アイザック・ヘイズ、スタックス倒産

前日の続き。

スタックスレコード物語 SOULSVILLE U.S.A.

スタックスレコード物語 SOULSVILLE U.S.A.

G&W傘下となった理由のひとつはパラマウントを通じてのサントラ制作。ブッカー・Tはクインシー・ジョーンズの元で一週間ノウハウを学ぶ。ジェームズ・コバーン『太陽を盗め』用に書かれたがボツになり『アップタイト』に使われたこの曲は69年60万枚のヒット。
Booker T & The MGs "Time is Tight" (live)

この頃アルや弟との軋轢でエステルがスタックスを去る。多くのスタッフが心を痛めた。

ティーヴ・クロッパーは言う。「彼女があそこの中心、みんなの心の拠り所だったんだ。間違いないよ。誰よりもたくさんアイデアを持っていたし、黒人コミュニティのことも、誰よりもよく理解していたんだ」

スッタクスはもうシングル主体じゃないアルバム中心だと配給業者に印象付けようと、テレビ特番や盛大なプレスパーティをやりLP27枚同時発売を宣言したアル・ベル。その中の一枚、アイザック・ヘイズ『ホット・バタード・ソウル』が100万枚越え。

Hot Buttered Soul

Hot Buttered Soul

おれのわがままを通した作品だった(略)ああいうのをやりたかったんだ。アルからは『好きなようにやっていい』と言われていたしね。売れなくても、ちっとも構わなかった。儲かろうが儲かるまいが、そんなことはどうでもいい。真の芸術を追求するつもりだった。(略)なにしろ、他に26枚もアルバムがあったんだから。(略)
狙っていたのは黒人層だ。黒人の間で<恋はフェニックス>はほとんど知られていなかったからな。だからあれを解体してアレンジし直した。黒人にも身近に感じられるようなものに変えたんだ。(略)それが、出してみたら大当たりして、もっと広い層にまで浸透したというわけなんだ。過激な作品に思えるのは、それまでのスタックスのイメージと何から何まで正反対だったからさ。

さて余談ですが「シャフト」もいいけど、朗読好きの小生は白人ナンバーをメロウにカバーしてるヘイズが好きなのです。今年前半もマイブームでありました[その勢いでヘイズさんも昇天]。でも昔気質のソウルファンからはバカにされているようである。まあその気持もわからないでもないけど。そんなバカラックナンバーを一曲。
Isaac Hayes - Walk on By

とここでもしかするとヘイズを知らない人がこれだけ聴くと大変な誤解をするかもと心配になったので映画のオープニングとライヴを。
「黒いジャガー

サントラ制作光景

Wattstaxより

69年夏、企業化していく空気に嫌気がさしたブッカー・Tが去る。利益分配制度BIG6も解体。MG'sも解散。バーケイズ、マッスル・ショールズがセッションを担うように。
A&Mが発売拒否したメルヴィン・ヴァン・ピープルズ映画のサントラ(初期EW&Fを起用)を発売。
Sweet sweetback's baadasssss song - Melvin Van Peebles

ドラマティックスがヒット。「Wattstax」冒頭映像から。

ワッツタックス/スタックス・コンサート [DVD]

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余談ですがこれを投稿している人「Wattstax」を全部投稿しているので観る気になれば全部観れます。
Dramatics - What You See Is What You Get

「シャフト」でさらに絶好調のヘイズはオスカー受賞。

あの晩のオスカー受賞は、1938年ジョー・ルイスがマックス・シュメリングをKOで破った時に匹敵するくらいの大事件だった。すべてのアメリカ黒人にとって、大勝利を意味するものだったのである。

アイザック・ヘイズ基金を設立して寄付やら低所得者用住宅建設を計画、夜間外出禁止命令を出した市長に俺の募金コンサートに客が来れないじゃないか暴動になるぞと直談判、新LPタイトルが「ブラック・モーゼ」と凄い勢いのヘイズ。
巨大化していく過程で内部による不正経理・レコード横流し海賊盤)が発覚。ヘイズ取り巻きによる暴行・機材略奪やらでセキュリティ強化。社員証を忘れたダック・ダンが中に入れてもらえなかったり、自分のレコードを一枚貰いにきたルーファス・トーマスが役所のように書類を持たされ盥回しで激怒したり。

 ジェリー・ウェクスラーも1970年代初め、最後にスタックスを訪れた際、同じくショックを受けたという。まるで軍の秘密基地にいるかのような空気。スタジオもオフィスも、武装した訓練済の犬を連れた警備員が常に巡回している。何よりも驚いたのは、設置されていた防犯用の遠隔操作カメラだった。ウェクスラーいわく「建物中の空気に、被害妄想と暗黙の恐怖が漂っていたんだよ」(略)
[スティーヴ・クロッパー談]
「ディノが仕切っていたころだよ。みんな、何かというとすぐに拳銃を抜きたがっていた。気が狂ってるとしか思えなかったね。だから、はっきり言ってやったんだ。『こんな下らないことにはもう付き合ってられないよ。ばかばかしいにも程がある』とね。刑務所に行くみたいだった。本当に妙な、薄気味の悪い感じだったよ。スタジオ自体は大丈夫だったよ。でも、問題はあの警備さ。頑丈な鎖の付いた駐車場のフェンスとか、玄関前の警備員とか。空気そのものが、全部の雰囲気が完全に変わっちゃったんだよ」

72年ゴスペル分野に再進出でスカウトしたのがランス・アレン。これまた「Wattstax」からの映像。ゴスペルというよりキレキレのリズムが凄いのですが、ちゅぶ画像では伝わらないか。
Rance Allen Group - Lying On The Truth

西海岸進出の一環として入場料1ドル収益は全て地域コミュニティに寄付、黒人による黒人のための10万人コンサート「Wattstax」が最後の頂点となった。
ここからまだ本は1/3残っているのだが、まあ要するに「雷舞ドア」めいたマネーゲームというか、CBSや銀行にいいようにされたというか、なんだかんだでスタックは倒産、あおりをくらってヘイズも破産、それまでの全曲著作権を失う。そこらへん詳しくやると明日に続くことになり、もういい加減いやになったので省略。
最後にこれまた「Wattstax」の復活ルーファス・トーマス55歳。これだけみるとスタックスの「アホの坂田」にしか見えませんが、このあとフィールドに雪崩込んだ客をうまくあしらって客席に戻らせる大物ぶりを見せます。