「仮面ライダー」プロデューサー自伝

東映TV特撮プロデューサー平山亨自伝。

青山学院に一年在籍チャペル礼拝を体験、信仰について考える

仮面ライダー』でショッカーの構成員が必要以上にストイックなのは当時の影響だ。

大人のリアリズムはいらない

[助監督時代]「あの白馬はどこから来たんですか。黒頭巾が降りたら後はどうなるんですか」とかくだらない質問してね。『怪傑黒頭巾』は娯楽作品なんだから、塀を飛び越えたら白馬が待っているでいいんだよ。(略)そんな都合よく白馬がいるわけがないとか大人のリアリズムを持ち込んだら作品が成立しない。私にもそんな屁理屈ばかり口にした情けない時代があったんだ。

↑(うーむ、平成ライダープロデューサーに聞かせてやりたいと個人的感想)
ちなみに平山さんの見解はこれ。

「僕がプロデュースした『仮面ライダー』のファンに、『平成版仮面ライダー』を仮面ライダーとして認めようとしない子がいるんだ。そんなことを言わずに寛容に観ればいいのに」

八手三郎

電話があったときの常套句「やってますよ」をもとに、テレビ用のペンネームは八手三郎(やつでさぶろう)とした。

昭和40年斜陽になった映画からテレビ部門に。新米プロデューサーに残されていたのは子供向け特撮。

勝手に作品をいじられるのは嫌だという原作者が多いが、水木先生は逆に漫画をそのままテレビにしても失敗するとおっしゃり、「連続ドラマの形にしないで、毎回違う敵をやっつける1話完結のほうがいいんじゃないですか」とまで勧めてくれた。

泣ける話

潮健児さんが亡くなるときは病院で金子光伸くんが立ち会ったそうだ。潮さんは彼のことを「みっちゃん」と呼んで可愛がっていたから、金子くんに見送られて嬉しかったと思う。

合成予算は5カットまで、撃つと当るで2カット必要なため、2発撃てば終わり。仕方ないので、合成は打つほうだけにし、当るほうは火薬で誤魔化した。
植田泰治が東大独文だからシュピーゲル号とかバンデル星人に。

白土三平の一大テーマ差別反対を削って娯楽に徹した映画版『ワタリ』、試写会で白土が「私の原作をただの娯楽作品にした。絶対に上映させないと」大激怒。どうにかなだめるもテレビ化はダメとなった。既に枠は決まっていたので横山光輝を頼る。スポンサーの三洋電機カラーテレビに合わせ赤青白に。

特攻心中ラストを嫌った植田泰治が帰還したロボが遊園地の遊具になる案を出すが、著者がヒーローの末路が雨ざらしではと反対。視聴率もよかったのに2クールで終了したのは大赤字のあまり東映トップがNETに打ち切りを申し入れたため。

  • 仮面ライダー

  • 特撮予算節約のために、変身ベルトのピカピカはスタッフがフィルムに描いた。光線出すと金がかかるので、バッタだしキックにしようということに。
  • 市川森一

企画段階から関わっていたが義理のある円谷から「帰ってきた〜」で呼ばれ離脱。「仮面ライダーは人間の自由の為にショッカーと戦うのだ!」というオープニングナレーションは市川案。

  • 怪人の声

声優さんが即興で「アバラバ〜」とやってた

  • 戦闘員の「イー!」

あれこれ一時間以上試行錯誤、大野剣友会若手が「いい加減にしろ」ってカンジで「イー!」と叫んだ。

  • 戦闘員マスク

同じ奴を使いまわしてもマスクならバレないと折田至監督が提案。

  • 残心

第一話殺陣も担当していた剣友会創始者大野幸太郎が蜘蛛男を倒しても心が晴れない悲しみを残心の形でアクションに込めろと指導

撮影ストレスのためか愛馬ハヤブサオーが途中で死亡、替わった馬も疲労死、以後乗馬シーンはカット。

「ちょっと涙っぽいというかラブロマンスの入った」アクションをやりたいと話したら一時間ほどでキャラを完成。サイドカーはヒロインを乗せて旅する2人の道行き用。

ピンクレンジャーでは理屈っぽく面白くないと悩んでいたら、小牧りさの太股が浮かび、モモに。

  • ゴレンジャーのマント

最初は長かったが撮影会でバーディーから熱噴射したらマントが燃え出したので、以後短めに。

  • 戦闘員の「ホイ」

大野剣友会がその場の雰囲気で発案。

みな「いい加減な本」というが、それがなぜ当たるか、監督が刺激されて書かれてない部分を膨らませるからでは。原稿運びをしていた浦沢義雄はこれなら自分でも書けると思ったらしい。

[フィルム運びだった]伊上さんも、浦沢くんも不思議な育ちかた。きちんと映画学校で習ったら、あんな脚本書けない。

ライダーちょっといい話

[「仮面ライダー復活祭」でファンから懇願された石森が]
「よし、君たちのために10番目の仮面ライダーのキャラクターを作ってやろう」。私は慌てて「待ってください。この子たちは素人なんです。せいぜいガリ版印刷した同人誌です。いくら何でも先生のキャラクターは載せられませんよ」「いいじゃないか」。
 気の早いファンが、講談社のテレビマガジン編集部に、石森先生がキャラクターを作ってくれると連絡。田中利雄編集長は「良く知らせてくれた」と、渡邊亮徳さんと毎日放送に電話をしてしまった。
 みんなが、その気になり、前代未聞。テレビマガジン編集部は、口絵用の撮影会の調子でできるだろうと思っている。恥ずかしくないキャラクターを作るのは大変なんだ。何十万円もかかる。怪人も要る。中身の人も要る。お金の計算をすると、途方にくれてしまう。
 そしたら、レインボー造型の前沢範社長が「いいですよ。ZXと怪人、1体ずつは作ってあげます。お金、要りません」。次が、事業部。「困っているんだって。ウチは仮面ライダーのショーで食っているんだから、ZXを入れてくれれば、ウチもお金出すよ」。
 そのうちに、日本コロムビアが音楽を作ってくる。ここまでいくと不思議だった。