1993年の女子プロレス

リアルな不和をアングルに持ち込み、速い流れでトップを交代させる全女。肩を叩かれたトップは嫉妬と苛立ちから後輩をイジメ、イジメあかんと思った後輩がトップになるとやはりそのプレッシャーから後輩をイジメ…。ブーム終わったと思ったらクラッシュキターで、いつか神風が吹くと、いい加減(おおらか?)な経営者松永兄弟。

1993年の女子プロレス (双葉文庫)

1993年の女子プロレス (双葉文庫)

上から肩叩きされて荒れてたデビル雅美に散々いじめられたブル達だったが、いざ自分がトップになると

[伊藤薫バット吉永に会うたび]
たぶん、悪気があって「コイツをイジメてやろう」とか、ヘンな気持ちがあったら覚えていると思うんですけど、本当に仕事のことでいっぱいいっぱいで、その場でパッパッパッパッと忘れていってしまうんですよ。だけど、やられたほうは全部覚えているみたいで(苦笑)。(略)バットは「あのとき、こういうふうに言われた」とか「こういうふうに殴られた」とか全部覚えていて。このあいだ会ったときも散々チクチク言われて、「ウソ〜っ!?」とか言ってごまかしましたけどね(笑)。(略)私はデビルさんみたいな先輩ではなかったんじゃないか、と(略)自分のエゴとか、ジェラシーで後輩をぶちのめしたってことはなかったですね。

クラッシュ・ギャルズからしたら北斗、堀田を上にあげさせたくないんです。(略)堀田は長与千種のモロ子分じゃないですか。だから可愛いはずなんですよ。彼女の魅力では絶対に自分を追い越せないとわかっていた。でも、北斗は自分を追い越すとわかってたと思うんです。(略)堀田はチコさんの下で、北斗はトモさん(ライオネス飛鳥)の下で。(略)私も、北斗が入ったときから「これは絶対に来るな」と思ってましたし。
[ヒール以前の北斗にはスター要素ゼロなんですけどの問いに]
首投げ一発にしても違うんですよ。井上京子にも同じことが言えるんですけど。京子も入ったときから「絶対に来る!」と思ってましたから。

アジャとの決別

[アジャが男子プロレスから連れて来た]客は全部こっちがもらおう[そう思うも会社は完全にアジャプッシュに方針転換](略)自分とアジャをケンカさせるように持っていってたんで(略)ホント、掌を返すぐらい方針を変える。そうすると、私が反発するのがわかってるんですよ。そのへんはうまかったですね。冷静になって考えると、いままでもそうしてきたんだろうな、と。(会社に)泳がされてる感じですよね(笑)

[金網から飛び降りる直前よろけたのは、客を沸かせるために、わざとやった]
[シュートは強かったという話から、新人王を獲ったらドラマ『輝きたいの』に出演予定話に]

試合当日、会長たちに「おまえ、まさか勝っちゃうんじゃないだろうな?」って言われて。「え、勝っちゃいけないのかな?」と思いながら、勝ちましたけど(微笑)。でもドラマに出たのはゴンゴン(小倉由美)だった(笑)。「プロレスってこんなもんなんだ……」って。

ヒールのブルが全女トップに

でも誰も違和感は持たなかったですね。「この人しかいないでしょ」という感じです。あの当時、中野さんに太刀打ちできる人は誰もいなかった。

同期で一番注目されていた工藤めぐみがなぜ伸び悩んだか

[精神的に]強いか弱いかというよりも、単純に合わなかったんじゃないですかね(略)その後、復活してやってるのを見ると、プロレスが合わないわけではないんで。だから全女っていうところと合わなかったんじゃないですかね。まあ、全女が合う人間のほうが少ないとは思いますけど(略)何も考えてない人間じゃないとあそこにはいられないです。深くものごとを考えるような人間は無理。すべてがいい加減な会社なので。(略)[どんなとこがとの問いに]「神風吹くぞ」と本気で思ってるところとか(笑)。すべてにおいて「なんとかなるだろう」っていう他力本願な会社なんです(笑)。

イジメ

六人タッグとかだと、「今日はアイツ一人をやろう」とかって決められて、ボッコボコにされるんですよ。お客さんがいるのに。ホントにイジメられて、そのコが立てないぐらいやるとか。で、「もういいや」みたいな。あとはふつうに試合が始まる。だから、流れとかはまったく関係ないんです。

先輩のイジメや嫉妬で首を折られた北斗なのに、デンジャラス・クィーンになる以前は後輩に押され居場所がなくなり、やさぐれて「自分さえよければいいプロレス」で怪我をさせまくり

[北斗について]
全女の中ではもう終わってる人だったので、関心がなかったです。ただ、三田さんと下田さんは、「今日って宇野さん来る日? どうするどうする?」なんてバタバタやってましたよ。それ見て「あ、今日来るんだ」みたいな感じで(笑)。(略)
自分が一番殴られたんじゃないですか。私のこと一番殴ったレスラーだと思いますよ。(略)
[仕組まれて]対談したときに、「アダモちゃ〜ん、ひさしぶり」なんて言って。で、私がちょいちょい言うわけですよ。「こうやってイジメたじゃないですか」とか(笑)。そしたら宇野さんは「え〜っ、そんなことやったっけ?」とか笑ってて、全然覚えてないの。(略)覚えてないのか、覚えてないフリなのか、どっちなんだろう? みんなのことをそういうふうにしてたから、私一人のことはわかんないって感じなのか。凄いおもしろかったですけどね。

豊田真奈美のわがままプロレス

何をやってくるかわかんないから(略)私の中では“わがままプロレス”って言ってるんですけど、何人かいるんですよ。(略)
相手がミサイルキックとかをするとき、ふつうは受け身をとった近くのコーナーに上がるんですけど、それとは逆のコーナーに上がったりするプロレスラーがいるんですよ。そういう選手を“わがままプロレス”って言ってるんですけど。「は? こっちかよ!?」みたいな(略)私もプロレスラーだから受けるけど、この歩数はどうすんの、みたいな(笑)。(略)飛ぶときも「ここだろう」と思う場所には絶対飛んでこない(略)
あと、豊田さんがホントに凄いのが、私がもの凄く腰を痛めてるときがあって、もう立てない、歯も磨けない、顔も洗えないぐらい腰が痛いとわかってるはずなのに腰を攻めてくるんですよ(笑)。もうガチで攻めてくるんですよ、ドンドン。

男禁

[松永兄弟は]とにかく男子と関わらせたくないんです。もうホントに、男子の団体に行くと100%誰か食われてるじゃないですか。(略)男に興味持っちゃったら、プロレスできないだろ、みたいな感じで。

ステロイド

中野さんはホントにプロレスラーなんで、ステロイドみたいのを打ったりした。絶対ダメじゃないですか、女の子なのに。(略)最高115キロって言ってました。そのとき凄かったですもん、足とかも。(略)「ふつうじゃ太れないよ、アダモちゃん」って言ってた。私にはできない、そういうのは絶対無理と思った。(略)「なかなか100キロになれなかったからね、ちょっと打ってきたんだよね……」とか、サラッと言うの。「してますよ!」っていうのを言わない。ホント、全身プロレスラーって感じでカッコよかった。

  • フリーダム・フォース結成

豊田はただの流れだと思っていて、後輩の方は会社の指示というのが……

豊田 あのとき、自分は全女で凄く孤立してたんですよ。自分しか信じるものがないって感じで。同期の三人[山田・下田・三田]からも2年近くシカトされてたし。(略)[キツかったけど]私のほうが人気もあるし試合もできるからいいや、三人で好き勝手やってればって思ってて。地方巡業でも三人が固まって何か話してて、私は一人でコンビニで弁当買ってきて食べたりとか。(略)まあでも、私と組んだことによって、伊藤たちはひどい目に遭ってますけどね(笑)。(略)同期一人ひとりとは話すんですけど、三人集まると話さないんですよ。(略)でもいま言ったこと書かれたら、また英津子にシカトされるかも(笑)。

伊藤薫

直接の原因が何かは全然わからないんですけど、豊田さんが一人になっちゃったんですよ。泣いてましたからね。あの豊田真奈美が。エレベーターの中で。(略)会社から呼ばれたんですよ。松永国松マネージャーから居酒屋みたいなところに吉田さんと自分と長谷川が呼び出されて(略)「いまの状況を知っているよな。豊田が一人になってるから、豊田軍団をやってくれないか?」みたいな。フリーダム・フォースになったとたんに、それまでは全然何もなかった人たちから、もう凄かったですよ。[W井上vs吉田万里子伊藤薫戦で、吉田がタッチさせてもらえずなぶり殺しに]

  • ロッシー小川

アジャにベルトを奪われたブル中野

じつは事務所で働いていた時期があったんですよ。(略)「転身する」って。ブルがいきなりOLみたいな恰好で事務所に来たことがあったんですよ。[当然何もできず辞める事に](略)
で、そのまま北斗といっしょにメキシコ行っちゃった。(略)当時のブルは人にだまされちゃうようなタイプで、北斗がついていてあげて、ブルを守ってあげていたみたいな(笑)。プロレスしか知りませんからね。リングでは凄い威厳があって、オーラがあるんだけど、普段のブルは本当にそういう、おひとよしみたいな。世の中のこと何も知らないから、すぐだまされちゃうようなところがありました。(略)
凄い人はみんな臆病なんですよ。千種も北斗もブルも。気にしいで臆病。心配性で。だから頑張るんじゃないですか?

マッチメイク

トータルは国松さんがやっていました。(略)対抗戦時代なんか、ほとんど自分が考えてたんですよ。(略)ほかの兄弟に国松さんが「俺がこう決めたから」と伝えると、風通しがよくなるんですよ。でもあるとき、「国松さんは小川に使われている」と兄弟が言い出したんです。(略)
SUN族で会って、紙を出して、国松さんはそれに頷くだけで終わっちゃうんですよ。(略)打ち合わせは国松さんがほかの兄弟から聞かれたときに、答えられないと困るからやっていただけです。ところがある時期から、みんなで集まって会議をしようということになった。(略)
自分が全女を辞める前になるとちょっと変わってきたんです。自分たち(松永家)の2世たちをフロントに入れるから、そのコたちを優遇というか、意見を言わせたくなる。そうすると外様である自分は……[はじき出される]。

神取忍

[引退前八方塞がりの中]
長与千種 自分、神ちゃんとはコソコソと会ってましたから。(略)「シングルでやりたいね」とか「自分、メチャクチャにやられちゃってもいいんだ」とハッキリ言ってましたね。(略)当時の自分は刺激が欲しかったんですよ。(略)神ちゃんには本気でやって勝てるとは思ってなかったし。「だったら、この人に倒されてみたい」というのがありましたよね。

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