昭和45年の著作権法改正

JASRAC概論―音楽著作権の法と管理

JASRAC概論―音楽著作権の法と管理

昭和45年まで無料使用

NHKは(略)日本人の作品を放送する場合、当初は著作者に往復ハガキを送って許諾を求めていた。(略)これは労力がかかることであった。そこで諸手続きを簡便にするため、作詞家、作曲家、文芸作家それぞれの団体を交渉相手とすることになった。(略)
 NHKの東京局が、昭和7年の1年間に大日本作曲家協会会員の童謡を825曲放送して支払った著作権使用料は1489円である。[プラーゲ博士が管理する]ヨーロッパの著作権者には年間7200円支払っておきながら、日本人作曲家には1500円足らずというのはひどい差別ではないかと、協会メンバーの間に憤慨の声があがった。(略)
[さらにプラーゲ博士、月額600円を1500円に値上げ要求]
NHKはプラーゲ博士の値上げ要求を拒絶し、昭和8年からほぼ1年間、外国曲の放送を中止した。[昭和9年月額1000円で妥結](略)
[NHKの陳情を受け内務省は]音楽を放送する場合について、楽曲の生演奏とレコードによる再生とに分け、後者の場合は出所を明示すれば著作権(演奏権)は及ばない、という著作権法改正を行った。(略)
この法改正は、東京音楽協会、大日本作曲家協会、全国蓄音器レコード協会等の反発を呼んだが、結局上記の規定は、昭和45年末まで生き続けることとなった。その間、レコード演奏されても海外の作詞・作曲家はもちろん、日本人の作詞・作曲家にも放送使用料が入らない状態が続き、一方でNHK、民間放送はラジオだけでなくテレビ放送が始まってからも、その恩恵にあずかることになった。(略)
[昭和45年の著作権法全面改正でレコード演奏にも著作権が及ぶことになったが、喫茶店、パチンコ店等からいきなり徴収することに対し抵抗があり、経過措置として附則14条が置かれた]
「放送又は有線放送に該当するもの及び営利を目的として音楽の著作物を使用する事業で政令で定めるものにおいて行われるものを除き、当分の間」[旧法のままでいくことに]
[政令で定められた三つ事業とは、名曲喫茶の類、キャバレー等フロアで客にダンスさせる営業、音楽を伴う演劇等の芸能](略)
附則14条の廃止は、平成11年の著作権法改正まで待たねばならなかった。