スティーブ・ジョブズ1995ロスト・インタビュー

1995年TV番組のために応じたインタビュー。取材テープが長らく紛失していたため「ロスト・インタビュー」と呼ばれていたが、ジョブズの死後発見された。分量90ページの翻訳+残り半分は見開きで英文と対訳という体裁。時期はアップルを追放されてNeXTをやっている頃、二年後にアップルに復帰する。

ロスト・インタビュー スティーブ・ジョブズ 1995

ロスト・インタビュー スティーブ・ジョブズ 1995

 
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定番ブルーボックス話

全部デジタルだった。調節する必要はなかったから、公衆電話から幹線でホワイト・プレインズヘ行って、衛星でヨーロッパとトルコをまわって、それからケーブルでアトランタに帰ってくることもできた。世界一周してしまうんだ。地球を5回でも6回でもまわれる。衛星回線に乗ったりするためのコードなんかが全部わかっていたからね。
 それに、隣の公衆電話にかけて大声を出すと、1分ほど経ってから、かけた先の受話器からその声が聞こえるんだ。魔法みたいだったよ。どこがおもしろいんだって言われるかもしれないけれどね。若かったんだ。
(略)
たいして何も知らない私たちが作った小さなものが、巨大なものをコントロールできると学んだ。あれは貴重なレッスンだったよ。
(略)
[ウォズニアックがキッシンジャーの真似をしてバチカンにかけ]
バチカンの人たちがほんとうに法王を起こしに行った時、私たちはとうとう噴き出して、それでヘンリー・キッシンジャーじゃないということがばれたんだ。そうさ。だから実際に法王と話をしたわけじゃなかったけれど、あれは傑作だったよ。

ファック!「そういう決まり」

ビジネスの経験を通して気づいたのは、「どうしてこんなやり方をするんだ?」と訊くと、「そういうふうにやるものと決まってるんだ」という答えが必ず返ってくるということ。どうしてそうするのか、その理由を知っている人間は誰もいない。
(略)
[標準原価って何のためと訊いても「そういう決まり」と言われるだけ。調べてみると、コストの把握ができてないから見積もりを立てて後で修正してるだけだった]
情報システムがしっかりしていないせいなんだ。でも、誰もそんなふうには言わなかった。だから、のちにマッキントッシュの自動生産工場を設計した時には、こういった時代遅れの概念をかなり取り払って、何を作るのにいくらコストがかかるかを正確に把握できたんだ。

プログラミング

[周波数値を出すとか]そんな作業に使っていたわけだけれど、それよりもはるかに重要なのは、実用的に使うことなんかじゃなかったんだ。思考プロセスの鏡として、コンピュータを使うということだった。考え方を学ぶこと。それがプログラミングを学ぶ最大の価値だろう。

おのれ、スカリーめ

 市場を独占していれば、それ以上の成功なんてありえない。だから会社をさらに成功させるのは営業やマーケティング部門の人間であり、結局、彼らが会社の舵を取ることになって、製造部門の人間は意思決定のプロセスから弾き出されてしまうんだ。そして企業は優れた製品を作ることの意味を忘れる。市場を独占するまでに会社を押し上げてくれた、製品に対する感性や先進的な製品を生み出す才能が、製品の良し悪しという概念がない経営陣によって無下にされてしまうんだ。

会社は勘違いするんだ。大きくなり始めると、誰もが最初の成功を再現したいと思う。そして、成功したのはプロセスに何か魔法が潜んでいると考える人間が多い。だから全社的にプロセスを統一しようとするんだ。
 ほどなくして、プロセスこそがコンテンツだと、みんな勘違いするようになる。これこそIBMが転落した究極の原因だよ。

マイクロソフト

 唯一の問題は、マイクロソフトが美意識に欠けていることだ。完全に欠けている。
(略)
彼らが成功したのはかまわない。大半が彼ら自身の努力の結果なんだしね。私が気に入らないのは、マイクロソフトが作っている製品が三流品だという事実なんだ。マイクロソフトの製品には魂がない。人にひらめきを与えるスピリットがない。じつに凡庸だと思う。

ヒッピーとは何か

私はあの頃に青春時代を過ごしたから、いろんなことを目の当たりにした。(略)
 あの時のきらめきが、日常生活で目にする以上のものの存在に気づかせてくれた。仕事や家庭、ガレージに車が2台あることやキャリア以上の何かが、人生にはあるんだということをね。普段あまり話題にしないコインの裏側が存在していて、裂け目が生まれた時にだけ経験できるんだ。無秩序や不完全が存在している時、裂け目のようなものがある時、何かが噴き出してきて、経験するんだ。

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