松本隆対談集

「徒然亭Tシャツ欲しい!」と書いたら貰えるのでしょうか。

てなゆるーい気分で気楽な本。

松本隆対談集 『KAZEMACHI CAFE』

松本隆対談集 『KAZEMACHI CAFE』

「ベースの天才」という噂の細野を自分のバンド「バーンズ」に入れようと呼び出した松本は高校卒業したてでピン・ストライプのスーツにレイバンのサングラスで後から来たのにふんぞりかえっていたと細野が回想すれば、ロンゲヒゲモジャの二十歳の細野の第一声は「君、髪が短すぎるよ」だったと松本。松本のバンドが出たコンテストで審査員をしていた細野なのにオーディションを受けさせられて屈辱だったと細野。楽器売り場のベースで「デイ・トリッパー」のイントロ三回つっかえたので内心大丈夫かなと思ったと松本。

細野 (略)バーンズでいちばんやってたのはね、ゼムの「グローリア」、それからロス・ブラボーズの「ブラック・イズ・ブラック」(略)あとはストーンズの「アンダー・マイ・サム」でしょう。僕が(カヴァーしようって)持ってきたのが「ブルー・バード」でしょう、バッファロー・スプリングフィールドの。モビー・グレープはまだやってないな。
松本 できなかった(笑)。
細野 できなかったな。ああいう感じはできなかった(笑)。

すごくストイックな人だった。問題はね、そのストイックさをね、人に押しつけるの(笑)。遊びたい盛りの十八歳の少年に、年中説教するわけだから。「松本! そんないい加減な生き方をしてると、ロクな大人になれないぞ」って(笑)。

佐野史郎との対談

大瀧さんはね、絶対的な人じゃないんだよね、ソロやってるから絶対的に見えるんだけど、実質的にはわりと相対的な人だと思う。細野晴臣は絶対的な価値観を持ってる。だから、言い換えると、大瀧さんは佐野さんが組んだとしたら、佐野さんがこうしたいという出方を見て、自分の手を決めるというタイプ。細野さんはこれが正しい、あとは全部正しくない、って言い切ってしまうタイプ。けっこうすごい緊張関係だったよ、はっぴいえんどは。

大瀧詠一の「声」が松本の詞に合うという話になり

歌い方って技術じゃないよ、声の出し方なんだよ。(略)声は作るものだから。みんな、声は自然に出てると思ってるけど、それは歌じゃない。ただの発声なんだ。でも、声を作るって言うと、必ずみんな「作為」の「作」の方を無理矢理入れて解釈するんだよ。それはある種の技術コンプレックスなんだ。「本能は技術では出せない」とかって言いたがるんだけど、違うんだ、技術が至らないだけ。下手なだけなんだよ。
(略)
松本の詞っていうのはまばゆいわけだ。それを歌うっていうのは、どこが光ってるかどこが光ってないか、白黒映画の陰影の見せ方みたいなものに気配りしなきゃダメなんだよ。(略)
「はいからはくち」にしても「十二月の雨の日」にしても、一度全部ローマ字にしたんだ。音で分解する必要があったから。そのローマ字の母音と子音を見ながら、どこを光らせてどこを暗くしてってやって、歌うときは全部当然忘れるんだけど、完全な没我状態になれる前までリフレインするんだ。並大抵のことじゃないよ。(略)
キラキラ光る部分が毎回違うように、乱数になるように仕掛けてあるから。他の人が歌ってもああはならない。

最近の日本のロック系のメロディがわからないと筒美京平

誰でもきっとどこかで基本は取ってると思うのね、日本でも向こうの人でも。でも、そういういわゆるロック系の人たちは独特の取り方をしたんじゃないかと思う。洋楽と歌謡曲があわさっていくときに、その(洋楽の)基本じゃないところをすくいとってきたんじゃないかって思う。(略)
洋楽や他のも聴いてた人なら「これは間違ったコードだ」って気づくことも、それ(Jホップ)しか聴かなかったら気づかないじゃない。そういう間違いの部分をすくいとっちゃったんじゃないかって。(略)
音楽って分解すると実に理路整然としてるんだけど、そうじゃなくてその先の感覚の部分だけをすっと持っていったような感じかな。