C.S.ルイスで高橋源一郎

kingfish.hatenablog.com
上記に続いて「C.S.ルイス中原昌也」をやろうとしたのだけど、どうも違う。単に「C.S.ルイスREMIX」にしようかとも思ったが、勢いで無理矢理「C.S.ルイス高橋源一郎」に変更してみた。それならそれで別の文章選択もあったなと思わないでもないが、まあ、あんまり細かいこと気にするなYO。
以下全て『天国と地獄の離婚/C.S.ルイス』よりの引用。

天国と地獄の離婚―ひとつの夢

天国と地獄の離婚―ひとつの夢

『銀河バスの夜』

どうやら、長々とつづくむさ苦しい街路の脇にならんで、バスを待っている人びとのなかに立っているらしかった。

今は、ただ夢があるばかりで、現実の快楽はないということは知っています。しかし、夢だって、何もないよりはいいじゃありませんか?

新しい仕事につきました。すばらしい昇進です。ぼくの机の上に花なんかごたごたおかないでほしいな、これじゃ机が使えないじゃないですか。

「あいつ、ばかに愉快そうだな、え?自分を何さまだと思っていやがるんだ?あいつの横っ面に一発くらわしてやりたいよ」

運転手の表情に、そんなふうに非難されても仕方がないと思われるようなものを何ひとつ見て取ることができなかった。彼の顔にはただ、権威を託された者特有の表情が浮かび、自分の仕事を一生けんめいやろうとしているように見えるだけだった。どうやら人びとから冷たいあしらいしか受けたことがないようだった。

「町は無限にひろがっていくわけですね?」
「そのとおりです」とその知的な男は言った、「誰かが何か対策を講じないかぎりは」

「こらっ!」と例の大男がどなった。「そんな話をしてるやつは誰だ。なぐられるのがいやだったら内緒話をやめろ、いいか?そいつはデマだ」

バスの中を見まわした。窓はすべて閉まっており、そのうちに日除けもおろされたが、車内は光でいっぱいだった。ある者はげっそりやつれ、ある者はふくれ上がり、ある者は白痴の凶暴さで目をむき、ある者は救いようもなく夢に溺れていた。が、どの顔も程度の差こそあれ、みな歪み、かつ萎れていた。それらの顔は、光がもっと強くなったら今にもこなごなに分解してしまうのではないかと思われた。
光はますます明るくなっていった。

「だって、おまえはあの男を殺したんだぜ」
「その通りです。そのことなら、もういいんです」
「もういいだと?」
「すべてはもうすんでしまったことなんです。過去のことにこだわる必要はありません。今では自分というものを捨ててしまったんですよ。人を殺してからは、そうせざるをえなかったんです。それが私にとってよかったのです。それからは、すべてが変わりはじめました」

あなたが致命的な言葉を一言洩らしたら、彼はすぐに私を殺すでしょう。彼は、冷たい、血も涙もない、抽象的な存在にしかすぎません。

「ちきしょう!さっさとやったらどうなんだ。早いとこすませてくれ。好きなようにやってくれよ」と亡者はどなりちらした。

ここはほんとに恐ろしいところなんです。

「ああいうものはすべて、同じ連中の手によって経営されているんですよ。やつらは世界地図を取りあげて、こんどはどこの観光地にしようかってなわけで、勝手にきめてしまう。やつらにとっちゃ、どこだっていいんです。宣伝さえうまくやればどこだって同じことなんですから」

「だが、本当に戦争がおこなわれているとしたら、どうしてやつらは何もしないんですか?やつらはそれだけの実力を持っているんですからね。逆に、われわれを救おうと思えば、救うこともできるんですよ。が、このいわゆる〈戦争〉を終わらせてしまうことは、明らかに、やつらのもっとも望まぬところなんです」

「おれは帰るよ。犬みてえに扱われるためにここに来たんじゃねえからな。一人のこらず呪われて地獄に堕ちちまえばいいんだ」


「しめた、これで二人減ったぞ」