ドイツ版モンロー主義

kingfish.hatenablog.com
上記に関連して下記本の中の「国際関係論の理論家としてのカール・シュミット」(ハラルド・クラインシュミット)だけ読んでみたとです。

カール・シュミットと現代

カール・シュミットと現代

国際連盟批判

[1926年]シュミットは今日「グローバル化」と呼ばれるものに反対する立場をとり、自らが「新国際法」と名づけたものと国際連盟を結びつけた。(略)シュミットは、主権国家の政府の決定が国際連盟の諸機関の裁定に拘束されるようになることはいかなる理由から容認できず、容認すべきでもないかを説明しようとして現実主義の信条をもちだした。シュミットの議論によれば、国際連盟はこれまでに国家主権を核とする「旧国際法」を廃止しえていない。国家主権が優勢であるために国際連盟は加盟国を通すほかには決定を実行に移すことができず、必然的に強力な加盟国の同意をえたときしか行動できないことになる。最終的にシュミットが出した結論は、強国は自己の主権を弱小国の主権を破壊もしくは制限するために用い、主権国家の法的平等に立脚していた「旧」システムとは異なる法的不平等のシステムを作りだしているというものだった。シュミットは国際連盟の活動は希望的観測に基づくものであるにすぎないと非難した。強国は「損なわれることのない国家的栄光」を享受し、イギリスやフランスのように国際連盟を顧慮することなく主権者として振舞えるであろう。しかしそれほど力を持たない諸国は「旧国際法」の体制下におけるよりも「新国際法」の体制下で、また国際連盟に属さずにいるよりも国際連盟に入ることではるかにたやすく経済的政治的依存に陥ってしまうことになるであろうとシュミットは論じた。

ドイツ版モンロー主義

シュミットは「帝国」という概念を政治学ではなく国際法の概念として定義しようとした。それによれば「帝国」とは、ある特定の国家の政府による干渉は合法であるが他国政府による干渉は違法であるような地域もしくは「広域」として定義される。シュミットは「広域」の二つの実例として大英帝国モンロー・ドクトリンを挙げた。シュミットの議論によれば、大英帝国とはその地に関する排他的な干渉権をイギリス政府が有している地域である。モンロー・ドクトリンについてはシュミットは国際連盟規約で述べられているような基盤に立った国際法の道具であると分類し、モンロー・ドクトリンはその地に関する唯一の干渉権を米国政府が有するような「広域」へとアメリカ大陸を変えたと論じた。そしてシュミットはドイツ帝国を含めた他の国々も同様の権利を有していると暗に述べたのである。
 シュミットは、第一次世界大戦以前のドイツの植民地属国を回復しようとするナチの野望をイデオロギー的に支えた単なる植民地主義のイデオローグではなかった。「ドイツ版モンロー・ドクトリン」を案出することにより、シュミットは第二次世界大戦中のドイツの中東欧への軍事侵略を準備し、正当化する役割を進んで果たしたのである。シュミットの弁明的な用語法によればドイツの軍事侵略と人道に対する罪は侵略戦争にはあたらず、単に「帝国」としての法的権利を要求しただけの行為であるとされる。

キョウハコレダケ。