誤認逮捕された大学生の「楽しそうな小学生を見て、自分にない生き生きとしたものを感じ、困らせてやろうと思った」という警察作文に痺れたので、どのような過程であのようなものが作成されるのだろうかと。
女房が海で溺れている
放火容疑で逮捕されたT氏が虚偽自白に至った、警察の最後の殺し文句がなんか詩的でワロタ
「お前がしゃべらないと女房の調べがきつくなる。逮捕することになるだろう(略)
女房が海で溺れている。お前には助けられない。しゃべれば、警察が船を出してやる。女房を見殺しにすんのか」
さて、いよいよ警察作文の開始です
西森は、急に優しくなり、タバコを吸わせ、火まで着けてくれた。そして「どうやったのか」と聞いてきた。
しかしTは、実際にどのように放火がなされたのか、わからないので話ができなかった。
つづいて「どこに火をつけた」と問われたが、考え込むばかりで答えられなかった。
すると鈴木は、
「この日はペットショップは休みで一階のシャッターは鍵が閉まっている。誰も入れない」
といった。ヒントが与えられたようだった。
Tは、またしばらく考え、こう答えた。
「ペットショップ二階です」
(略)
「最初から話してくれ」というので、Tは
「寝ていたところトイレに行きたくなり、タバコを吸いながらトイレに立つとペットショップのドアが開いていた」
と述べた。実際に午前11時ころに一度トイレに立ったことがあったからだ。ペットショップのドアが本当に開いていたかどうかは知らなかった。
「部屋に入ったらどんなにおいがした」
「犬、猫の小便のにおいがした」
「ほかにも何かにおっただろう。よく思い出して考えろ」
「石油のにおいがした」
実際に廊下が石油くさかったからだ。
つぎに西森にペットショップの部屋の配置について聞かれた。
「わかりません」
「左側に何があった」と西森が聞いたので、Tは適当に答えた。
「壁です」
「壁じゃなくて、Tの家と同じ造りだ」
と西森はいったので、きっと押入のことを言っているのだと思い、
「押入」と答えた。
西森は、「押入の扉は閉まっていたか」と聞いてきた。
「閉まっていた」
ふつうは閉まっていると思ったからだ。
すると左右どちらに開けたのかを聞かれたのでTは、「左に開けた」と答えた。
「押入のなかに何かあった」と聞かれたが、「わかりません」と答えると、西森はヒントを与えてきた。
「石油臭かったんだろう。石油は何に入っている」
Tは「ポリタンク」と答えると、西森はつづけてこういった。
「ポリタンクはどんな色か」
「オレンジ色です」と答えると、西森はこう声を上げて迫った。
「ポリタンクは赤か白かだ」
「赤です」
そう答えると西森はつづけて、Tを問いつめた。
「ポリタンクをどうした」
「ふたを開けなきゃ石油は出ねえぞ」
「ポリタンクを押入の外の床に出したとき、ふたを開け、そのときポリタンクが倒れ、吸っていたタバコの火が落ち、火が着いた」
Tはそう述べたが、ここで西森は
「タバコじゃあ火が着かない」
といった。
しばらく問答がつづいたが「実験してくる」と言って西森は取調べ室を出て行った。
鈴木巡査部長はこう切りだした。
「お前の話は寿司屋へ行って、味噌ラーメンを食ったと言う話だ。それで、あそこの寿司屋の味噌ラーメンはうまいと言っている話だ。寿司屋に行ったら、寿司食うんだ。わかるだろう」
鈴木は紙を床に置き、紙を蛇腹状に折り曲げてタバコの火を上に置く実験をし、
「やはりつかないだろう」
といった。
すると実験から戻ってきた西森が「成果」をTに告げた。
「タバコを30本試したが、タバコでは火が着かない」
「生火じゃねえと着かないんだ」
Tは「生火って何ですか」と聞くと、
「裸火のことだ」と述べ、西森はTに
「T、タバコを吸うときはどうするんだ」と聞いてきた。
ライターで火を点けると思い、
「100円ライターで火を点けた」
と述べた。
このようにして、
「起きてトイレに行くとペットショップの二階のドアが開いていました。ペットショップの二階の押入の引き戸を左の方に開けると赤いポリタンクがありました。そこでむしゃくしゃしていたので放火をしようと思いました。ポリタンクを取り出して押入の床に倒しました。ドクドクと石油が流れました。新聞紙に100円ライターで火をつけ、着火させました」
という白白調書がつくられた。さらに同じ内容の「上申書」二通を自筆で書かされた。
警察官による偽証依頼
75年、タクシー運転手の堀川氏は、春日町の交差点で警察官に免許証の提示を求められ、すぐに提示しなかったところ、公務執行妨害罪をでっち上げられて逮捕、起訴された。一審で、堀川氏が警察官に暴行をしているのを見たと証言する「目撃者」があらわれ有罪となった。その後、警察官が、まったく面識がないと述べていた「目撃者」は高校の同級生でクラスもいっしょだったことが判明した。そして「目撃者」の勤務先の同僚が、「警察官から、タクシーの運転手から殴られたことを証言してくれ、と頼まれた」と聞いた、友達に頼まれて嘘をつくんだなと感じた、と証言し、控訴審で無罪となった。判決に関わらず警察官は昇進した