- 作者: 芝山幹郎
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2008/08/20
- メディア: 単行本
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原題の『Coogan's Bluff』は掛け言葉になっている。「(主人公)クーガンのはったり」という表向きの意味のほかに、これはニューヨーク市に実在する断崖を、ひいてはその断崖から見下ろせる野球場のポロ・グラウンズを指す言葉なのだ。(略)球史に残るミラクルがそこで生まれたことは、野球好きのアメリカ人ならだれもが知っている。つまり、このタイトルは観客の耳に残りやすい。
- 『白い肌の異常な夜』
ドン・シーゲルは「かつて弟と近親相姦し、いまは助手の女教師にレズビアン願望を抱く女子学園の園長」にジャンヌ・モローを希望したが会社が却下。
- 『恐怖のメロディ』
ストーカー女・エブリンの素性がいっさい明かされないという設定は、エブリン役のジェシカ・ウォルターが「そのほうが怪しさも怖さも強まるんじゃないかしら」と提案。
- 『ダーティ・ハリー』
元々ユニヴァーサルの企画でイーストウッドも乗り気だったが、会社が原案者のエージェントと揉めて、権利はワーナーへ。53歳のフランク・シナトラが起用されたが手の負傷で不可能に、そこで……。
以下全て『ゴッドファーザー』話
意味なくSNLのスクリーンテストでモノマネ披露のベルーシ
- お蔵入り
していた企画が再始動したのは、バート・ランカスターがヴィトー役をくれるなら応分の製作資金負担するよと言ってきたから。
起用に渋っていた会社は三つの条件をつけた。その中でも問題はスクリーンテスト。
が、コッポラは運がよかった、当のブランドが、「齢をとったイタリア人を演じるのは自信がない」と珍しく弱音を漏らし、「一度じかに会って、相談したい」と持ちかけてきたのだ。
渡りに舟とはこれを指すのか。ビデオ撮影の承諾を得て、コッポラはブランド邸の扉を叩く。もちろん、撮影係も一緒だ。
[会社の反対で]いつまでも役が決らない状況にしびれを切らした彼は、MGMの犯罪コメディ『弾をまっすぐ撃てないギャング』の脇役を受けてしまったのだ。パチーノの起用を決めたパラマウント側は、焦った。MGMを拝み倒し、「近い将来、パチーノがMGMの仕事をする」と一札を入れた上で、彼の契約を買い取った。パチーノが演じるはずだった脇役は、ロバート・デ・ニーロにまわる。
雲の上の人ブランドに初対面したパチーノとダイアン・キートン
ブランドは、ふたりに「ハロー」と声をかけた、が、ふたりはどぎまぎしてしまった。とっさに言葉を返せず、何秒かの間を置いて、キートンが「イェイ、ライト、シュア」と、まるでとんちんかんな挨拶を返した。(略)パチーノは、隣で棒立ちになったままだった。(略)後日、セットでブランドに顔を合わせるたび、キートンは女学生のように頬を赤らめていたそうだ。
パチーノが足をくじいた理由
[撮影スケジュールがタイトな最中]
パチーノが撮影中に足首をくじいた。にもかかわらず、コッポラはエレベーター・シューズ(シークレット・ブーツ)を履くように命じた。少しでも背を高く見せたかったためだが、パチーノはむっとした。「きみ、どうしてドナルド・ダックみたいに歩くんだ」とコッポラになじられたときなどは、「靴のなかの妙な台を外してくれ。そしたらまっすぐ歩けるようになるさ」と言い返している。
ジャック・バラード、コッポラが三顧の礼で迎えた編集監修のアラム・アヴァキアンと第一助監督のスティーヴン・F・ケステンがロバート・エヴァンスのスパイだった。
- 作者: ロバートエヴァンズ,Robert Evans,柴田京子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/08
- メディア: 文庫
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三人は現場の混乱や撮影の効率の悪さを、せっせとエヴァンスに密告した。エヴァンスは、その事実を『くたばれ!ハリウッド』のなかでことこまかに暴露している。いやはや、どっちもどっちだが、たとえばアヴァキアンとバラードは、「コッポラが撮ったフィルムは編集不可能」と報告した。アヴァキアンに至っては、「ひとつひとつのショットはキューブリックも顔負けなのだが、つないでみるとちんぷんかんぷんだ。あの青二才は、話のつながりというものがまるでわかっていない」とまで酷評している、
ケステンとアヴァキアンは、さらにどす黒い野望を抱いていた。もしコッポラが降ろされれば、ケステンが製作し、アヴァキアンが監督を継げるかもしれないと踏んだのだ。少し前にふたりは、『エンド・オブ・ザ・ロード』という作品でタッグを組んでいた。