ブローティガンの小説をワイルドに

ブローティガンの小説『不運な女』を適当にカットして詩にしてみたぜ、ワイルドだろおぉ、いちいち(略)なんてつけないゼエェ。

不運な女

不運な女


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「たしかに珍しい味だ。わたしには見当がつかない。なんていう名だい?」
「縊死」
わたしはいま自殺した女性について話している。


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きょうはわたしの誕生日。
いうまでもないが、
車中のわたしは無言だった。
よい乗客だった。
口を閉ざしたままいて、
予定の駅でおりた。
もう四十六歳になることはない、
それだけはわかっている。


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彼女のアパートではじめて夜をすごし、
翌朝目覚めたときのことを思いだす。
「きょうはうつくしい日で
あなたはすてきなカナダ人女性といっしょね」
うつくしい日だった。
すてきなひとだった。


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たったいまかけた電話について、
かれは考えてみる。
奇妙な理屈から、
それは完璧だと思えた。


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雨の日のために、
トマトスープを一缶買っておくと
いいかもしれない
いずれにせよ
あのスープ売り場ではなにかが
早急に起ることが肝心だった。
だってわたしは
トマトスープの缶詰をじっと見つめつつ、
永遠にそこに立ちつくしているわけには
いかなかったではないか。


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死人のコートを吊るすハンガーみたいに
低いどんよりした雲と
濃霧と靄がたれこめていた
かつてこの電線は墓地の端まで明かりを運んでいた。
墓地に明かりがあった方がいいと思うものはもういなくなった。
腐食した電線には、奇妙な哀愁がある。
死者を照らし
果てしのない海の運動と身振りのうえに
影を落としていた
時代の記憶
積みあげられた墓石のかたわらに
わたしはたたずむ
何百基とある 。


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「残念ながら、彼女は死んでしまいましてね」
「死んだ?」
「そう、去年首を吊って」


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「また、どうして脚なんか折ったんですか?」
とかれらは真剣な表情でたずねる、
あるいは
そんなことには無頓着だというふりをする。
「脚を折ったんですな、えっ?」
そうとも、そのとおり、
たしかに折れてる。
そう答えただけでは、かれらは満足しない、
執拗なのだ。


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ともかく、
くだんの不運な女は、
あのバークレーの奇怪な家のなかで
首を吊ったまま
いまだに死んでいる。


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ほどなく、
かれは啜り泣きはじめた。
だれもぜったいに耳にしたくない類の話
ただかれの友人として
聴いている
ずっと聴いている
まだ聴いている
さらに聴きつづける
そう、
ついに聴くという行為が
地獄のエレベーターを突然降下させ
わたしの魂をも貫いてしまうまで。
不安、疑念、自己憐憫
かれが語ったことはすべて
長いことわたしをも苦しめてきた
わたしが監房の扉を開けると
そいつらは出てきて
狂犬病にかかった狼人間にように
わたしの心をずたずたに引き裂き
ちぎりとるのだ。