消費税のカラクリ

消費税で非正規雇用が増えるとは。

消費税のカラクリ (講談社現代新書)

消費税のカラクリ (講談社現代新書)

3%だからいいじゃない

[“益税”を問題視して消費税は憲法違反だとした訴えに、司法は以下のような理由で“益税”を容認した
]<[消費税法には]消費者が納税義務者であることはおろか、事業者が消費者から徴収すべき具体的な税額、消費者から徴収しなかったことに対する事業者への制裁等についても全く定められていないから、消費税法等が事業者に徴収義務を、消費者に納税義務を課したものとはいえない〉
 つまり、事業者は消費者(小売業以外の業種では顧客一般)に対する商品やサービスの販売価格に消費税分を上乗せしてもよいし、しなくても構わない。消費者の側(同前)もまた、購入価格に消費税分を支払ってもよいが、支払わなければならないとは定められていないというのである。
 いくつかの制度は事業者間の不公平を招きかねないのではないかとの指摘には、税率の低さを理由に甘受を迫っている。
(略)<控除割合が3%であること、並びに仕入先が免税業者である確率がそれほど高いものであることを消費税は予定していないことを考慮するならば、前記制度による差別の程度が、著しく不合理な程度に達しているとはいえない。>
(略)
 小売商と消費者との間における、消費税とは要するに物価なのだ。転嫁できるもできないも、とどのつまりは売る側の腕次第。(略)
 消費税とは力関係がすべてであり、問題だらけなのは明々白々だけれども、税率も低くて全体的には大したことがないのだし[とこの判決は言っている]

「預かり金」のウソ

 消費税は物価の一部であって消費者からの預かり金などではなかったことは、しかし、すでに明らかだ。東京地裁判決は預かり金だとする解釈を明確に否定し、政府広報の記述についても、〈消費税施行に伴う会計や税額計算について触れたものであって、法律上の権利義務を定めるものではない〉、すなわち物の譬え程度のものでしかないと断じて、そのまま確定している。一般の消費者はこうした事実を知らないか、十分には理解できないまま、いつの間にか刷り込まれた嘘を真実だと思い込まされ、何かを買うたびに消費税を支払っているつもりでいるのにすぎない。

広告では「とめないで!私の払った消費税」と大きくよびかけて「預かり金」プロパガンダしつつ、「消費税は、預かり金的な性格の税です」と小さく説明をつける。

消費税は大企業、とりわけ輸出比率の高い大企業にとっては実に有利に働く。彼らは消費税という税制によって、莫大な不労所得さえ得ていると断定して差し支えない。(略)
輸出取引については、国内で発生した消費税負担は完全に除去される(略)
[理屈の上では仕入れの際に支払った消費税が還付されるだけで利益とはならないが、実際は立場の強い大企業が下請け単価に消費税分を転嫁しており、輸出戻し税は税制を通じた補助金となっている]
[以下湖東京至『消費税法の研究』より]<なぜ財界は、消費税の税率引き上げに固執するのであろうか。じつは、彼らは消費税の税率をいくら引き上げても痛痒を感じないのである。彼ら巨大企業は経済取引上強者であり、常に価格支配力を有しており消費税を自在に転嫁できる。(略)輸出戻し税制度により消費税をまったく納めないばかりか巨額の還付を受ける。還付金額は税率が上がれば上がるほど大きくなる。>

消費税モデルの原型はフランスの付加価値税

 〈なぜ、輸出販売に還付税制度が設けられたのだろうか。その背景には、1948年1月に締結されたガット協定がある。(略)ガット協定は、その国の政府が輸出企業に対し補助金を交付することを厳しく禁じている。フランス政府もそれまで輸出大企業に交付していた輸出補助金の交付を停止せざるを得なくなった。そこで考え出されたのが輸出大企業に国内で負担したとされる間接税分を還付する仕組みである〉
(湖東京至「仕入税額控除制度の廃止は可能か」)

  • 仕入れ税額控除」の悪用

正社員への「給与」は「仕入れ税額控除」の対象にならないが、派遣等の外注労働力は控除の対象となるので、非正規雇用を増やしたほうが節税になる。これは大企業だけの話ではなく

 土木・建設の業界では“一人親方”が増加した。中小零細の事業者が、大工や左官、鳶、土工、石工、建具師、電気工事土などの技能を持つ従業員を個人事業主として独立させ、請負契約を結んで外注化する傾向が著しい。(略)
 近頃の建設現場には、ですから雇用された労働者が一人もいなかったりします。全員が個人事業主。独立していると言えば聞こえはよいけれど、実態は半世紀前の状況に逆戻りした感じです。