ロックとメディア社会/サエキけんぞう

大学での講義をまとめたものなので……なのである、サブカル畑で書いたらもう少し違うと思うんですけど。

ロックとメディア社会

ロックとメディア社会

スコーピトン

(拾い物画像)

1960年代の初め、フランスでは「スコーピトン」というメディア機械が作られていた。16ミリフィルムで撮影したアーティストのプロモーション映像を映すジュークボックス状の機械で、36本のフィルムが格納されていた。(略)
 MTV時代に先駆けること約20年、フランスには視覚&聴覚が同時のポップス・メディアが存在していたのだ。(略)
[ボブ・ディラン『ドント・ルック・バック』副音声によると]
歴史的ヴィデオクリップ「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」は、フランスのスコーピトンを参考にしている、というのだ。
(略)
ちなみに、フランスはミニテルという独特のコンピュータ的通信システムを、国内だけに発達させた。ミニテルとは、フランス電信電話総局のヴィデオテックスのテレテルの端末の名称であり、電話回線を通じて文字や画像、簡易動画を送受信するヴィデオテックスシステムとしては世界唯一の成功例とされた。
(略)
[「イエイエ」というアイドル歌手ブームで]
1963年6月には、アイドル雑誌『サリュ・レ・コパン』創刊一周年記念で、ラジオ局の協力のもと、パリのナシオン広場で無料コンサートが行われた。ジョニー・アリディ、シルヴィー・ヴァルタンが出演したが、そこになんと15万人の熱狂した若者が集まる事態が生じた。1969年のウッドストックに先がけた、音楽イベントでの記録的な若者の動員数を誇るイベントが1963年のフランスに存在していたのだ。

記録映画『ウッドストック』では

イメージをより衝撃的にするため、長髪の男性をマークして映し込んだということがわかっている。スタッフが実際に会場にいた男性の髪型の解析を試みた結果、85%の男性が髪も短く、目立たない服装の普通の人々であったことを割り出した。つまり、サマー・オブ・ラヴ思想を象徴する長髪ルックは、ウッドストックでもまだ15%程度しか普及してないということだ。後で紹介する1973年のフェス、ワトキンス・グレンなどの映像では、間違いなく長髪だらけとなっているのを考えれば、風俗の普及にはやはり三年以上はかかるということなのであろう。

Saturday Night Fish Fry

Saturday Night Fish Fry

  • ルイ・ジョーダン
  • ロック
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes

クラブと風営法1948

[1948年「Louis Jordan/Saturday Night Fish Fry」は]
当時のニューオリンズで流行した、魚フライを囲んで楽しく盛り上がる週末の黒人音楽クラブを歌った曲だが、違法営業を理由に警察がクラブに踏み込み、踊っていた人はみなコテンパンにされて逮捕され、護送車に乗せられるという内容
(略)
[歌い出しは「ジョニー・B・グッド」に似ており、サビで「it was rockin'」と歌われる。チャック・ベリーは「ルイ・ジョーダンは、ロックンロールをやっているのを聴いた最初の歌手だ」と発言]

音圧

バンド・ブーム期には、特有のワンパターンのテンポの早い8ビート曲が多かった。さらに、コンプレッションサウンドが過激に流行しており、それらが次第に飽きられたのではないかと思える。J-POP時代には、入れ替わるようにコンプレッションが低く、音数が少なく、そのため音空間が広く感じる、さわやかなサウンドが好まれるようになった。
 バンド・ブーム終焉後、マスタリングといわれる音の最終仕上げの現場で、エンジニアから推奨された音色の傾向があった。それは、バンド・ブーム期のようなパワー感の強い、バンド音の固まりっぽい仕上がりをやめることだった。音圧をひたすら上げ、音を詰め込んだのが80年代後半だったが、90年代前半には、さっぱりと抜けの良い音に仕上げることが求められた。90年代前半、「最近はすっかり、すっきりとした空間のある仕上がりが流行してるんだよ」と第一線のエンジニアは語っていた。

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