これに影響を受けようというのはなかった。
(略)
 「からっぽの世界」や「マリアンヌ」のような曲はどうやって出来たのかというと、自然に出来てしまったというか。あるいは、元からあったというか、身体の中に。作るんじゃなくて、生まれるまで待っていたような気がする。一番簡単に押さえられるEマイナーをポロポロ弾いて、今の気持ちを表そうとしたら、「僕……♪」って、出てきたような。

解散

だから僕は「文句があるなら辞めよう。今日、辞めましょう」って言ったの。そしたら、「そんなこと言わずに、記念に二枚めを作ろうよ」って言い出されて、そこでまた妥協したのが僕の間違いだった。二枚めを厭々作った。後悔したな。今、思い出しても厭だね。どうでもいいことは妥協してもいいけれど、肝心なことは妥協しない方がいいよね。
 ジャックスの話をなぜしたくないかっていうとね、そういう解散したときの厭な会話を思い出すんだ。

かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう

かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう

 

ソロ

 俺、会社の人間だから、なるべく経費を抑えた方がいいなと思って、一人で作ったの。ピアノだけで。なるべく録音時間も短くして。なぜ、あの『かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう』が歌謡曲っぽいかというとね、69年っていうと、例えば、ボブ・ディランエレキギターに変わったりして、徐々に、フォークソングをやっていた人たちが、ロックっぽくなって行くんだよね。岡林(信康)君なんかも、エレキギターを持ったりした時代で。その雰囲気が胡散臭く思えたのかな。みんながロック志向になって行く中で、「なんか違うぞ。森進一や北原ミレイの方がロックだぞ」って思ってたの。

はっぴいえんど

初めて新宿の御苑スタジオで、はっぴいえんどと岡林君が練習するとき、岡林君が忙しくて時間に来れないので、僕が代わりに岡林君の仮歌を歌ったの。「ラブ・ゼネレーション」とか「堕天使ロック」を。はっぴいえんどに演奏してもらって。歌いやすかったなー(笑)。「なんてまあ、上手なバンドでしょう!」って思った(笑)。それを聴いていたのが鈴木慶一

佐久間正英が「わがまま、神経質」と評した件

コントロールルームから、助手の人が「はい、テープ回りました」とか言うでしょ。すると僕はね、「テープ回りましたっていう声、やめてください」って言うの。どうしてかっていうと、その声が歌の感情と全然違うから。「テープを回しといてもらって、歌いたくなったら歌いますから」って言ったからかな。
 それと、だいたい、ドラムの人って明るい人が多いでしょ。ニコニコ顔で「ワン・ツー・スリー!」ってやられると、「これは悲しい曲なんだから、笑顔はダメ」みたいな、心の中で思ってた。だから、イントロは俺のピアノから、テンポも俺が決める、みたいな。そんな感じだったね。多分、佐久間さんの周りにはそういうことを言うミュージシャンが今までいなかったんだろうね。

大木温之(ザ・ピーズ)

最初はキャロルのコピー

ビートルズの影響を凄く受けちゃった矢沢永ちゃんのおかげでね、俺もコードが変な方向に行かなかった。もしも永ちゃんストーンズの方に行ってたら、もっと俺、コードとか少なかったと思うんだよね。ストーンズ、ちょっとブルースに行くからさ。ビートルズがわりとモータウンっぽいさ、柔らかい、マイルドな曲を作るかわりに、ストーンズはゴリゴリなセブンスを強調するようなブルースの方に行ってたから。永ちゃんのセッションになると「ゴー・ジョニー・ゴーゴー♪」ってみんなスリーコードばっかりやるけど、永ちゃんはもっと奥深いよ、コードいっぱい知ってるよって言いたくなるね。リーゼントとかにしてツッパってるようなイメージあるけど、本当は家でね、いろんなマイナーなコードとか勉強して、東京に出て来た人だよってね。なんか秀才な感じしたね、永ちゃんは。ツッパリのシンボルじゃなくて、とてもこの人は努力して来た人なんだろうなって。先生だよね。それがツッパリの仮面を被ってくれてるんだから、それは売れるよ。もう大ヒーローだよね、俺にとっては。

二年連続かな、武道館、観に行ってるんだけど。ヤートラで行ってるんだもん。みんなでドカン履いて、頭はパンチパーマで、すっげぇカッコ悪いの。なんか、アロハみたいなの着ちゃって。四人ぐらいで。もう千葉の田舎からさ。AC/DCだかレインボーだか、どっちだかを観に行ったね。そんで、さすがに東京のお客さんも怒っちゃって。「いい加減にしろ」って、二階から俺たち目がけて爆竹が降って来た。それでライブが終わってから大喧嘩になって。多分、ジージャンの軍団と喧嘩になって。お互いのへッド同士のタイマンで、もう一瞬でやられちゃったからね、俺たち。(略)
パンチ見えなかった。一瞬で俺たちのリーダーが、鼻折られちゃって。鼻血、ピューとかなって。

The Clash - Stay Free

ミック・ジョーンズが歌ってる「ステイ・フリー」は凄く優しい。あんまり歌も上手じゃないし声量もそんなにないんだろうなっていう、明らかにへなへなした歌い方なんだけど、凄く優しいコードの使い方で、曲がもう大好きでね。(略)
 そうやって凄くミック・ジョーンズが大好きになっちゃって。クラッシュの写真集買うんだけど……(略)文房具屋さんでミック・ジョーンズの写真だけコピーして、鞄に入れてたり下敷きに挟んでたりとか、財布に糊で貼ってたりとか。

 いろんな引き出しはあったけど、上手く三分ぐらいの曲に全部まとめた。コンパクトなパンク・ロックンロールナンバーにした。あんまりクールスとかキャロルみたいなべ夕なロックンロールみたいに動かないようにして。ベースラインはなるべく無理して棒弾きにしてみたりとか。ちょっとジャムみたいに動いてみたりとか。ベースの動き方は、上手くやりましたよ。一曲ずつ「この曲はこのイントロのここだけが美味しいんだ」とか、どの曲も美味しい部分を一つ必ず付けるようにして
(略)
今でもそうだけど。必ず引っかかるメロディがちゃんと入ってるような曲を作ろうとしてた。うん。なるべく曲だけで勝負したいなぁって。自分がファッションから入ってないから。耳から入ってるから。コピーおたくだから。曲だけで勝負できるようなバンドがいいなあ。うん。ルックスとか見られるのは嫌だったね。

 バンド始めた頃にね(略)ヘタウマが流行る時代が来ちゃって。ミルクシェイクスとかヘッドコーティーズとか。あとコックニー・リジェクツっていうパンクバンドも全部ヘタウマなの。(略)
あんまり洗練された音楽よりも、そういうヘタウマの方に魅力を感じてしまった。
 俺、せっかく千葉で揃えた三人、アビさんもギター上手いし、アビさんが呼んで来たドラムもめちゃくちゃ上手いメンバーだったのに(略)
[やっとデビューできたのに]
バカバカしいのやりたいってなって。トイ・ドールズも流行ってたし。笑える方がいいよって。もう笑っちゃいたいなぁって。それでデビューして、素人のウガンダ(二代目ドラム)入れちゃうぐらいだから。音符もギター全部スカスカ。スカスカでいいよっていうふうになって行っちゃう。俺にとっちゃドクター・フィールグッドもそう聴こえたんだよね。8ビートが凄くはっきりしてて、音符がわかりやすくて、ベースが凄くコピーしやすくて。マスヒロ(初代ドラム)には悪いことした。もういらないんだって感じになっちゃったの。「君は音符が多すぎるんだ」って。なんかマスヒロのドラムに付き合うのは、ベース弾きとして、俺じゃ絶対無理だと思って。もうウガンダでいいやって。

憎いあの娘 キャロル
(「チョウ!」に注目w)

 俺、結局、ロックンロールが降ってきたのいつなんだよ?「チョウ!」だろ?「チョウ!」なんだよ。「憎いあの娘」。「憎いあの娘」から結局、バンドをやることになっちゃってんだよなぁ。

吉井和哉デヴィッド・ボウイ

デヴィッド・ボウイのファンの方には多分怒られると思うんだけど……。僕はボウイが大好きだから、あえて言うけど、今のところの結論なんですけど、この人ってロックンローラーじゃないんだよね、自分の中で。まあ、極端に言っちゃえばコロッケさんみたいな人なんだよね、ちょっと(笑)。
(略)
なんか凄いロックファンなんだと思うんだよね。(略)だから愛しいんだよ。ミック・ジャガーになりたいとか、イギー・ポップになりたいとか、ルー・リードになりたいとか、パントマイムの人になりたいとか。
(略)ちょっと他のロッカーとは違うんだよ。役者という部分もあるし。演技もできるし。(略)
なんか、モノマネも凄い上手いみたいですね、この人。ボブ・ディランの真似とか、マーク・ボランの真似とか。だからそういう、結構ひょうきんな、やんちゃな部分を元々持ってる人だと思うんだよね。
 でも、本人も言ってるかわかんないけど、「ジギー」っていうキャラクターを作って、そのロックスターになっていくうちに、ちょっとドラッグの影響もあったり、そういうカルチャーの影響もあって、どんどん鬱になっていったり、本当にロックスターみたいになっていっちゃった。宇宙人みたいになっていっちゃった、みたいな。(略)
[自分もいわゆるロック・ミュージシャンではなかったので]
おこがましいけど、このスタイルだったらちょっと自分もなんかできるんじゃないかなって、凄い自信をくれた人なんですよね。
(略)
だから僕もデヴィッド・ボウイの真似、凄いしましたよ。もう、超しました。