トーマトロギア

「トーマトロギア」とは

神の国の栄光に背を向ける者に神が下したまう懲罰の「奇跡」、換言すれば、神隠しの懲罰のことをいう(これもコトン・メイサーの本の標題である)。(略)
ピューリタンは一切の歪曲と分派(deformity and schism)をきらう(略)
コトン・メイサーによれば、一切のdeformityは「トーマトロギア」による応報を受けねばならない。光り輝く「神の御国」と人間精神のPurityの夢に燃えていたピューリタンの子らが、アメリカの厳しい風土条件も手伝って、いよいよ悪魔主義的な「トーマトロギア」を育成させていったとは皮肉な矛盾には違いない。日本流にいえば、それは殺伐なまでの勧善懲悪思想である。

「悪魔祓い」とのちがい

注意しておきたいのは、カソリックユダヤ神秘主義にいう魔よけのオカルト、いわゆる exorcismとこの「トーマトロギア」の本質的な違いである。魔よけとは死霊や悪霊の汚れが自分にのり移らないようにお祓いをする妖術のことで、それに対し、「トーマトロギア」とは積極的に悪や罪の「神隠し」を願い、人間みずからもそれに手を貸す営みに出る悪魔主義的な呪咀のことである。ひたすら神を恐れ、応報を待ち望むカルヴィン教徒にとってそのような魔よけの妖術witchcraft こそ最も忌むべき迷信に見えたのである。

フィリバスター(filibuster)

は今日のアメリカニズムにも残る重要な語で、「不法戦士」と訳されるが、実情はそんなものでなく、文字どおりの「掠奪者」である。この語がオランダ語のfree booterからスペイン語形になり、再び米語になったという事情が示すとおり、19世紀前半はアメリカ的フィリバスターの花盛りだった。カリフォルニアの強引な合衆国編入もこれらフィリバスターの働きによるものだし、なかんずくマサチューセッツ州の男、ウィリアム・ウォーカーこそきわめつきの騒乱屋だ。カリフォルニアで大暴れしてスペイン勢力を一掃、転じて中南米に内乱を教唆、みずからも首領に収まり、ついにニカラグアで革命達成寸前になって捕えられ、絞首台の露と消えた。
(略)
フィリバスターは大平天国の乱に際会した中国にも現われた。英国人で狂信の人“常勝将軍”ゴードンの話は有名だが、彼の前任者はアメリカ人で、しかも前記ウォーカーの同僚だったのである。南北戦争に馳せ参じようとする寸前に殺されている。教条主義ピューリタンらの勧善懲悪思想と金銭欲と名声欲が生んだ十字軍的行為である

デトロイト」はフランス語!!狭所テクノw

[ミシシッピー河を最初に探検したのはフランス人]
なにしろ、この河の名が“ミシ”(大きい)“シピ”(川)なのだから。
 ミシシッピー河畔にシカゴ(玉ねぎ)、セント・ルイスをはじめとしてフランスの名前が多いのも、この河の辺境人らが残した記念碑である。(略)
Chicagoだってシと発音するのが大勢だ。チカゴだとがんばる土地っこはいるが、少数派だ。もっともde troit(狭い所)は最初からデトロイト

禁酒と女性参政権運動

[禁酒]運動が女性参政権の運動と結びついていたことに社会的意義がある。例のストー女史などもsaloon酒場の汚さを絶叫した。これら女性がマサチューセッツ出身の清教徒らに多いのをわたしは注目しているのだが、痛快な女傑キャリー・ネイションの話は変わっている。ケンタッキー生まれの大女だったようで、キャンザス中のjoint(飲み屋)を回っては斧で酒場はもちろん、家具から鏡まで叩き毀して歩くのである。彼女の栄光は、現代のランダムハウスの辞典にのっているhatchet jobという造語で十分にたたえられている。もちろん、そのつど警察につかまって拘置されたが、hatchet jobで人気をえた彼女は講演で稼いだ金で罰金を払い、出てきてまた叩き毀しに移ったという。

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