18世紀著作権&ジム・オルーク

前日のつづき。

〈海賊版〉の思想‐18世紀英国の永久コピーライト闘争

〈海賊版〉の思想‐18世紀英国の永久コピーライト闘争

スコットランドで印刷業隆盛のわけ

 スコットランドの、とくに低地地方で識字率が高かった理由は、長老派教会の教えにある。長老派教会では、聖書に書かれてあることがすべてで、聖書にないことは異端とみる。偶像は徹底的に退けるし、魔女狩りもした。子どもたちに聖書を読む力を身につけさせるべきだと、長老派教会の信者は考えていた。(略)
 こういったことを背景に、長老派教会の需要を満たすための印刷業者が育った。その下地のうえに、18世紀スコットランドでの出版業の隆盛がある。当時のエジンバラは大陸やアメリカ植民地に書物、パンフレット、説教書を送り出していて、印刷文化の重要な拠点になっていた。

貸本屋

1850年に「公共図書館法」ができて公共図書館に駆逐されるまで、さまざまな貸本業がイギリスにはあった。目的が営利か非営利か、運営主体が個人か地域コミュニティーか、会員制か広く開放されていたか、形態はさまざまだったが、民衆のリテラシーの向上と文化の振興に、貸本屋が大きな役割をはたした点ではおなじだった。

<囲い込み>と著作権

 文学の所有権はしばしば土地の所有権を比喩にして考えられてきた。土地の所有といえば、18世紀をとおしてイギリス中で囲い込みが激しく進んでいた。
(略)
 大書店主たちによるコピーライト裁判も、土地の囲い込みという時代の気分を反映していたのだろう。ところが上院の判決では、「永久コピーライト」という囲い込みには、大差でストップがかかった。土地の囲い込みには熱心だったはずの上院の貴族たちも、最終的には本という文化は、土地のような経済財の比喩ではとらえきれないと認めたことになる。

  • また誤植見つけたw

207頁3行目「反映していのだろう」となってます。がむばれ、みすず書房

著作権保護期間制限によって英文学隆盛

 「ドナルドソン対ベケット裁判」で、イギリスの出版界に変化があらわれた。その第一は古典の解放である。「アン法」以前からあった本の印刷・出版が自由になったおかげで、古典の再刊ビジネスが成立し、それが出版界を長く下支えした。第二は、新人や新作への投資が盛んになったことである。権利は最長で28年間しか保護されないので、新たな書き手を育て、新たな作品を作り出すことに、書店は力を入れざるを得なくなった。それが18世紀末からの英文学の隆盛を生むことにつながる。権利を制限することが、文化の振興になったのである。

あとがきより。意欲のある方は是非。

なかでも、白田秀彰さんの労作『コピーライトの史的展開』(信山社)には大いに触発された。おそらく英米系のコピーライト史を精密に追った仕事としては、白田さんの仕事は世界的な業績だろう。これほど高度な研究を日本語で読めることを、何度ありがたいと思ったかしれない。また本書は一般の読者を想定しているため、裁判での議論の細部を大幅に割愛してある。(略)
細部については白田さんの本をはじめ、参考文献をあたってほしい。