ヴケリッチ日本通信・その2

前回のつづき。

  • 1935年4月

征服者・日本も同化されるだろう

この奇妙なドクトリンは、日本との和解の道を探る努力を続ける蒋介石将軍にとっても、具合の良い政治綱領を提供した。汎アジア的民族主義のためには東亜の黄色民族の連帯が必要ではないか。日本の軍国主義者もまた孔子の教えへの復帰を主張していないか。我々は行過ぎた西洋の模倣とマルクス主義を共通の悪として闘っているのではないのか。四億の人口と三千年の歴史を持つ中国人は一部日本人の征服欲を恐れる必要などない。これまでの征服者同様、六千万の日本人も中国という巨大な「民族の坩堝」の中でやがて同化されてしまうのだから……。
 こうした心理状態から見ると、中国の最近の対日感情の変化も理解できそうだ。熱狂や憎悪は全く消えてしまったわけではないが、かなり収まっている。日貨排斥運動も下火となり、交易も満州事変以前の水準に戻りつつある。多くの中国人が「日本を恨むより真似るべきだ」と言っている。

高橋蔵相は先日、財界人に警告し、満州国への資本投下のため日本の貨幣市場はインフレ危機ぎりぎりのところまで来ており、新たな資本輸出は危険だと述べた。だから、日本の公式筋が中国への借款供与を望まず、そのような借款は中国のためにならず、中国に必要なのは技術援助と国内情勢の安定で、それさえ達成すれば自己資金で救済が可能だとしているのには、もっともな理由があるのだ。
(略)中国の通貨安定、経済安定のため債務か財政援助を行おうという国際行動がすでに開始されたのは確実だ。この行動の主唱者は英国で、米国とフランスの協力を期待している。

  • 36年11月

中国の近代化・日中貿易増大

 鉄道網の総延長は、1925年の8000キロから、1935年には13000キロになった。(略)ついこの間まで南京から広東へ行くのにニヶ月を要したが、今では同じ道のりを近代的なバスが数日間で走る。中国はわずか数年で、巨大な航空網を建設した。(略)1929年には384人の旅客を運んだにすぎなかった中国航空公司は、1935年には10340人の旅客を運んでいる。
(略)今年は記録的な豊作で、そのため農民は完全に幣制改革の恩恵に預かることができ、債務と税の滞納分の大きな部分から解放された。中国民衆の購買力は大きく伸び、日中関係が緊張状態にあったにもかかわらず、日本商品の輸入がかなりの程度、増えたほどだ。南京政府は日貨排斥運動の沈静化に努めた。日本では強力な経済界が日中紛争で得るところよりも失うところが多いので、日中貿易が増大すると平和を求める潮流が強まり、東京政府も穏健な立場を取らざるをえなくなることに気づいたからだ。

  • 34年12月

クロール

[日本人は水泳が得意という話題]
クロールという改良された水泳スタイルは最近、オーストラリアから欧米に広がったが、日本では何世紀も前から知られていた。ただ、潜水に不向きなのでそれほど使われていなかっただけだ。

  • 34年1月

和製英語「エロサービス」