マスタリング、曽我部恵一

音楽業界人インタビュー本。

ジョニー・B・グッジョブ 音楽を仕事にする人々

ジョニー・B・グッジョブ 音楽を仕事にする人々

 

中村宗一郎(ゆらゆら帝国エンジニア)

極端な言い方ですけど、1曲単体で考えるとしたら、ぼくはマスタリングというのはいらない作業だと思いますよ。トラックダウンでいいのができたらもうそれでいい。そこで完成。(略)
 もちろん、アルバム全体の粒を揃える[レベルや空気感を合わせる]意味ではマスタリングは必要です。(略)バラバラになった紙をそろえてホチキスで留めるぐらいの仕事だと思ってます。(略)
「低音をもっともっと」って言われても、「上げましたよ」で済ませたりすることもあります。だって言われたからってそのまんまやってたって、バランスが壊れるだけですから。(略)
 要は好みですよね。だからマスタリングなんていらないと思いますよ。自分んちでやったので充分。(略)
ぼくは自分のことエンジニアだとは思ってないんですよね。どっちかというと、バンドのなかでいちばんミキサーがわかる人って感じ。(略)
 ミュージシャンって、だいたい自分の楽器のことしか言わないんですよ(略)大事なのはその音が曲に合ってるかどうかですよね。いくらいい機材を使って高いギターを弾いても、曲に合ってなかったら意味がないでしょう?
 だからぼくの立場は、ひとつの曲のなかのそれぞれの音を、それぞれがどういう役割で鳴るべきかを考えてあげる係だと思ってます。いい音で録れる録れないよりも、合う音で録れるかどうかといいますか。(略)
作業的に見ると、曲の雰囲気ってベーシックを録った時点で大部分が決まっちゃうんですよね。(略)
テイクはあんまり録らないほうがいいと思いますよ。(略)2テイク3テイクとやっていくと、その曲に対してなにかしてやろうという気持ちが出てきて、イマイチになりがちな気がします。欲が出るというのかな。だから、わけのわかんないうちに録っちゃった、みたいなのがよかったりするときもありますね。

『若者たち』のときはまだレコード会社の給料もなくて、収入といえば印税だけでしたね。あれは1万枚ぐらい売れたんですけど、印税は1年に数十万だったと思います。もちろんそれじゃあ食えないからバイトをしてました。2枚目の『東京』が出たときに初めて9万円給料をもらうようになって、それは超うれしかったけど、やっぱりそれじゃあ食えなかったですね。(略)3枚目の『愛と笑いの夜』を出したあたりで、給料が倍の18万になりました。まあ、レコード会社もせこいなあとは思うんですけど(笑)。(略)そこで初めて食えたといえるのかなあ。印税も別にありましたしね。
[4枚目の初回注文は7万枚]

DIY

[自分の会社でやるようになって]
デザインは自分でやっちゃってますよ。(略)帯の価格のところとか、細かいところも全部自分でやります。イラレフォトショップで入稿してますから。ステッカーまで自分でやってるし。(略)たまに怒ったりもするんですけど。「なんでおれが外貼りシールのデザインまで……」って。
(略)
ヒップホップもそうだけど、売れていくにしたがって、ロゴがカチッとなる瞬間があって、おれ個人としてはその瞬間に気持ちが離れるんです。なんかわからないけど、「売れたな……」みたいな感じになって。だから、うちはまだローテク感がありますね。

楽家としてはもう一日録音したいが、経営者としては断念

だけど逆に、あんまりお金のことばかり優先して安いスタジオに入ると、「安いスタジオにいる自分」が俯瞰できちゃって、気持ち的によくないんです。だから、いまでも90年代に使ってたのと同じスタジオに入ってるんですよね。
(略)
昔は好き勝手やってたからね。だけど、いま振り返ると、そういうのもやってよかったとは思いますね。すごくピュアな状態で、ガラスケースのなかで大事に守られながらつくるわけだから、それゆえの透明感はあるはずでしょう?そういう時期があるからこそそういう音楽も残ってるし、それはそれでいいと思う。(略)相当迷惑かけましたからね。わけのわからないわがままを言って。だって、ハイハットの音がどうしてもいやだから、スタジオをあと3日延長してくれ、とかね(略)でも、そういうピュアな状態でつくれてよかったなと思います。(略)
いまはすごくバランスが取れてて、歌ってるときは歌だけだし、お金や生活のことは計算しているときだけ、みたいにきちんと分けられていますね。

メジャー酷い話

永田一直

自分がレーベルごとあるメジャーメーカーに移籍したときは、契約金どころか、逆に金を取られたことがありました。(略)
[契約もなく制作を急がせたミックスCDの売上げは5000枚]
楽曲のライセンス料が200万はいいとして、宣伝費が500万なんです。(略)
[アーティストの永田には8万円だけ]
しかもおれは制作進行からマスタリングまで自分でやったのに、それに対する支払いもありませんからね。(略)
 しかもこの話はまだ先があって、このときのディレクターがとんでもないばかなやつで、そのレーベルの、そのあとの予算をあてこんで勝手に使ってたんです。(略)出すはずのタイトルも中止になっちゃって、結局そこの部署自体が消滅したんです。そしたらメーカーはその補填をアーティストであり、レーベルオーナーであるおれに要求してきたんです。(略)
[契約してないから関係解消するも]
自分のレーベルの今後のディストリビューションは、そのメーカーの子会社だったんですね。(略)その売り上げから勝手に補填させられましたね。

  • どんより話

ビジュアル系インディバンドのマネージャーの銭勘定。
月に5000円使うファンが500人いればなんとかなる。ライブ毎にメンバー毎のジャケ違い限定盤やら物販。さらにメンバーと関係したいファン心理につけこみ、ボッタクリ打ち上げ参加料6000円×50人で30万。

  • どんより話2

テキ屋で黎明期ヤフオクでボロ儲け。
 

横流し廃棄処分CDを1枚10円で入手。

[横流し元は]メーカーにもいれば、配送会社や廃棄工場(略)やっぱり配送のトラックが絡むほうがすごいです。(略)急に「現金で何百万分買ってくれ」って来ますからね。(略)約束の場所に行ったら10トントラックが止まって待ってますから(笑)。(略)
[100枚入りトロ箱をたたいて5000円、200箱で100万円]
向こうも音楽がちょっとはわかるから、「これはいいやつなんじゃないの?」とか言ってきたら、「じゃあその箱は8000円な」みたいに上がっていくこともあるし。逆に、たとえばブラックビスケッツとかシャンプーみたいなのが混ざってたら、「こんなの混じってんじゃんかよ、この野郎」とか言って突っこみますけどね。「広瀬香美がなんで2箱もあるんだよ」とか
[2000年を越えると、メーカーが追跡調査できるように廃棄品もJANコードを通すようになった]

  • フェス仮設トイレ

客100人につき1台が理想。1台1.5万円。2DAYSだと汲み取りも必要になり1台3.5万円程に。総経費1000万のイベントで2DAYSトイレ30台を準備するとそれだけで総経費の1/10に。トイレ行列の憂き目にあった時はこの金額を思い浮かべて主催者を呪って下さい。